さらば大阪の女


1990年夏3回目の北海道、今回はオフロードバイクで旅をしていた。
2ヶ月に渡る長い旅だ。その途中、阿寒湖に立ち寄った。阿寒湖のほとりに食事をすると2階の広間にただで泊まらせて
くれる北海道の定番、ライダーズハウスがあった。基本的にライダーハウスはあまり気が進まないのだが、この日は雨が
ずっと降っていて野宿の気分ではなかったので泊まることにした。

荷物をバイクから降ろし運んでいると、オフロードバイクで1人旅をしている大阪から来た男が声をかけてきた。こてこての関西の、
のりで。最初適当に話していたが、あまりにもやかましいので、いい加減うんざりしていた。
旅の出会いは大歓迎だが、あまりにも押しつけがましい出会いは遠慮したい時には1人静かに過ごしたい時もあるのだ。

夜になり皆それぞれの場所を確保し寝袋を広げて、それぞれの時間を過ごしていた。
雨のせいか30畳ぐらいの広間は、かなりの旅人で埋まっていた。
僕は持っていたバーボンをゆっくりと飲み、地図を広げて明日からのルートを考えていた。その間も懲りずに、関西オフローダーが
隣でしきりに何やらかんやらぼけとつっこみを僕に披露した。この時ばかりは無視してやった。

ふと見ると僕の足元の位置に、1人の女性が疲れた顔で寝袋にくるまっていた。
最近の女はたくましいなと思った。あえて宿を使わずこんな男ばかりのむさ苦しいライダーハウスに来るとは。
感心していると思わず目が合ってしまった。
どう見ても放浪の旅をするタイプの女じゃない。テニスでもやっていそうなタイプだった。しかしそれ以上いろんな事を
詮索するのは止めにした。彼女が軽く会釈をしたので、僕もそれに答えた.

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