苫小牧野宿道

チャリンコで2ヶ月の旅を終えていよいよ苫小牧から大洗へ向けて帰る前日の夜僕は苫小牧駅にたどり着いていた。
夏の北海道を走り抜け、半ズボンはぼろぼろTシャツはどろどろになりチャリンコがなかったらまるっきり
物乞い状態になっていた。鼻は排気ガスで麻痺していたので自分の匂いがどれだけ恐ろしいものかは、
幸運にも分からない状態だった。しかし完全に走る公害だったはずである。

食料も底をつき全財産\2000ぐらいだったと思う。フェリーのチケットは取ってあるので、
最後フェリーの中で食事する分と考えていた。まあ、予定どうりだな、なんて考えていたのはこの時だけであった。

その夜苫小牧駅の構内で野宿。人が通る通路の脇が今日のネグラだ。いつものように最終電車が行くまで寝支度は
ご法度なのが駅野宿の鉄則だ。そして朝は始発が出る前にすべてを綺麗に片付ける必要がある。
駅に泊めてもらうのは当たり前の旅人の権利ではなく、駅員さんたちの好意によるものは言うまでもない。
だからいつも一般の人の迷惑にならないように気を使う必要があるのだ。今ではきっと北海道でも駅には
泊めさせてくれないところのほうが多いんじゃないかと思う。かなりマナーが悪くなったみたいだから。。
まぁ〜通常は泊めさせてくれないのが当たり前で、それを期待してはいけないのだが。。。

そんなわけで無事今日が終わった。しかし昨日からの台風の影響が非常に気になる。
どうやら東にそれず北海道に近づいてくる予報があるのだ。

次の日アンパンと牛乳の朝食を食べ苫小牧のフェリーターミナルへ向かうしかし恐れていたことが起こった
。関東地方が台風の影響で大シケの為そちらへ向かうフェリーは今のところ全線欠航との話、愕然とした。
ターミナルにいても仕方がないのでもう一度駅に向かう。こちらはまだ影響は無いみたいだ。
不安とともに、懐具合も悲しい状態だった。この時暇だったしある賭けに出ることを思いついた。
残りわずかの全財産を賭けてパチンコで増やすと言う計画だ。このところパチンコに凝っていて
勝ちに勝っている自信がそんな愚かな賭けに走らせてしまった。

運良く新装開店の店を見つけ、勝負に挑む。軍資金が少ないので一般台のはね物勝負だ。慎重に台を吟味。
ここぞと決めた台に¥500分の玉を入れる。玉の流れが良い感じだ。これは間違いないぞ!
と思った瞬間当たった!ウソだろー!とつぶやきつつも、のりにのったツキは本物だと確信していた。
その後面白いように玉が出てくる。おーこれで¥6000は確実ゲットだな〜。と思っていると打ち止め前に
止まってしまった。そんなはずは無い!とそこで止めれば良かったものを、意地になってしまった。
最初おーかつ丼だ!焼肉かな!なんて思っていたのが。やばい!ラーメンになっていくー。
やっぱりアンパンなのかーと心の葛藤と戦いながら。。。

とうとう玉は全部無くなり、もう¥500もつぎ込み残金ほとんど無しの状態で勝負は惨敗に終わった。
十何年後の今、パチンコを一切やらないのもこの時に悟ったおかげかもしれないが。。。。

その日の昼飯もパンと牛乳、これで所持金はゼロになった。再び駅に戻りぼーぜんと人の流れを眺める。
急に惨めさが全身を覆った。明日の夜は北海道を脱出出来るのか。
夕方もう一度フェリーターミナルに行って見たが状況は変わっていない。欠航の為いらいらしている人達が受付に向かって
、「どうなってるんだ!いつになったら出航するんだ!」と怒鳴っている。そのうち受付のスクリーンが閉められ、
一切黙秘に変わってしまった。怒る気持ちも分かるが天候に影響される乗り物なんだから仕方は無いだろう。
僕も半分開き直ってしまった。この時、空の便も欠航が相次いだ。要するにこの大地は完全な孤島と化した訳である。

ここにいても落ち込むばかりなので苫小牧駅へと向かう。北海道も雨が降り出した。駅につくと数人のチャリダーがいて、
こちらから話し掛けた。旅の終わりと言うことで皆疲れた顔をしている。すると1人真っ黒に日焼けした30代半ばの
一人旅のチャリダーが僕に声を掛けてきた。どうやら今日はここに野宿をするらしい。ちょっと憂鬱な気分が
和らぎいろいろと話し始めた。その人はかなりの野宿エキスパートだった。「寝るときはとにもかくにも足を保温することだ!」
と力説しビニール袋にシュラフごと足を突っ込んだ。そんなもんかなぁと思ってると、実は何年か前やはり
苫小牧駅で野宿したとき浮浪者に伝授されたと言う。なかなか変わった人だ。。
その後金が全く無いと今の状況を話すと、エキスパートは次々に野宿&サバイバル術を伝授してくれた。

早速、明日試してみることにする。

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