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一桁のビジネスマン《行動心理資料》より

【含みのある表現】

 物の言い方」つまり言葉遣いには、一般に理解しにくい意味のハッキリしないあやふやな話し方を、できるだけ避けて欲しいと思われています。

 しかし、物の言い方には、わざと遠まわしの表現で焦点をぼかしたり、控えめに言うとかして、残りは、察して貰う言い方もあります。聞き手と気心が通じているときには、謎(なぞ)的な働きかけをしたり、気心が解らないときは後で逃げられるように、話をぼかして反応を見るなどをします。
 要求や希望することを適える交渉のときには、このような言葉遣いがよく使われます。

 ストレートに言ったのでは、相手あるいはこちらの具合が悪いので控えめに、途中まで言って止めるとか遠回しのような言い方をして、意味のハッキリしないところは、相手が補って解釈してくれるように、もたれかかる話しの仕方は、丁度、政治家の腹芸と呼ぶ類のものになります。

 情緒的に感情に訴えるような話し言葉は、事実を動かすことは出来ませんがこれを伝える言葉に手加減を加えて、自分の都合の良いように、相手に歪んだイメージを送り、相手の感情を揺さぶろうとする場合もあります。

例えば、有ることを無しにするとか、無いことを有るにする類です。大きいものをを小にして、小さいものを大にするように、白を黒、黒を白に、相手に気がつかれないよう別のものに置き換えて見せることです。
 つまり、話し手の都合から、事実の価値をそれ以上に、あるいはそれ以下に見せかけて、聞き手の気持ちを動かそうとするものです。

 聞き手が、事実やその本当の意味・価値に疎ければ、また、話し手の構えに疑いを持たなければ、その相手のトリックにかかることがあります。好意的なものなら知ってて、あるいは、知らないで話し手のトリックにかかってもいいでしょう。

厄介で問題なのは、悪意のあったり悪意ほどでなくとも、話し手だけに好都合なずるいトリックの場合です。話しのトリックを見破ったにしても聞き手は不愉快です。また、運悪くトリックを見破れないで話し手の思うツボにはまった場合などは、精神的に大きい痛手を蒙ります。

 言葉の魔術(トリック)は、悪い意味にだけ捉えられる場合が多いのですが、善意に基づいて使われるときは、人を明るくする不思議な威力をもっています。我々の日常生活では、むしろ善意の魔術(マジック)の方がより活発に多く使われています。そのため、あまりにも多く使われ過ぎの結果、罠とか、トリックとは呼ばれていないのが実情です。
 それらは、「洒落・ユーモア・ウィット・クイズ・謎・褒める・慰める・励ます・説得する」などと呼ばれているものです。

 以上のように話し言葉には、善意も有れば悪意もあります。しかも、その中には罠(トラップ)も有れば、魔術(マジック)もあります。人を喜ばせる魔術は温かい魔術ですが、人を悲しませる冷たい罠は悪魔です。

悪意に基づいて使われる魔術は、善意に基づいて使われるものに比べれば、遥かに少数です。しかし、たまたまぶつかれば、甚だ不愉快です。精神的な痛手だけではありません。物質的な被害を受ければなおさら悲痛です。

「悪口・憎まれ口・揚げ足取り・皮肉」等、善意の話し方は容易に忘れますが、心の傷と称される悪意のものは忘れさるのに長い年月を要します。

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