人間心理を研究すると、自然に自分自身を見る目も厳しくなります。
これは養成中のリーダーにとって大変必要なことです。
それは、病的に異常な自己反省のことではありません。機会ある毎に、自分の長所と短所について、考えることをいっているのです。
しかし、自己評価は、自分一人で自分を評価することは出来ないのです。自分を客観的に見ることは難しい上に、他人にどのような印象を与えているかを正確に知ることは、先ず不可能だからです。
そのため、リーダーには、絶えず建設的な助言をしてくれる友人が必要です。それも、ただ欠点を指摘するだけでなく、どのようにすれば、その欠点を直し得るか、それを親身に考えてくれる友人でなければなりません。
「態度、物腰の訓練」は、すでにショーマン・シップ等で取り上げたように、リーダーの人に対する態度、物腰が、大きくリーダー自身の力を左右する事になります。
しかし、人の態度、物腰は、一朝一夕に変わるものではありません。
先ず、最初にしなければならないのは、良い態度とはどんなものかを、”人の振りみて”悟ることです。自分のとっている態度に無神経なリーダーも多いのですが、他人によい印象を与えるには、どんな身ぶりや、声色、音声、言葉遣いをすべきかを、よく理解しておくようにします。
相手の感情や意見に、思いやりと関心を示す習性は、直接人とつきあうことで得られます。簡単に身につくものではありません。
そのため、将来性のある者は、早急にリーダーの実務につけたほうが、望ましいと思います。そして、養成者が悪い点をびしびし指摘することで、最も効果的な訓練になります。
さらに、人に接する態度は、既に何回も詳しく説明しているように、精神的信条が知らせる人生に対する正しい姿勢によって、人間性を向上させられるのです。
他人の人格を尊重し、人にはそれぞれ侵し難い尊厳と、価値があることを知ります。そして、さらに人間は、本質的には平等であることを認めるのです。つまり、基本的に、民主主義的な考え方が大切になります。これは、人間関係を質的に向上させるには、絶対に必要なことです。
しかし、この考え方をお説教の形で示しては、効果がありません。模範や案としての提示によって自然に、浸透させなければならないのです。
リーダーの養成に当たって、正しい態度とその表現について、十分な訓練を欠くようであれば、よいリーダーは決して生まれないでしょう。
それは、「グループ目標を魅力化する訓練」は、新しい目標に対して、リーダーがいかに力もうと、人々はついてこないからです。
目標の性質、その達成を望む理由、必要な手段などについて、明確な説明を行うことが必要になるからです。
新リーダーが、これからグループで行わんとしていることを、十分すぎるほど知り抜いていなければ、リーダーの意気込みは単なる空元気になってしまいます。
とくに、グループとメンバーとの関係が契約で成り立っている労使間の場合に、リーダーには、目標をできるだけ魅力的で満足の行くものにする責任があります。といっても、目標をごまかしたり、粉飾したりすることではありません。
従業員に体験を通して、信じさせるように努めるようにしなければならないからです。
だから、養成中のリーダーが学ばねばならないことは、目標がどれほどの魅力を持つかを正確に判断します。その上で、適切に伝達する方法を学びます。それには、グループへの忠誠は結局、メンバー各自の為になることを繰り返し説明すると同時に、彼ら自身がそれを体験によって確信するようにしなければなりません。
この場合にも、人前で上手に話す才能が必要です。リーダーが目標に人気を持たせるようにするためには、説得力が強力な武器になるからです。
話し方の能力は、指導の仕方がよければ非常に進歩します。たいへん優れた人が、人前で口ごもったり、つかえたりする欠点を矯正しようとしないため、リーダー能力に欠点をつける人はたくさんおります。
お説教めく説得は、あまり好ましいものではありませんが、補助手段に使えば、人を動かす力にはなるのです。
話し方の訓練は、有能な指導者のもとに、数人のグループで行うのがよい結果を得ます。そして、練習を中断しないようにして、適切な批判を仰ぐのが、上達の早道です。人前で、話しを上手にするようにしたいならば、とにかく、話す機会を逃さないで、思いきって立ち上がって話しをすることにします。
最後にもう一言つけ加えますと、人前で話すのは、自分が言わんとするものを持っているときだけに限ることでもあります。話し方による大事な話しの大半は、大概そこに関係しているからです。
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