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一桁>経営組織論?>『意志の伝達』

<受信者側の障害>

 ラジオの送信装置の内部で、雑音や空電妨害がときどき起こるのと同じように、受信装置であるラジオの内部でも、同じように、同じ障害が起こります。
 管理者とは、情報発信の送信者でありそして、受信者でもあるのです。管理者が(命令を与えたり、情報を流したり、訓練を行うなど)メッセージを送信するときは、部下が受信します‥‥。つまり、メッセージが伝えられたことを理解して、受け入れます‥‥。そのときに直面する問題に、気をつけなければなりません。

 意志伝達と言うのは、コミュニケーション情報を送受信するプロセスですから、部下が情報を提供してくれたり、悩みや不満を打ち明けたり、しているときは、管理者が受信者になります。
 そのため、管理者は送信者になるのと同じくらいに、受信者になる機会が多いと考える必要があります。

 受信者の大きな「障害の一つ」は、大抵の人が本当に話しを聞いてくれないことです。
 例えば、セールスマンが、セールス・マネジャーにたいし、色々な問題について20分間にわたって話しをしたとします。セールス・マネジャーは、そのセールスマンが話をしている間、何をしていたでしょうか。始めのうちは注意深く話しを聞いていたかもしれませんが、やがて、他のことに気を取られて目の前のことに集中出来なくなります。

 打ち合わせを記録した録音テープの、雑音の多さに驚いた経験があります。
 実際にテープを取っているときは、話の内容に集中しているので、周囲の雑音に気がつきません。人間の集中力とは、雑音をカットしているのです。しかも、話を聞きながら別の事を考える余力があります。

(解決を迫られている)問題のことなどそっちのけにして、いま終えたばかりの役員会議のことや、週末に予定されているゴルフ大会のことなどに、考えが回転を始めます。
 このように、聴き方の方向がずれると、うわの空で話しを聞き、セールスマンが話そうとしたことを、聞きもらしてしまいます。

 何故うわの空になるのか、と言うことについて、心理学者は、話す速度より考える速度のほうが何倍も早いからだと説明します。話し手が、話している間、聞き手の意志は話しの先の方向へいっている訳です。

 ですから、話の仕方には、クライマックス法と、アンチクライマックス法があるように、じょじょに興味のある話をして惹きつける話し方と、最初から興味に惹きつけるように、テクニックを必要とします。

 普通は、話し手の方では、相手側が、聞きたいことを話していると思った‥‥、と、錯覚して話を続けているときが多いのです。
 ようするに、聞き手の方は、無意識のうちに話しを終わらせてしまってます。
「聞き手」が、話し手の考えを、心の中ですっかり読み取って仕舞ってから、話し手の実際の口述が終わるまでの間に、聞き手はうわの空になり始めます。
 しかも、一般的に、ビジネスのコミュニケーションは、要件が絶対的に少なく、自分自身の承認欲である感情吐露が過半をしめるとされます。ですから、聞き手は、頭で相手の言わんとする事を吸収して仕舞うと、いくらでも本筋から離れられるようになり、他のことを考えるようになります。

 他の考えが「聞き手」の心を占領しても、話し手は話しをつづけたとします。そこで、話し手が話し始めて、「聞き手」が心の中で終わらせて仕舞った話しが予定通り終わります。あるいは予定通り終わらずに話し続けて、新しい話しや考えがつけ加えられこともあります。

 さて、そのとき「聞き手」はどうするでしょうか。聞き手は、要点を聞きもらして仕舞うことになります。
聞き手の心は、話し手から離れて仕舞っています。彼は言葉を聞きながら、心に止めて置かないのです。本当に聞いていなかったのです。

 どうすればこのような傾向は、是正できるでしょうか。
 何よりもまず、この問題をハッキリ捉え、よく理解した上で判断することです。相手が聞くことを止めたなら、そのことにすぐ気づくことです。

 会議では、話し手の声が単調にいつまでも続くと、気持ちがそれについていけなくなるものです。これは危険信号です。ですから、『そうならないように、話を良く聞く事です』。

 また、会話では、言葉は聞いていても、その考え聞かない事がよくあります。
『そういう事は止めて、ねらいとか、その意図などの話は、良く聞くように努めることです』。
 もし、インタビューであれば、聞く事――あるいは答える事‥‥がなくなってしまいます。
 それではコミュニケーションが成立しません。「話を良く聞くことです」。
コミュニケーションは、そのために言葉を作り出しました。情報の共有によってお互いの情念を理解しあうためです。

 「聞くのをやめてしまうと、問題の解決が中途半端になり、話のかなりの部分を聞き損じてしまうかも知れない。良い聞き手は、自身の努力によって、うわの空になりやすいときを予測する」  つづく 一桁