総アクセス数 総アクセス数

行動心理
2017/01/19:更新
/back/行動心理の理解

条件反射による適応

人間行動
◆ 条件反射による適応
 動物には、条件反射の特性があることはよく知られています。
これは、動物が生きていくため自然の変化に適応する大切な性質です。たとえば、飢えた犬に 餌を見せると、涎を流します。これは動物の本能による反応です。

 ところで、この餌をあたえる場合に、いつも、チンと鐘を鳴らすことにして、それを繰 り返します。このような餌の与え方を続けると、犬の反応が固定します。つまり、チンと 鐘を鳴らすと、その犬の胃から胃液が分泌されるようになります。これがパブロフの犬に よる実験によって発見された、動物の条件反射です。

 人間は、犬と違う、鐘の音を聞いてよだれを垂らしてたまるか。と、強がる人もいます が、もし、人間に条件反射の性質がなかったら、どうなるでしょう。車が衝突しそうに なっても身の危険を感じなかったら、衝突を回避する動作をしないはずです。

よく落ち着いて考えると、犬に比較されてはたまらない、という自尊心が働くのでつよが りをいいたくなるかもしれません。しかし、人間も同じ動物です。生物に共通な特質もあ ります。自然界で生きて行くには、犬に学ばなければならないことも、沢山あります。

 人間ももちろん、条件反射の性質を強く持っています。
人間は、子供から大人になる生育環境でいろいろな場面に遭遇しながら育ちます。当然そ こには条件反射が形成されます。自分では何故そうしたのか、理由を説明することは出来 ませんが、なかなか、うまい具合に合理的な行動をとっています。また、人間の体の中を 見てみると、身体の内部ではホルモンの内分泌その他、意識に上ってこない現象も、うま く、体の外の変化にあわせた変化をしています。

そのため、この条件反射はある刺激によって体内の本能的反応が起こった場合、同時に全 く別の刺激が与えられることが繰り返されると、それが結合されることによって反射の条 件が成立するのです。

 要するに、条件と反射の同時性だけが問題になりますが、この条件反射の形成過程で は、条件と、反射の二つの関係には、因果関係または、合理的な結びつき、あるいは、そ の他の必然的な関係はありません。
つまり、犬がエサにありつくことと、鐘が鳴ることとの間には、何も必然的な関連はない のです。

 しかし、自然界において、何か二つのこと が同時に起これば、多くの場合、なんらかの必然性がその二つの間にあることが多くあり ます。

たとえば、ものが落下してものともののぶっつかりあう音です。ものが落下しても身の危 険に関係がなければ、音には無関係になり身を守る必要がありません。同じように、火災 が発生した場合、煙が出たり、臭いがします。そのとき、危険性や有害の認識がないと、 避難をしたり安全行動をとらないでしょう。

 その安全を必要とする条件の頻度に比例して、動物の本能的な反射の経験を積むことに なります。ですから、条件反射の性質が多くの場合、その動物の生存環境にとって生存の 可能性を増すために有用であることは、容易に想像できます。

◆ 人間の行動と条件反射
 人間社会は、自然界より早く変化します。
個々の人々は、住居を変え、学校を変え、勤務先や勤務地を変え、変える度に違った生活環境 に入ります。

 しかし、人間にはこの条件反射の性質を強く持ってますから、その状況の変化に素早く 対応できます。食べ物の味や臭いなど好き嫌いを含め合理的に生活を行うよう努めます。

これは、進化論的に環境のゆっくりとした変化には合理的に適応するでしょうが、急激な 変化には対応できないに違いないと思います。人間文明が生まれてからまだ一万年足らず です。その間人間の体の構造の進化は大きなものではない、といっても良いのではないか と思います。人間の社会に対する適応は条件反射によって可能になったのに違いないので す。

 ところが、この場合、人間は条件反射によって一度条件づけられると、それから逃れる ことは非常に苦痛になり困難になります。ある社会環境で、そこでの事情に適合した条件 づけができてしまった人は、その環境では暮らしやすいことになりますが、その後、も し、急に別の環境にはいると、またそこでの新しい条件づけができることになります。

けれども、その場合その人の心の中には、前の条件づけが何らかの形で残り、それが公然 とその人の思考・行動に影響してくるのがふつうです。
多くの場合、人間関係の障害になる人の心の歪みの原因はこの条件づけにあります。

 また、何かの偶然の出来事で合理的なつながりの全くないことが、ある本能と結びつい て条件づけられてしまいそれが強く心に残ることもあります。
こうなると、その人は自分でさえ納得のいかない不条理行動をとったり、あるいはそれの 衝動で苦しむことになります。

これが、人は何枚もの仮面をかぶっているといわれる理由です。人間は新しい環境にとっ ては意味のない古い条件づけによって思考し行動することが多いものだと思います。
これが刺激にたいして、それぞれの人はみな異なった反応を示す一つの理由になっていま す。またこれが、人はよく自分の心の中に別の本心があるように感ずる理由でもあるので す。

 この種の反応は、面白いことに当人にとっても説明の付かない心による衝動、つまり、 反射行動です。要するに本能的なものです。あるいは人間の本性によるものなどと思われ たりします。また、その人の生まれつきの性質で一生変えることのできないものだ。と、 思いこまれている場合も多いのです。
 もちろん、この条件反射は後天的なもので、生まれつきのものではありません。

◆ 言 葉を持つことの意味
 多くの動物は、条件反射によって環境に適応しますが、人間は、条件反射が固定するの を待つ時間がないような、急激な変化にたいして、さらに別の適応能力を持っています。

 それは、論理的に考えて合理的な行動をするという能力です。
これは他の動物にない、人間独特の創造性の問題です。

 人間が言葉を自由に扱えるのは、条件反射の性質を強く持っているためです。
子供の頃から言葉を仕込まれる過程で個々の言葉を、反射条件によって、実体や現 象、そして、心の中のいろいろな反応などと結びつけられます。

そのため、これらの言葉が組み合わせられると、ある条件反射の一組の反応を、自分 のこころの中に作り出すことができることになります。

ですから、一つの複雑な体験をしなくても、言葉をうまくつなぎ合わせると、その体 験と同じ体験をしたことになるので、人間は自分の心の外の早い変化に応じて、心の 中だけで新しい条件付けを、不十分ながらも作り出せる能力を持ってることになりま す。

 つまり、言葉をつかうことで、心の中でシュミレーション(擬体験)を行うことが できるのです。たとえば、人事異動によって、ある組織のトップマネジメントが 変わり、組織の方針が大きく変わったとします。部長や課長は、その新しい方針に よって、事分達は何をしなければならないかを考えなくてはなりません。

この、考えるということは、言葉をつなぎ合わせることで、一つのシュミレーション (擬体験)をすることになります。このことを繰り返すことによって、その人の心に 新しい方針による行動パターンが生まれてくることになります。

このような適応は、一つ一つの体験によって条件づけられたものでないことはハッキ リしています。そこで、言葉の理解は条件反射であるとしても、このような方法によ る適応は条件反射による適応というよりも、むしろ、言葉による合理的思考の上に 立った知的適応とでもいうべきものです。そしてこれは、人間であるためにはじめて 言葉によってできるものでもあるのです。理由は、明らかに人間のみが言葉を持って いるからです。

人間は生まれてすぐ社会との関連を持つことを通して言葉を覚え、自分の人格を形成 していきます。そこに、人間が社会に対する責任を持つ基盤があります。また、人間 は自然の中で生活するのではなく、人間同士がつくっている社会の中で生活をして一 生を終えます。この点について、言葉による思考から生まれた理性による判断とそれ に従った行動、つまり知的行動の真の意義が生じてきます。

従って、知的行動とは自分の属する社会、生活環境に対しての責任を中心とした理性 的判断に基づく行動です。また、それは、自分自身を含む人間の上的な面も大切にし て、社会の中にすむものとしての総合的な判断による理性的な行動なのであって、単 純な指標による機会論理的な行動とは全く異質のものです。

 さらに、情報機器の急激な発達によっ て、コンピュータなどは複雑な言葉を持つ持つようになってきました。これは、コン ピュータが知的な行動をとれることを意味します。この問題は、非常に興味ある発展 をすると思います。CIM関係やエキスパートシステムなどでそのことについてふれ たいと思います。

  • 環境に対する適応をまとめると  
    1. 進化論的変化による適応= 「条件反射による適応」
    2. 条件反射の性質による適 応=「人間の行動と条件反射」
    3. 知的適応=言葉を持つこと の意味(論理による適応)
       ということに分けられます。

     


  • home backnext