◆活用事例
効果を上げるための留意点
まず、この技法を使って効果を上げるために必要なことは、どうやって現場に近い状況を作り、狙いを実現するような具体的な案件を準備するかということです。
筆者の体験では、一般的な着想からでは、受講者が強いインパクトの中で取り組むほどの状況設定、案件を作るのは非常に至難です。自分の実務上の体験、現にその職務にあるものの体験を取材して、構成することをおすすめしたいと思います。
取材に当たって必要なことは、提供者の本音の部分も聞き出すことです。この場合に留意することは、教材提供者及びその所属課員が明確に分かってしまうようなことのないように配慮する必要があります。
自社の案件を自社の物差しで処理
実施の過程を重視したいのは、意志決定力、決断力も大切ですが、その前に、状況判断や分析力を持たせることに力点を置くことか肝要です。
事例研究技法による研修で感ずるのは、状況判断や原因分析の浅さです。受講者は原因の探求に十分なエネルギーを費やさずに、ただちに(というより安易に)平凡な結論に達しがちになります。
インバスケット法では短時間に意志決定する必要に迫られますが、これとて基本的には変わりません。どの案件が緊急重大なのか、どの案件は反対に結論を出して良いのか、長期的なものか、その場限りのものかの差があるだけです。ただし、これらの判断の物差しは、常識的に判断できる案件もありますが、その企業や組織のもつ伝統・風土・経営基本方針に根ざしていると考えるべきものがあります。そのため、自社の案件を纏め、自社の物差しで処理することでなければ訓練になりません。
自己啓発のキッカケづくりに有効
私は、この訓練は、自己啓発のキッカケづくりに役立つと考えています。従って受講対象者は現役の管理者よりも管理職要員に適用する法が効果的であると考えます。とくに上司にたいする補佐役のあり方に気づかせることにより、本当の意味で仕事の出来る部下を育てる技法であるといえます。
最後にインストラクターが受講者を評価する着眼点を示したスコア・ガイド(表1)及び案件をどんな順序でどんな考えでどう処理行動を起こしたかをレポートするアクション・レポートを提示しておきます。(図1)