ガンマのエンジン補修



ガンマの車検を取り直すにあたって、エンジンの傷みも補修しておくことにしました。
いまどき2ストロークのオートバイ自体、メーカーは生産を中止する傾向にあるので
参考にもならないでしょうが、半ば皆様の笑いネタ、半ば自分の日記帳として記しておきます。


擬装を外したところです。

現在、装着しているフロントタイヤは「ダンロップ・ジェグラ」です。
Fブレーキはブレーキホースを「BFグッドリッジ」のステンメッシュに換えています。

いずれラジアル対応の Fホイールに換装しようと考えているので
その際に、現代のレベルではプアに感じるFブレーキも手当てしたいところです。
大径ディスクに変えるだけでいくらかでも改善されるでしょうか?

チャンバーを始めとして、各部に錆と埃が目立ちます。

現在、装着している リアタイアは年代もの?の「ミシュランM59X」。
チャンバーは後ろ側が「SRSスガヤ」製の「RG400γ・SPレーサー」です。
前側はノーマルのマフラーです。





まずはスガヤチャンバーの補修から。

前側二気筒(1、2番)のサイレンサーを新品にすることにしました。


このチャンバー「RG400γ・SPレーサー」に標準で付属しているサイレンサーは
「No2R(ナンバーツーアール)」という全長の長いものです。
今回、補修用に取り寄せたのは「RG500γ・SPレーサー」用の
「No1R(ナンバーワンアール)」という全長の短いものです。
画像上が「No2R」画像下が「No1R」です。

SRSスガヤのかた(菅谷社長?)から伺ったはなしによると
本来の500用は、サイレンサーを固定するスプリングの取り付け位置が周方向に90度ずれていて
そのまま400チャンバーに付けるとテールピースが横向きになってしまうということです。
今回取り寄せた400用「No1R」サイレンサーは、特別にスプリングのフックを作り直したものらしいです。
それから500用「No1R」は前後のシリンダーでも形状が違うそうです。

錆びついていたチャンバー本体の補修です。


スガヤ・チャンバーは2番(前右)シリンダーのフレーム側取り付け部にクラックが入っていたので
暫定的にノーマル・マフラーに戻していました。再び装着しなおすにあたって、
いつもお世話になる「チェイス・モーターサイクル」さんで溶接により補修してもらいました。

同様に4番シリンダーのエキパイ部も腐食が進んでいて
それを補修してもらったらつぎはぎだらけになりました。

都合2回、3箇所の補修でも、結局ふさぎきることができませんでした。
「チェイス」の社長いわく、パイプの肉厚が「紙のように薄く」なっていたそうです。
とどのつまりこのチャンバーは一度廃棄し、ノーマルチャンバーに戻すことにしました。

走行性能は、社外品のほうがはるかに良いのでいずれオークションなりで
500用のスガヤチャンバーを入手したいと考えています。



その他の補記類の補修です。
エアクリーナーのフタを「チェイス」さんで新しく作ってもらいました。
「直線番長」仕様(produced by ari氏)を
じぶん流にアレンジしたものです。”17S”アルミからの切り出しです。


車体にとりつけるとこんなかんじ。
メインジェットは何番を使ったかなどの詳細は
この際伏せておくことにします。


バッテリーは再使用しようとも思いましたが、これは新品にしました。
使用前に補充電しました。充電前の電圧が12.26V、充電後が14.39Vでした。




エンジン本体の補修です。
シリンダーのベース・ガスケットが抜けて、クーラントが漏れていました。

シリンダーを取り外してガスケットを交換します。

補記類を取り外して、エンジン廻りを洗っているところ。


ロータリーディスクバルブのバルブシート

左上が国内後期(輸出全期)仕様のシート、右下が国内前期仕様のシート。
国内前期仕様のシートでは、輸出用のディスクバルブ(右の画像)が使えません。



500γの補修用バルブシートは
ポート面にバリの付いたままで送られてくるようです。

手作業で修正した4番バルブシートの吸気ポートです。
「あとの祭り」でどこを削ったのかよく分かりませんが、結構キツメの「鋳型跡」が付いていました。


一年あまりも放っておいてため
2,4番シリンダーのロータリーディスクバルブに錆びが出てしまいました。
直しているのか、壊しているのかわからない状態です。

国内仕様バルブの新品に交換しました。
ショックドライバーでネジを緩め、プラハンでバルブシートを叩いて
少しずつ浮かせると、うまく外れました。


シリンダヘッドを外しました。焼け色がバラバラです。

これはなぜかというと、1番シリンダの締め付けが甘かったために
「ツインリンクもてぎ」への日帰りツーリングという暴挙?の際
ベースガスケットが抜けて、冷却水が1、3番の燃焼室に回っていた為です。
幸いシリンダ、ピストンには引きずり傷は無く、いずれも再使用に耐えそうでした。


2番のピストンヘッド、まずまずの焼けぐあい。


失火ぎみだった4番。予想どおりカーボン付着が激しいです。
プラグを新品にして、撚調を合わせれば問題ないでしょう。

2番シリンダー


交換してから1万キロも走ってませんので「クロスハッチ」が残っていました。
ピストンスカート部の「当たり」が少しきついようでしたが
公道での使用には差し支えないだろうということで
ペーパー掛けなどの作業は行わないことにしました。


排気ポートをチャンバー側から覗いたところ。

欲を言えば、ポート研磨といきたいところですが
万一失敗したときに、1個5万円もするシリンダーを
あたら潰してしまうのが「もったいない」気がしましたので
清掃、給脂のみで組み立てることにしました。

ピストンは4気筒ともスカート部のコーティングが剥がれていましたが
これは当然のことなので、気にしないことにします。
レースの全開走行ならまだしも、走行距離にして数千キロくらいは
街中では充分に、寿命の範疇と考えられるのでこのまま組み立てます。

と、思いましたが、ここでひとつトラブルを発見しました。

4番ピストン(後ろ右)のセカンドリングが痛んでいました。
ガンマのセカンドリングは、内側がテーパー状になっていて
そこにエキスパンダリングを仕込んだものです。
そのエキスパンダが折れていました。
4番の失火の原因は、この為リングの張力が落ちて
シーリングが不十分だったからだと推理しました。

これは新品と交換しました。
ばね状になっているリングをはめ替えるだけの作業です。
しかしトップリングとセカンドリングを間違えないようにとか
リングの裏表を間違えないようにとか、いちいち気を使うので
エンジンの組み立てというのは、手数の割には疲れます。

ちなみにピストンは前後で部品番号が違いますが
これは熱膨張によるクリアランスの変化をみこして、前後で微妙に形状を違えている
ということでしょうか?
肉眼でみた限りではその違いの意味が分かり辛いです。

クランクケースの合わせ面には、ガスケットの紙やゴムの破片が付いていたので
使い込んで不要になったシックネスゲージを、スクレーパー代わりにして取り除きました。
0.1mmくらいがちょうど使いよかったです。


シリンダーの合わせ面も掃除して
パーツクリーナーでカーボンやホコリを洗浄しました。

排気バルブは、4気筒とも固着していなかったです。
ちなみにバルブは、突起があるほうをシリンダボアー側にするのが
正しい組み方です。

クランクケースにガスケットとノックピンを置いたところ。

前後のガスケットは、ウォータージャケットの穴数、穴の形状が違います。
前側2気筒のほうに、より多くの冷却水が回る設定になっているようです。



ボルトの締め付けには、今回はじめて
スズキ純正の工具「ヘキサゴンビットレンチセット」(品番09900−00410)を使用しました。

リーチが長いので、通常のヘキサゴンビットでは作業不可能な
シリンダのボルト締め付けが可能です。
4mm、5mm、6mm、8mmの四本セットです。
指定トルクは230〜270kg・m。対角線状に少しずつ締め付けました。


シリンダヘッドのガスケットは「UP21A」というマーク表示があるほうが上。
裏表に取り付けると、クーラントがシリンダー内外にダダ漏れになります。


シリンダヘッドのスタッドボルトが通る穴が、ボルトとこすれて
段付き磨耗していました。
ヤスリでならそうかとも思いましたが、ここは当面このままで組み立てることにしました。

2番シリンダーの排気バルブ・プーリーは、クランクケースにシリンダーを取り付ける前に
仕込んでおかないと、フレームのダウンンチューブに引っかかってあとで取り付けられなくなります。

今回はここでミスしたため、2番だけもういちどバラシ組みしました。

ここまでで、いちおうシリンダーの開放は終わりました。
つづいてキャブレターをメンテしました。

スロットル全閉時の弁すきまは0.5mm

0.5mmのピアノ線をゲージ代わりに大体の値を出しました。
この数値では、アイドリングが高すぎるようなので
スロットル・ストップスクリュを半回転戻しで対策しました。

油面は17mm。ノギスを使って目測で値を出しました。

スロットルワイヤーの調整は、スロットルバルブ中央のポンチ穴を目安にあわせます。

それから、スロットルを全開にしたとき
ほんとうに全開になっているか、念のために確認。
エアスクリュは標準で1と8分の5回転戻し。
今回は、標準で様子を見てみることにしました。

Square4BBSでもよく話題になっている、キャブレターのオイルチェックバルブ不良
→クランクケース内にエンジンオイル駄々漏れ、という症状ですが
うちの500γでも甚だしいものがありました。
今回、オイル漏れの対策部品として、ようやく
スズキ純正のチェックバルブ(スクーターのセピアZZ、レッツいずれかのもの)
を取り付けることができました。

部品に描かれている矢印の方向に従って
オイルラインの途中にはめ込むだけの作業。
品番は「16910−41D00」
一個500円前後でしたので四個で都合2000円ほど
効果を考えると、安い買い物だと思いました。

スパークプラグを新品にしました。

抵抗入りの「NGK BR8ES」です。
標準熱価は「B9ES」ですが、この仕様で問題なく運転できるので
特にこだわりませんでした。
「B7ES」まで落とすと、焼けすぎるようです。
「B7ES」では、いちど阪神高速湾岸線で焼きつきを経験しました。

ここまででいちおうエンジンのかたちになったので
クーラントとエンジンオイルを充填し
オイルポンプをエア抜きしました。
ガソリンタンクに30:1の混合ガソリンを入れてキックしてみたら
あっさりと掛かりました。
ラジエターのエア抜きも忘れず、実行します。
とはいってもガンマの場合、冷却水経路が合理的にできているので
エンジン始動してしばらくしてから、減った分の冷却水を補充するだけで
十分のようです。





ここまででいちおうエンジンの補修は終わり。
始動したところ異音もなくレッドーゾーン(10,000rpm)までは
気持ちよく吹け上がります。
まずふつうに走行できる状態には復帰しました。

ただ12,000rpmオーバーまで吹けあがった
スガヤチャンバー仕様と比べるとものたらないのは事実
それからスロー系の調整が合っていないようで
アイドル域〜4,000rpmのつながりがよくありません。
このあたりをあらためて調整したいと思います。

トランスミッションがガチャンガチャンと大きな音を立てて入ります
これは、シフトシャフトを支持するプラスチック製カラーのヘタリからくる
シフトドラムの作動の不確実さが原因のよう。

画像のNo22のパーツを交換しました。
ちなみにドライブスプロケットは取り外す必要がなかったので
新しく購入した、インパクトレンチの出番はありませんでした。
これでシフトの感触はだいぶ改善されましたが
ミッション・クラッチの完全オーバーホールを行ったほうがよさそうです。

つづく

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