・ヒメととら・
 とらが我が家に住み始めて早3ヶ月。日増しに彼は自分のテリトリーを拡張しよう
と奮闘し始めているのがわかる。先住猫のヒメの方が押され気味。唯一ヒメに残され
ていた私の布団も今ではとらに占領され、主人の布団に丸まって恨めしそうに私の布
団でくつろぐとらに睨みをきかせている。同居してから2ヶ月程たった頃、とらがヒ
メを追い出そうとする態度を見せ始めた。ヒメは大人になりかけているので、とらが
どんなにしつこく彼女にちょっかいを出そうとも本気で怒ることはなかった。でも彼
の傍若無人な態度に時々いらつきあまりしつこく追いかけ回されると、もの凄い声を
上げて猫パンチを食らわす。とらは本気で怒ったヒメに鳴きながら応戦。でも、結局
適わないと見極めると今度は少し離れた所からヒメを目で追い回す。ヒメが気を抜い
た瞬間そっと後ろから近づき反撃を試みる。それでもヒメには適わない。あああああ
 ヒメは「何でこんな子を連れてきたのよ」と言わんばかりの寂しげな表情で私を見
つめる事が多くなった。とらが遠慮なく私に甘える様子をヒメはジッと我慢している
のが私にはわかった。だからといって私の方からヒメに近づいて抱きしめようとして
も彼女はするりと逃げてしまう。なんとなく私に対して怒っているような、反抗して
いるような感じだった。私はヒメに何をしてあげたら良いのかわからなくて、二匹の
猫の板挟みになってちょっとヒステリー気味になっていた。あああああああああああ
 思い返せばヒメは頭が良いので人間が忙しそうにしていると邪魔をしなかった。私
が仕事をしている間はFAXの上に寝そべり何時間でもおとなしく待っている。風呂か
ら上がりドライヤーの音が止まると私が脱衣所から出てくることも知っていて、次に
キッチンで水を飲むことも知っているので、「ふにゃ」と私にとりあえず声を掛けて
先回りしてキッチンで待っている賢さもあった。私が行くと足下で転がり「撫でて欲
しい」もしくは「撫でろ」の合図をする。彼女が納得するまで撫でてやったりもして
いた。そういえばヒメは私が帰宅をすると玄関で横になって待っていた。だから私は
まずヒメを撫でて留守番の労をねぎらい、それから家事を始めるのが永い間の習慣に
なっていた。そうすればヒメは落ち着いて私の家事を邪魔することもなかった。
 でもとらが来てからは、玄関を開けると「にゃ〜〜〜」と甲高い声でとらが鳴いて
まとわりついてくる。ヒメの出番がなくなった。餌をあげるまでとらは鳴き止まない
ので、私は帰り着くと急いで猫二匹の餌作りとなる。ヒメは一言も発しないし、私に
何も要求しなくなっていた。彼女と私の3年間の同居でできあがっていた習慣が、と
らの存在でぷっつりととぎれていたことに私は気が付いた。あああああああああああ
 私はヒメに言った。「ヒメ、ごめんね。寂しい思いをさせて本当にごめん。だけど
ヒメがウチに来たのと同じように、とらもこの家の子になったの。仲良くしてあげて
ね。でもヒメも遠慮はいらないからね。今までとは同じようにはいかないけどヒメの
好きなようにしていいんだよ」と。ああああああああああああああああああああああ
 私の話を理解したのかどうかはわからないが、最近ヒメの態度が柔らかくなってき
た。以前同様私と一緒にお風呂に入り浴槽のふたの上でくつろいだり、時には玄関で
横になって待っているお茶目っぷりも取り戻しつつある。とらは相変わらず甘えん坊
で早朝から布団の上を駆け回っては私の寝不足に拍車を掛け、観葉植物をボロボロに
し、キッチンに出しっぱなしにしたパンや食材を囓り、ぬいぐるみを子分のように引
き回し、虫を追いかけては障子に穴を開けるお気楽な生活をおくっているが、ヒメと
の棲み分けも徐々にできあがってきたようだ。あああああああああああああああああ
 私の仕事中はヒメはFAXの上で眠り、とらは階下のこたつ近辺で昼寝をする。夜は
とらが私の布団の足下で眠り、ヒメは布団に潜り込んで私の脇の下にスッポリはまっ
て眠る。最近主人がポツリとつぶやいた。「結局二匹ともあなたの猫になったみたい
だね」と。(2004.5.13) あああああああああああああああああああああああああああ

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