・さようなら、とら・
 とらは私が最後に生活雑記に書き込んだ翌月、平成16年6月に亡くなりました。交通事故
でした。自分自身、こうやって落ち着いて彼の死を書き込むことができるようになるまで、
一年以上もかかったんだと、その時のショックがどれだけ大きかったのかを感じます。ああ
 ヒメは2階のベランダに出ても庭に降りることは決してありません。でも、雄猫のわんぱ
く盛りのとらは違いました。何気なく庭を見ると、とらに良く似た猫がうろついています。
あれ?っと思ったらやっぱり庭にいたのはとらでした。彼は1階の戸袋に取り付けたラティ
スを伝って、易々と庭に降りていました。ラティスに絡まっているモッコウバラのツルが傷
んでいて、彼がそこから降りたのだとわかりました。あああああああああああああああああ
 夕方も薄暗くなりかけた庭で散歩を楽しんでいるとらと目が合いました。その頃、わが家
の庭には野良猫が何匹も出入りしていましたので、彼らと鉢合わせをすることもあります。
私はすぐに庭に出てとらをつかまえようとしましたが、敏捷に逃げ回る彼をつかまえられま
せんでした。とらは隣家との境であるブロックを乗り越え飛び出して行きました。ブロック
の上に飛び乗り、こちらを振り向いたとらを見たのが、生きていた彼の最後の姿です。私は
遠回りしてとらの名を呼びながら近所を回りましたが、どこにも姿がありませんでした。
 すぐに戻るだろうと、雨戸を閉めずに待っていましたが、夜中になってもとらは帰ってき
ませんでした。翌朝、お腹が減れば戻るかも知れないとあきらめ、部屋の明かりをつけたま
ま待ちました。ところが、朝になっても戻りません。近所をひとまわりしましたがやはり姿
がありません。妙な胸騒ぎがして車の通りのはげしい道を見回すと、茶色の猫が道ばたに横
たわっているのが見えました。道を渡り近づくと、尻尾の先がカギ型に曲がっているのが見
えました。とらでした。通りの向かい側のお宅の御主人が「保健所の方ですか?」と私に声
を掛けてきました。猫が死んでいるので保健所に連絡をしたのだそうです。「いいえ、家の
猫なんです」とやっとのことで返事をして抱き帰りました。おそらく車にはねとばされて道
の端にいたので外傷がそれほど無かったのだと思いますが、私はとらを抱きながら「ごめん
ね、ごめんね」と謝りました。もっと気をつけるべきだった。他の猫に追いかけられてなの
か、人に驚いてなのか、とらは道に出てしまったのでしょう。どんなに謝ってもとらは生き
返りません。あああああああああああああああああああああああああああああああああああ
 庭の片隅にとらのお墓を作りました。その時、私の周りでずっと見守っていたのが野良猫
のぶーちゃんです。彼女は、ずっとわが家の庭に出入りしている妙に人なつこい雌猫です。
「あなたも車に気をつけるのよ」と声をかえると「うにゃ(わかってるわよ)」と返事をし
ました。彼女は雨戸を開け閉めするたびに、どこにいるのか飛ぶように走ってきます。家に
入ってくる勢いなので、いつも彼女の鼻先で戸を閉めていました。ちょっとかわいそうでし
たが、コロコロしているので飼い猫かな?と思っていたのです。ところが、ある日片目が目
やにでつぶれそうになって現れました。獣医に診てもらい、結局ぶーちゃんを迎え入れまし
た。お空に旅立ってしまったとらの弔いを一緒にしてくれたぶーちゃん。彼女と私の関係は
何でも依存してくるヒメとの関係とはまた違い、慰めてもらっている気がします。「ねー、
そんなに悲しまないで」と凛とした表情で私を見つめてくれるのです。あああああああああ
 とらは幸せだったのだろうか?野良猫のままだったら交通事故にも遭わずに済んだのでは
ないか?様々な思いがよぎり、限りがないと思われるほど悔やみましたが、やっと落ち着い
てとらの写真を見ることが出来るようになりました。(2006.2.11)ああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああ

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