・三郷の住人になるまで・

東京都と千葉県に隣接する三郷市に引っ越ししてきたのは10年前の1月だった。
当時はそれまで住んでいた大井町が恋しかった。新橋までの通勤や買い物の不便
さを嘆いた。「どうしてこんな所に来てしまったのだろう!」しかし35年ロー
ンの残る新築マンションを捨てて、おいそれとは戻れない。
季節は移り変わり初夏を迎えたある日、私の耳に聞こえてきたのは蛙の声。ゲコ
ゲコ、ガコガコ」の鳴き声はやがて輪唱となってこだまする。窓を開ければ涼し
い風が土の臭いを運ぶ。それらが都会でガチガチになった私の心と体を包み込ん
で、ほ〜っとさせてくれたのだった。「住めば都」とはこのことか!
その年の秋、突如の大病に見舞われて会社を辞めた。落ち込む私に土に触れる喜
びを教えてくれたのは主人だった。朝顔、百日草を育て、中国野菜を作る彼を見
ているうちに、何かが頭の中で弾けた。幸いわが家のベランダは広く、私はどん
どん土いじりにのめり込んでいった。気がついたときにはプランターの数が大中
小併せて40個を数え育てた野菜の品種も20を超えた!
わが家のベランダの様子を見ていた上階の住人は、感心したのか呆れたのか、と
もかく、自分も借りている貸し農園を紹介してくれると言う。三郷に住んで5年
目の平成6年4月からわずか5坪ながらもこの土地を耕すにい たり、これで私
は正式な三郷の住人になったような気がした。(1998.4)

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