Manfred Mann Chapter Three
Volume Two

曲目

  1. LADY ACE
  2. I AIN'T LAUGHING
  3. POOR SAD SUE
  4. JUMP BEFORE YOU THINK
  5. IT'S GOOD TO BE ALIVE
  6. HAPPY BEGINE ME
  7. VIRGINIA

演奏者

寸評

前回紹介のアルバムに引き続き1970年の10月に発売されたマンフレッド・マンズ・チャプター・スリーの2ndアルバムの紹介です。このバンドはこのアルバムで終わりですが、ブリティッシュジャズロックのアルバムとしては、個性が際だっているアルバムなので、自信を持って紹介したいと思います。

このアルバムは、まず目に付くのはジャケットでしょう。ジャケットは埋め尽くされた人形の首の写真で、一見かわいらしい人形が所狭しと詰めてあるだけのようにに見受けられるのですが、よくよく見ると不気味です。何せ首だけですから。首だけでジャケットを埋め尽くしているのです。そんな非常に個性的なジャケットに目を奪われながら聴いてみてもそれに負けないくらい個性的な内容となっています。

マンフレッド・マンと、マイク・ハグの曲の違いは前回と基本的には変わっていませんが、全7曲中5曲をマイク・ハグが作曲するなど、明らかにマイク・ハグががんばっているアルバムとなっています。特にオープニングの「LADY ACE」はビートの効いたブリティッシュジャズロックのある意味典型だと思っています。最初はゆったりしたヘヴィーなトーンで進んだかと思うと、途中で転調して一気にビートの効いたブラスロックを展開します。その後早いパッセージに乗って展開されるアルトサックスのフリーキーなソロと、その裏から徐々に立ち上がるブラスアンサンブル。それがうまく融合したところで、また最初のトーンに戻るという展開、とにかく、アンサンブルの妙に圧倒されます。そして、このアルバムのハイライトはなんといっても15分にも及ぶ長尺曲の「HAPPY BEGINE ME」です。この当時のブリティッシュジャズロックの出来ることすべてを詰め込んだかのような曲です。15分間、あっという間に過ぎます。ただ惜しいのはサビのブラスとコーラスがユニゾンで迫ってくるところで、ブラスにコーラスが負けちゃっているところです。

前段落で紹介の2曲はどちらもマイク・ハグの曲ですが、マンフレッド・マンも負けてはいません。前作に比べるとメロディーメイカーとしての腕が上がっています。マンフレッド・マンの次の所属バンドのマンフレッド・マンズ・アースバンドで向かうアメリカ的なポップサウンドの一端がここでも見受けられます。このアルバムに提供した2曲「IT'S GOOD TO BE ALIVE」と、「VIRGINIA」は「IT'S GOOD TO BE ALIVE」どっかり腰の据わったブリティッシュロックが骨格ですが、「VIRGINIA」は基本のサウンドはアメリカの西海岸のフォークロック風です。しかしながらこのアルバムに溶け合っているからすごいのです。ただ、アヴァンギャルドな側面が後退していて、その部分もマイク・ハグが受け持ってしまったのが変化といえば変化です。

このアルバムはおどろおどろしい面が全面に出てしまい、華が感じられないのは事実です。しかし、それを補って余りあるポップな楽曲群と、大所帯ならではの派手で変幻自在なブラスアレンジに酔いしれることが出来るでしょう。そして、このバンドのみが確立し得たともいえる、ポップなビートサウンドとジャズロックサウンドの融合の絶妙なバランスを体験できます。この後が続かなかったのは非常に残念ですが、マイク・ハグはソロアーティストとして、このバンドの方向性を貫き、また、マンフレッド・マンもまた前段落で紹介しましたマンフレッド・マンズ・アースバンドで、コンパクトな編成ながらこのアルバムの方向性を追求していくことになります。が、それはまた別の話になります。


Created: 2004/01/25
Last update: 2004/01/25

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