個人的怨念

ブリティッシュジャズロックとの邂逅から現状まで

私がまだ大学2年生の時だからちょっと昔になるのですが、当時、ちょっと遠くの大きな町にその地域で初めて開店したとある外資系のCDショップがあって、そこへ生まれて初めて行ったのです。その店は当時開店して少ししか経っていなかってという事もあり、手探りで入荷していたのか様々なCDが置いてあって、田舎モノの私は見たこともないようなCDを沢山見ることが出来、カルチャーショックを受けたものです。その時は4枚のCDを購入したのですが、その内の1枚が「ブリティッシュジャズロック私的名盤」でも紹介している、MAHAVISHNU ORCHESTRA / Birds of Fireの当時ソニーからリリースされていた日本盤CDだったのです(確か、この盤は日本初CD化の盤のはず・・・・・・)。

上記のアルバムは、名前だけは高校生の頃から知っていました。とある音楽評論家の書いたロックのアルバムのバイヤーズガイドにも紹介されていたし、私が個人的に愛してやまないジェフ・ベックのボックスセットである「ベッコロジー」にも、このマハヴィシュヌ・オーケストラのリーダーであるジョン・マクラフリンのことがブックレットで紹介されていたからです。で、大好きなジェフ・ベックに影響を与えた人間のいるバンドということだけで、妙に注目していたのですね。ジャズのアルバムだけど、「まぁよいか」という軽い気持ちで購入したのです。

結果としてこれが私が初めて購入したジャズ系のアルバムということになったのですが、このアルバムを聴き私のジャズに対する考えは根底から崩れ去っていきました。今考えると「いきなりこのアルバムはジャズ入門には向かないなぁ」と思うのですが、当時はそんな考えが出てくるはずもなく、アルバム全体を貫くハードロッキンなサウンドに度肝を抜かれたのです。そして、基本的にハードロック好きの私の性にピッタリ合ったということで直ぐにこの上ない愛聴盤となりました。そして、これもジャズやロックの一つの形ということを思い知り、ポピュラーミュージックの懐の深さを知った次第でもありました。

このアルバムを聴いて音楽に対する考え方が変わった私はそれまでに自分が持っていたロックアルバムの中にも、いくつかジャズとロックの融合のようなミクスチャー要素を見つける事が出来ました。またジェフ・ベックの中に流れているジャズっぽさにも注目出来るようになっていったのです。そして、巷で流れている所謂「フュージョン」と呼ばれているファンキーかつメロウなイージーリスニングジャズとは違う、もっと自由な発想のジャズロック(この言葉を知ったのはもう少し後)に注目し始めたのです。

そして大学を卒業して就職した年に出会ったキャラヴァンによって私のジャズロックの興味は一気にブリティッシュジャズロックへシフトして行きました。後は糸でたぐり寄せるように、ソフト・マシーンからカンタベリー系に入り、また、昔からキング・クリムゾンが好きだったということもあり、そこからキース・ティペットや、ビル・ブラッフォード関連などへ移ったりして、日本ではプログレッシヴロックにカテゴライズされているモノから順番に聴いていくようになりましたね。

私の音楽趣味の発端であるブリティッシュビートの中に、ブリティッシュジャズロックの要素を感じ始めたのもこの頃です。特に、マンフレッド・マンや、ゾンビーズなどから生じるジャズロック臭には刺激を受けたものです。そして、全ての基本がそこにあると解釈しだしたのもこの頃です。

現状では、自分の聴いてるイギリスの音楽の中でジャズロックが欠かせないものとなっています。というか、ジャズロックがジャンルを超越した音楽ジャンルである以上、音楽を聴く上での音楽ジャンルの無意味さに気付かされる原因となったものです。

メインストリームのロックやジャズに前衛性や実験性が薄らいで大衆性ばかりが全面に出てしまった今現在、先に挙げた3つの要素が仲良く同居していた1960年代〜1970年代中頃までのイギリスの音楽とりわけその中でも先鋭性の強いジャズロックに目を向けてみるのモノまた一興という思いがしますね。


Created: 2002/06/09
Last update: 2003/12/02

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