登山講座 その5  Written by T.saito 2000/7/20               表紙ページに戻る

今回は天候編です。 天気を予測することは非常に難しいことですが気象遭難にならぬよう必要最低限の

知識を身につけましょう。

1.一般常識

  "変わりやすいのは女性の気持ちと山の天気"は世の中の常識ですが以下のようなことが天気の一般論です。

a.気温は標高100メートルおきに0.6度下がる。アルプスの3000メートル級の山では 約 0.6 × 30 =18度

 平地部より気温が低くなり例え平地で30度あったとしても3000メートル地点では12度ですから夏でも

 防寒着が要るわけです。

b.天気情報はこまめに得ること。山行直前には必ず天気予報を聞いてください。 夏季は夏山天気予報なども

 NHKでは放送しています。 ラジオではNHK第二放送で9:15 16:00 22:00に詳しい気象情報をを流しています。

 大きな山小屋では天気図と予報を貼り出しているところもあります。注意してこまめに情報を得ることが

 必要です。 また 最近ではインターネットでリアルタイムな情報を得ることができます。


2.四季の天気

a.春

 春が近づくと大陸性高気圧が弱くなり移動性となります。 そこに低気圧が日本海に入ると南よりの風が

 吹き気温が高くなります。 この最初の南風を"春一番"と呼びますが気温が高くなるため雪のある山では

 融雪による雪崩、増水に気をつけなければなりません。 春は寒い大陸性高気圧と暖かい大平洋高気圧が

 共存するため一年で最も寒暖の差が激しく高い山では真冬も共存しますので十分気をつけなければなり

 ません。 この春山を甘くみるとゴールデンウィーク遭難となるわけです。

b.夏

 6月も半ばになると梅雨の原因となる梅雨前線が日本付近に停滞します。 梅雨も末期となると特に西日本

 では大雨になり関東では雷が発生し、梅雨前線が大平洋高気圧により北に押し上げられ梅雨明けとなります。

 "梅雨明け10日"ということわざがありますが梅雨明け後10日は優勢な大平洋高気圧のため最も安定した晴天 

 です。 これはだいたい8月第1週でアルプスは人で一杯となります。(高山植物もこのころが見ごろです)

 この時期を過ぎると山は雷や台風が発生しやすくなります。 雷については別途説明します。

c.秋

 9月に入ると梅雨の時期と同じ様に秋雨前線が停滞し天候がぐづつき台風でも近づくと大雨台風になりがち

 です。 この時期を過ぎると冷たい大陸性高気圧が寒気を吹き込み良い天候にはなるものの気温がぐっと

 さがるようになり、山は紅葉してきます。 秋は春と同様寒暖の差が激しく2000メートル以上の山では

 氷雨、雪が降ることもあり十分に注意することが必要です。 1989年10月上旬には北アルプスで雪による

 大量遭難が起きています。 さらにこの頃にはだいぶ日が短くなるため行動時間もあまり取れなくなる

 ので注意してください。

c.冬

  季節的には一番厳しい季節ですので冬山に関する知識と経験がなければ行動できないのは事実です。ここでは

 冬山については詳しくは述べません。


3.雷について

 雷は上空の寒気と強い日ざしによる昇温により積乱雲が発達して起きる熱雷がほとんどですが寒冷前線上に

 発生する界雷というのもあります。 雷は落雷、ヒョウ、突風が伴うので十分注意しなければなりません。

 注意点

 積乱雲が発達している ラジオにノイズが入る、雷鳴が聞こえるといったことがあれば雷が近づいている

 前兆です。 夏山では早めの行動をこころがけ午後早くには山小屋到着、下山することです。 では実際

 に雷にあってしまったらどうするか? 100%回避する方法はありません。 よく 大きな木の45度以内に入れば

 よいといいますが高山の稜線上では見当たりません。 気休めかもしれませんが低い姿勢、肩より高い位置

 に身につけている金属類をはずした方がよいと思います。



次回
その6では山の食料について説明します。