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1.構想練りと設計準備 [2009/11/17]
 例によって他の車両も途中ですが手を出してしまいました...仲間の中にもこのような方が多いのではないでしょうか(?)
どうやら私は製作中の車両が動く状態まで漕ぎ着けるとフラフラっと他へ気が行ってしまいがちのようです...

DE10をつくろうと思い立った主たる要因は、バッテリー管理が不要でたくさん客車を牽けるものがほしいなと思ったことでした。 加えて、ここ最近初代内燃機のキハの出番も少なく(ボギー車両ですが同軸が中寄り2軸のみで減速比も高速寄りで重牽引に向かない)、 折しもその頃仲間内でバッテリー不要な車両がよいと、発電式で試行錯誤を繰り返していたことも製作実行への足がかりのひとつであったと思います。 また、DE10といえば現役・現存車が多く全国的に見ることの出来る車両で周知度は高いにもかかわらず構造上の謎が多い機関車であると同時に、 付随軸のない5軸全軸駆動で5インチ機関車用途にもってこいであるということもあり、機種選択に時間は要しませんでした。

さて、今回のDE10製作テーマとして

I.DE10独特の軸配置『AAA-B』を再現する.(もちろん5全軸駆動で汎用エンジンを動力源とする)
II.重量級蒸機に負けない牽引力を持たせ、且つ5インチ機関車として実用性に富んだ車両にする.
III.寸法以外のスペックも出来るだけスケールダウンしてみる.


を挙げることにしました。

まず"I"に関してですが、なんと言っても入換機DE10の最大の特徴である軸配置"AAA-B"の再現を最も優先し、設計することにしました。 一般的な鉄道車両にはない構造を持ち、メカとして再現しがいがあるのに加え、本車の開発目的でもある "レール横圧の軽減"は実車換算より極端に急な曲線通過を強いられる5インチゲージ車両にとっても大変好都合であるのです。

"II","III"に関しては内容にかぶるところもありますが、とにかく強力で走るところを選ばない機関車にするということです。
その際、全長全幅など外形寸法だけではなく、重量・機関出力等性能面もスケールダウンしてみようという訳です。そうすれば自ずと5インチゲージ車両としては強力な機関車になるはずです。 しかしながら、いくら強力でも5インチゲージレイアウトにありがちな超急曲線や軌道不整にうまく対応できなければ 実用性を持ち合わせた機関車とはいえませんので、5インチ機関車なりのアレンジが各所必要になってきます。脱線頻発などうまく走らないのでは意味がないので、場合によっては見た目を犠牲にしてでも走行性を重視した設計にします。


◆AAA台車構造・機能を理解する
DE10のこの3軸側台車が"C"ではなく"AAA"軸配置であることはご存知の方が多いようですが、 その仕組みまでは一般的に知られていないようでした。 軸箱が車輪より内側にあるインサイドフレーム式なので外からは車輪とブレーキ棒、枕バネくらいしか見えません...。 1軸台車3つが個別に動く"AAA"、一体構造はどうなってるのか?これの理解が設計の必要条件となりました。

構想を練りはじめた頃、手元やWeb上には一般的な外側からの写真しかなく、 それらから構造を推測し、どうしたら5インチゲージ車両として実用的なAAA台車が作れるかを模索していました。 参考までにと、小さいゲージの鉄道模型の製作記も物色しましたが、 A+B構造だったり、C構造で中央軸が横動するだけだったりと、実車同様の構造を再現している物はないようです。(あったらすみません...) 確かに5インチゲージでも、見た目と確実な走行を両立した車両としてだけ製作するならこれで十分実用になるでしょう。
とにかく3軸台車の資料らしい資料もなかったので、必要とされうる機能に分けて少しずつ推測していきながら、 関連する書籍などを物色することにしました。 もし台車図面が先に手に入っても、どこがどのように動くかが解説されていないと機能・構造の理解は難しいと思われますので...。


一般的な2軸台車の機能に加えてこの台車に必要なものとして、

『3軸個別の3自由度(ピッチング・ローリング・ヨーイング)付与』
『3軸均等な荷重支持』

があると考えられます。 特に前者のうちヨーイングは横圧軽減の根幹です。 では実際に3軸がどのように配置されているのか最初の疑問です。3軸が全くの別々に車台枠に懸架され、 横圧をかけない位置へと移動するのか、はたまた3軸がある程度繋がった上で動くのか...。 台車外側からの写真や、『3軸均等な荷重支持』を実現するにはやはり後者のように3軸が繋がっていると考えるのが妥当のようです。

とりあえず、曲線上で横圧を遠心力以外かけない車輪の配置を考え、その実現方法を推測するとおおよそ下記の2つになると思います。
AAA台車機構推測 AAA台車機構推測
Fig.1Fig.2

Fig.1は図中"●"を中心に旋回(ヨーイング)できる両端軸と、主に横動を許容した中間軸を持った構造です。 現代の3台車形F級電機の台車配置と同等と考えることが出来ます。 Fig.2は中間軸のレール方向中心線上"●"(直線上で軸間距離の中点)を中心に旋回できる両端軸を持つ構造です。 強いて例えれば先輪1軸と従輪1軸を持った蒸気機関車でしょうか。 どちらも1番抵抗の少ない転がりが可能な配置ですが、軸間の変化や可動間接数の違いがあります。(Fig.1は横動を含めて3箇所であるのに対し、Fig.2では2箇所で済む.)
ところで、忘れてならないのはどちらにせよ車台からみればこの"AAA"台車自身も旋回する必要があるということです。
もしも個別の1軸台車が3軸台車全体旋回したと同等な位置関係まで動くことが出来る、 要するに横圧軽減の台車の動きと台車全体としての旋回をひとつの系で行っているとしたらこれはもうお手上げです。 とりあえずそれらは別々に存在していると願いながら推測を続けることにしました。

上記のような旋回方法を考えつつ、追加機能の2つ目である『3軸均等な荷重支持』方法にも目を向けはじめました。3軸均等に荷重を支えながら尚且つ個別に移動しなければならない、なんとも厄介な台車です...。

さて、3軸に均等に荷重を与えるには下記のような方法が思い浮かびます。
AAA台車機構推測 AAA台車機構推測
Fig.3Fig.4

Fig.3は3軸個々に等しいバネ定数を用いて荷重させる方法です。これも前述Fig.1のようにF軸機関車のそれに例えることができます。 Fig.4は1軸同士に橋を渡し、その長さの1:2となる場所にバネを設けて荷重を受ける方法です。 昔のイコライザーを有した台車の様です。個別台車のヨーイングと台車全体としての旋回が別の系であるとすれば、 後者も図中上部の板を回転させるだけで実現できます。
ここまで考えるとFig.1〜4はそれぞれ組みになって実現されうる可能性が高いということが分かってきます。 文脈・図からも明白だと思いますが、Fig.1-Fig.3・Fig.2-Fig.4という組み合わせです。 もちろん逆も可能ではありますが、個別の旋回具合やリンクを考えるとこちらのほうが自然であると考えられます。

さて、ここらで3軸台車台車の写真 を見るとどうでしょう、Fig.4とそっくりな位置に大きな枕バネが片側2本あるではないですか。
これにより、かなり高い確率でFig.2とFig.4の方法を用いて2大付加機能を持たせてあると推測されます。

このあたりまで推測できた頃、これらを裏付ける資料を手に入れることが出来ました。雑誌『とれいん』のバックナンバー、 No.292、1999年4月号です。これにはモデラーズファイルとしてDE10が取り上げられており、 "ED10を分解する"と題して全検中の車両を取材した記事が載っていました。それは6ページにも亘っており、 そのほとんどが写真であるという非常にありがたいものでした。やはり3軸台車の仕組み解明が趣旨である記述があり、 そのためのページ数も多く割かれていました。その台車分解写真により、推測が正しかったことが判明したわけです。
懸念していた台車全体の旋回については仮想芯皿式を取り入れているとのことで、 リンクの写真などから基本的には台車個別の動きと別になっているようでした。(横圧軽減の動きは関節・台車旋回は仮想芯皿) しかしながら、各軸箱は関節と仮想芯皿機構のリンクで位置決めされており、また各軸箱の復元力と台車旋回のそれを共に枕バネから得ている様で、全く繋がりが無い訳ではなさそうです。

とにかく、この資料により3軸台車構造は理解することができました。あとは実車の構造がどこまで"実用的な5インチ機関車"に取り入れることが出来るかですが、それは設計の段階で決めることにしました。


◆スペックのスケールダウン
5インチゲージではJR狭軌(3'6")モデルで1/8.4,標準軌モデルで1/11.3の縮尺で作られることが多いので、 同じ線路を使用する運転会などは標準軌車両が狭軌車両より小振りなってしまうおもしろい事態が頻発しています。
それはさておき、模型の縮尺は基本的にレールの幅を基準に決定され、それに従い車両の全長や車輪径等一次元の値が決まります。
一般的な模型のスケールダウンとはここまでなのですが、では重量や出力もそれに見合わせてスケールダウンしてはどうかと思いだしたのです。 そうすれば駆動系などの機械設計もそれに沿って各種パラメータを決定できるというよいこともでてきますし、 なっといっても小さいゲージでは実現し難い実車に忠実な世界を作り出すことが出来ます。
肝心なスケールダウンの方法は単純に(縮尺)^3でよいと思います。5インチゲージでは実車と同じように各所鉄で作ることが多いので、 そのまま小さくしたということでよいでしょう。分子や原始も縮尺か?といった話はおいておきましょう..(笑)。

さてそれでは寸法以外に何をスケールダウンできるかです。各書籍等によるDE10の性能諸元から実現できそうなものを下記のように抜粋しました。
DE10形ディーゼル機関車諸元
運転整備重量:65.0t
最大引張力:19,500kg
駆動機関:定格出力1250ps/1500rpm(V型12気筒DML61ZA)
最高運転速度:85km/h(高速段),45km/h(低速段)
※機関は前期・後期型で差異があるようです.

これを単純にスケールダウンすると、
5インチゲージDE10形ディーゼル機関車目標値
運転整備重量:110kg
最大引張力:32.9kg
駆動機関:定格2.1ps
最高運転速度:10.1km/h
となりました。
重量の項はいろいろ大変なことが発生すると予想されますが、ひとまずこれを目標値として設計していくことにしました。実現できればかなりの強力機となることでしょう。

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