カセットビジョン

1997年11月13日 更新

 

 今となっては知っている人はほとんどいないかもしれません。昭和58年頃にエポック社が出していたテレビゲーム機がカセットビジョンです。特徴は、なんといっても画面が荒い(ドットの大きさがものすごく大きい)、コントローラーが独立しておらずゲーム機本体と一緒になっているため操作が非常にやりにくい、でているゲームはほとんど何かのゲームのパクリであり、今だったら著作権が許さないのではないかといった感じです。もっとも今でも格闘ゲームや落ちものパズルには他のゲームと似たり寄ったりといったものがかなりありますが・・・。ドットが荒いなどの点は昔のゲーム機だから、と思われるかもしれませんが、カセットビジョンがでてから数ヶ月後にはファミコンが発売されていました。しかも定価は同じです。(14,800円)。このゲーム機のスペックでも、例えばテトリスがこのときにあったら十分に移植できていたかもしれません。何にしてももう少しソフトのオリジナル性がほしいゲーム機でした。

木こりの与作(エポック社) : カセットビジョンの中で唯一オリジナル性があったゲームです。ゲーム内容はきわめて単調で、与作がまむしやイノシシをよけながら木を切っていくというものです。与作は武器として斧を持っており、これで木を切ったり、まむしやイノシシを倒したりするわけです。もっともイノシシなどは倒すのに斧を振るタイミングが難しく、ジャンプでよけた方が簡単でした。他にも鳥が糞を落として、その糞に当たると与作はしびれて一定時間動けなくなるというのがありました。お間抜けなことにジャンプしている間に糞に当たると空中に静止したまま動かなくなるのです。難易度は三段階あり、ただ敵のスピードが変化するだけだったと記憶しています。

ギャラクシアン(エポック社) : タイトルだけをみますとナムコのアーケードゲームの方を思い浮かべますが、これは全く別のゲームです。しかし、宇宙空間(というか、ただ背景が真っ黒なだけ)の敵を倒していくというゲーム性はかなり似ています。今からみればタイトルだけでも十分著作権侵害に当たっているような感じはしているのですが、ナムコは何も文句を言わなかったのでしょうか。ゲーム内容は、ナムコのギャラクシアンよりはむしろニチブツのムーンクレスタの方によく似ています。ただし自機は一種類しか存在せず、画面に現れる敵キャラをすべてやっつけると1面クリア、数面クリアするごとにボーナスステージの様な、ちょうどギャラクシーウォーズのような画面構成になって、自機が隕石をよけながら上へ上がっていき、母船とドッキングするといった面になりました。ちなみに、ムーンクレスタ、ギャラクシーウォーズについてはスーパーファミコンでも移植版がでています(ムーンクレスタはニチブツアーケードクラシックに収録)。

パクパクモンスター(エポック社) : これは、ほとんどナムコのパックマンのパクリです。当時、パックマンは相当にはやっておりまして、LSIゲーム機(ゲームウォッチよりも前の段階で、ごつごつした大きさのものがなにやら沢山でていました)にも似たようなゲーム機は沢山ありましたが、テレビゲーム機でここまで真似したのはそうないかもしれません。パックマン以降、ドットイーター型のゲーム(主人公がドットを食べて進んでいくタイプのゲーム)が相当はやりましたが、パクパクモンスターは主人公の形や敵キャラの動き、パワーエサの存在など、あまりにアレンジを加えなさすぎていたような感じがします。唯一オリジナル性があった部分といえば、難しいモードでは数面ごとにマップが消えるといったところでしょうか。しかし、今こんなゲームを家庭用のコンシューマー機で作ったら、それこそ本家のゲームメーカーは黙ってはいないでしょう。それほどのんびりしていた時代でした。

モンスターマンション(エポック社) : これは、任天堂のドンキーコングのパクリでしょうか。モンスターにさらわれた恋人を救出しに主人公が上の階へと上っていくタイプのゲームです。といっても、上の階に進んでも面の構成が大きく変わることはなく、ドンキーコングの1面のような面が続いているだけです。全部で三面構成で、一面は岩(ドンキーコングでいう樽)が転がっている面、二面はモンスターがいる面、三面は岩とモンスターがいる面でした。一つの面には段がたったの三つしかなく、しかも一番上の段は恋人をさらったモンスターがいるだけの部分でしたので、自由に動ける部分は下二段だけであり、チェックポイントを全て通過する(確か、上からぶら下がっているものを取る)ことにより三段めへの梯子が出現するといった内容でした。

アストロコマンド(エポック社) : このゲームは、コナミのスクランブル(グラディウスの原型となったゲーム)を真似して作られたゲームだと思われます。ゲーム内容は、カセットビジョン初の横スクロールゲームで、自機が、下から飛んでくるミサイルや上から振ってくる爆弾などをよけながら進んでいき、最後のボスを倒すといったものです。こう書くとかっこいいように思えますが、所詮カセットビジョンであり、グラフィックは貧弱で敵のアルゴリズムもきわめて単調だったように覚えています。

 

 ここまで書いていて、カセットビジョンはいかに他のゲームの真似が多かったかとつくづく思えました。もっとも、当時テレビゲームはかなり珍しく、ゲームセンター、というか駄菓子屋の軒先においてあるゲームの雰囲気を少しでも家庭で味わいたいといったニーズが合ったのかもしれません。上に紹介したゲーム以外でも、インベーダーやペンゴの真似をしたゲームが確かあったように思えます。まあ、昔ということでこういうゲームだけでも許されていたのでしょうか。ちなみに、エポック社はこの後、スーパーカセットビジョンという後継機(カセットビジョンと互換性なし)を出しています。画面は格段に美しくなり(といってもファミコンと同程度)、ナムコと業務提携してマッピーとスカイキッドを出していたようですが、こちらはほとんど何の話題にものぼらずに消えていったような感じがします。やはりファミコン全盛の時代でしたし、とてもその牙城は崩せなかったのでしょう。このスーパーカセットビジョン、数年前に中野駅前の商店街にあるおもちゃ屋で売っているのを一度見たことがありますが、その後は売っているのでしょうか。また、去年、福島県のとあるおもちゃ屋でも確か売っていました。その店は未だにファミコンディスクシステム書き換え取扱店という表示がしてありました。肝心の書き換え機は見あたりませんでしたが。地方に行けばまだまだ(おもちゃ屋の中では)現役なのかもしれません。

 

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