柳井シリーズ第６戦

波乱のＰＶクラス 　予選ヒート１のレポートで書き忘れたが、スタート直前に降り出した雨は、スタート後しばらくして、すっかりやんだ。そして、レースはそのままドライレースで進められ、ＳＤ、ＳＯクラスの予選ヒートが終わったのである。そして、ＰＶクラスが、パドックでスタートを待っていると、なんと再び小雨が降り始めた。しかも、予選ヒート１の時よりも強い雨だった。 　と、みるみるうちにコースが光を反射し始めたのである。まさに、ウエットのコース状態であるが、スリックタイヤのままでスタートの合図が出されたのである。 　パドックからスタートの合図でマシンを押すオイラ。やはり若干エンジンの掛かりが悪いが、なんとかエンジンが掛かったように思えたので、オイラはマシンから離れようとした瞬間に落合選手のマシンがスピードを落とした。すぐさまマシンを押し、コースに飛び出す直前に何とか、勢いのあるエンジン音を響かせて落合選手は出遅れを取り戻そうと先行するマシンを追いかけフォーメーションラップに勢いよく飛びだしたのである。それを見守りながらオイラはピットへと急いだのだった。 　さて、フォーメーションラップの隊列も整い日章旗が振られたのである……。が、ポールポジションのマシンが失速。雨の対策をしてないからキャブレターに雨が入ったのかもしれない。後続のマシンは一気に加速体勢に入った状態での失速であるから、続くマシンがパニックしたのは当然である。最後尾のマシンは、コースから外れて、芝生の上を走ってしまうほどだったのである。 　当然ながら再スタート。各マシンはすぐにレース体勢からすぐに減速し、フォーメーションを始め隊列を整える。 　今度は……と、思った瞬間である。再び同じ事が起こった。ストレートの上はパニック状態であった。しかも、３番グリッドの武居（和）選手のマシンに５番グリッドの落合選手のマシンが衝突。が、そこでストップするわけにもいかないので、各マシンが何とか前へ進もうとする。落合選手も武居選手を押し出すような形になりながらもなんとかそのまま走り続けた。が、そこでやはり赤旗が降られレース中止となったのである。各マシンは速度を落とし周回し、スタートラインに停止したのである。 　スタートラインに停止した各マシンは、マシンの再調整にあわて、ピットからもクルーが飛び出し慌ただしく動き始めた。 　上の写真で、左端で赤い服を着たのがオイラである。落合選手と打ち合わせをして、その後、プラグ交換をしたのである。そして、再スタートを待ったのであるが、さてその時に、競技長より３番グリッドの武居（和）選手に対して「最後尾に着くように」というペナルティが言い渡された。先ほどのスタートで、落合選手が衝突した事により、武居選手が失速して隊列を乱したように見えたのであろう。その為のペナルティなのであろう。 競技長に抗議する河村社長。右側の黄色の服 　しかし、この判定に猛烈に抗議したのがセトウチレーシングの河村社長である。競技長に対して「今回の件は、全てポールポジションの選手が失速した事が原因でその後ろが隊列を乱した訳だから、ペナルティを受けるならポールの選手であり、武居選手ではない」という抗議である。「前の選手が起こした事でペナルティを受けていたら、後ろの選手はレースはできない」とまで言い放ったのである。 　あくまで競技長は威厳を持って対応していたが、さすがに河村社長の抗議に対して反論ができず、コントロールタワーに戻りオフィシャルでの競技をし始めたのである。そして、その結果、武居選手にはペナルティなし、ポールの選手に対して「最終コーナーから加速体勢に入るように。次も同じ結果になると、黒旗を出します。」という事で、そのままスタートする事が競技長から伝えられたのであった。 　レースはそのまま、スタートラインから各マシンフォーメーションラップに入り再スタートとなった。 　この中断の間も小雨は降り続き、コースはすっかりとウェットになっていたのである。そして、今度は日章旗が振られた後、各マシンがすざましいエキゾーストを響かせて、うまくスタートがきられた……と、思ってみていたのであるが、なんと次もミススタートの旗が振られたのであった。ピットで見ていたオイラ達は「なぜあれがミススタート？」と思ったが、すでにすでに各マシンは速度を落とし隊列を整えようとしていた。そして、４度目の正直で、無事にスタートが切られたのであった。 　スタート後、１コーナーをクリアして落合選手は４位で１コーナーを飛び出してきた。コースは完全にウェット状態で、各マシンともコーナー直前でマシンを揺らしている。一瞬も気が抜けないレースである。雨の中、スリックタイヤのレースだから、ペースも遅い、各コーナーでは、全てのマシンが極限までスピードを落としてる状態である。見ている方も非常に長く感じる。今、何週目か……と、ＬＡＰ表示に目をやるとまだ３週目！という感じであった。 　各マシンの差もなく、団子状態でレースが進んでいた。そして、Ｚコーナーで１台マシンを抜き３位までポジションをあげる落合選手であったが、その後また抜かれ４位になる。マシンの性能よりドライビングテクニックがものをいうレース展開となった。１位から４位までがテール・ツー・ノーズの状態で周回していた。いつでも前を抜けるし、いつでも後ろから抜かれる状態。そして、各マシンが大きく揺れながら、そしてドライバーは必死にマシンコントロールをしながらコーナーを攻めていた。河村社長曰く「氷の上のレースだな」という言葉がでるくらいであった。 　そして、中盤を過ぎたころ、第２コーナーで、各マシンとの競り合いの中、スピンしてしまったのだ。 　最後尾まで落ちたが、やはりこの雨の中、スピンするマシンも多く、最終的に予選ヒート２は５位でチェッカーを受けたのだった。雨の中、波乱に満ちたＰＶクラスの予選ヒート２だったのである。しかし、まずは無事に完走した事だけでも良しとしなければならないだろう。

予選ヒート２の２度目のスタートで武居（和）選手のマシンと衝突し、フロントフェアリングがつぶれた落合選手のマシン。新しいフロントフェアリングを付けて望んだ最初のレースだったのだが……。

柳井シリーズ第６戦　その４