面接終了後に考えたこと

1999.4.17

新宿に一人残されたぼくに、声が語り掛けてきた。

−なんで彼女が帰ってしまったか分かるか? 君に魅力がないからだよ。

違う! だって写真の現像があるって…。

−そんなのをマトモに信じてるのかい? 本当に君はお人好しだな。さもなければ嘘吐きだ。テレクラで知り合ったんだろう? 口説かれに来てるんだよ。なんでちゃんと口説こうとしないんだ。

口説くったって、今会ったばっかりなのに、急にそんなこと…。

−ちょっと待てよ。それがテレコミなんじゃないのか? だから君は所詮「人類学者」なんだよ。

でも、今まで別れた彼のこと、相談に乗ってあげたりしてたのに、急に口説いたりしたら彼女は傷つくかもしれないし…。

−それだ! そこなんだよ、君の一番の問題点は。「彼女が傷つくかもしれない」? 奇麗事ばかり言うな。君は、自分が傷つくのが怖いだけだ。女性たちは、とっくにそんなこと見抜いてるよ。

そ、それは…。そりゃぼくは傷つくのが怖いよ。でも傷つくのは誰だって怖いじゃないか! いいんだこれで。ぼくも傷つかないし、相手も傷つかない。何が悪いんだよ!

−今度は開き直りか。そうやって自分の殻に閉じこもって、一歩も前に踏み出そうとしない。

だって、しょうがないじゃないか! ぼくはぼくだ!

−で、そうやって自分のことを棚に上げて、またいつものように他人の分析をしたり批評をしたりするのか。まったく大したものだ。

分かったよ。じゃあどうすりゃいいのか教えてくれよ!

−教えてくれ? ふざけるな! 少しは自分の頭で考えるんだな。いい大学を出ていることが自慢らしいが、考えることはできないと見える。

自慢なんてそんな、一度もしてないよ!

−自分ではそのつもりかもしれんが、言葉の端々に見えるんだよ。君の、自分は他の人とは違うっていう、消しようのないオーラが。

そんなこと言われても…。

−そんなことも分からないのに、君は得意気にあんな文章を書いているのか。呆れてものも言えないな。

…。

それに呼応するように、いろいろな声が聞えてきた。「お前が人間としてつまらないからモテないのだ!」「自分が恥ずかしい思いをするのが、そんなに嫌? あなたはきっと、自分の立場のためなら、人のことも何とでも言えるんでしょう」「この人は一体、何をしたいんだろう」…。


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