タタラ街に開かれた小さな刀剣類店。
雑多な店のひしめきあうタタラ街の一角、半月をバックに飛翔する東洋の龍の浮き彫り。これを目印に入ると、こじんまりした店内に見事な刀剣類が並んでいる。
龍月堂は個人経営の小さな刀鍛冶屋だ。ニューロエイジにおいてなお手料理の好きな奥方たちのための包丁や自分のしるしを欲しがるストリートパンクのためのバタフライナイフ、果ては人の脂に鈍った愛用の刀を研ぎ直しにやってくる凄腕のカタナが訪れる。ショーケースの中に希代の妖刀の類はないという話だが、頼めば刀類の改造や見立てもしてくれる。メガコーポの量産品に飽きた時、実際に研いでいる場面を見た生きた刃が欲しい時に訪れるとよいだろう。
また、刀剣武器もほとんどが電脳サポート機能を受けるようになった現在でも、この店は完全な非電脳制御型の刀剣を扱っている。ニューロによる干渉が予測されるミッションや、決してドミネートされることのない頼れる武器が欲しい時にもお勧めだ。
店主は夏系移民の若者・明月寺 霞。店を荒らしに来た物騒な客は、彼の拳法の流れるようなデモンストレーション――夏に起源を持つという謎めいた華山龍星拳――を前に後悔することになる。万が一拳の力が効かない堅い相手のために、手の甲に自ら切れ味を増したサイバーブレードまで埋め込んでいるという話だ。既に免許皆伝の腕を持つとの彼は何年も前、今やテラウェアに吸収されんとしているヌーヴのメガコーポの抗争に巻き込まれたりと色々あったそうだが、頼まないと話してくれない。
店主に商売の才能がないのか正直だからなのか、相変わらずこの店はそれほどは儲かってはいないようだ。多少は蓄えがあるはずだが店主の霞は今なお市民ランクXに甘んじている。だがそれは、いつまでもストリートの人間でありたいと考える霞が自ら選んでいるようである。
ウェブ上から注文すると、可愛い声をした光る龍のアイコンが応対してくれる。
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