「二つの扉、二つの道が交わる所。当園の中央に当たる噴水庭園がここ星の泉。二つの扉からやってきた二人が出会い､共にコインを投げる約定の時、天空の星々の輝きを集めた噴水は舞い踊り、二人の願いをきっと叶えてくれるでしょう‥‥」

噴水庭園の水面を少娘が覗き込んでいる。その視線の先には、この公園のコイン達が光を受けて星のように煌いていた。
ファウンテン・オヴ・スターズの名に相応しく‥‥
彼女は、おもむろにポケットの中からコインを取り出すと噴水庭園めがけて放り投げる。
不意に水が高く吹き上がりコインを空高く舞い上げ、何処かに運んで行った。
「？」‥‥彼女は呆気に取られていたが、思い出したかのようにコインの飛んで行った方向に駆けていく。

　こちらが中央噴水庭園、【ファウンテン・オヴ・スターズ】（星の泉）です。トロンで自動制御された噴水と連動したホログラフは、おかげさまでご好評をいただいてます。ここは静かなところなので、皆さん噴水を眺めて一休みしたりお話をしてることが多いですね。
　待ち合わせにもよく使われます。そうそう、北西ゲートと南東ゲートから入ってここで待ち合わせすると吉だって、N◎VAウォーカーでも紹介されたんですよ。ゲート側の《ピース・オヴ・トワイライト》で両替したコインを投げて願い事もできるし､ちょっとだけロマンチックですよね？

「ごめんなさいね〜、呼び出しちゃって。あ、せっかくだから、夕食でもしていかない？」
「いいだろう。ついでに寄っただけだしな‥‥!!」
「ど、どうしたの銃なんかに手を掛けて??」
「あそこの茂みの中から‥‥殺気を感じた」
「?? き、きっと気のせいよ！」
「茂みを覗き込んでいる若者と娘は、君の知り合いじゃないのか？」
「そ、それも気のせいよ！ さ、早く行きましょう！」
「‥‥最近、見覚えのある顔をあちこちでよく見掛けるような気がするんだが‥‥」

「ほ〜、こんな人目につく所でデートとわ、“デス・ロード”の旦那もやるもんやな（＾＾）」
　そう呟きながら、茂みに隠れて双眼鏡とショットガンマイクを構えているのは“コランダム”その人である（＾＾；
「職場の人間に見つかる危険性の高い、この“twiLite”で待ち合せって事は、涼子はん、旦那にもうベタ惚れやな。‥‥もしや職場の人間にワザと目撃されといて、『責任とって』って迫る気か？
　まあ、あの旦那がこんな浮ついた場所に来るぐらいやから、『涼子・タウンゼント』の誕生は時間の問題やろなぁ‥‥」
「‥‥お兄ちゃん、“覗き”？」
　気が付くと、子供が興味深そうに、彼を見ている。
「ちゃう！ 断じて違う!! 男として、いや人としてぇ、俺には『2人の行く末を暖かく見守る』ちゅう崇高な使命があるんや！」

（ごそごそ、とコランダムの隣に潜り込んで）あ、コランダムだ。
な〜にやってんの？ 覗き？（＾＾）
え、「男として」？ なら、覗きなんだね。えっち〜（くすくす）。

　あと、一時期この噴水庭園によく覗きが出るとかいう噂がたったんですけど、財団の発表によるとあれはデマなんだそうです。恋人達を覗いて喜んでるなんて、ずいぶんいやらしいですよね！

噴水庭園から見た夜空

たまにゃあ歩いて帰るのもいいもんだ‥‥。下手にカッコつけちまったせいで足がないが、これはこれで気持ちいい。
【ふと立ち止まり空を見上げる】
ふ‥ん、この公園からだと結構星も見えるな。きれいに光ってやがる‥‥おっと、柄でもねえ(苦笑)俺には薄汚れた街の光の方がお似合いか‥‥。

　お客様もそう思います？ ホログラフをうまく使っているんですよ。遊びに来た時くらい、綺麗な空の下にいたいですしね‥‥

屋台

　園内の他のところにもありますけど、この噴水庭園の回りには屋台がたくさんあります。アイスクリームやポップコーンや風船や、災厄前風に言うと“イタリアン”にピザ屋とか、“アメリカン”なホットドックとかクレープまで。
　いろいろな食品メーカーさんの新商品が並ぶこともあります。ベンチでほのぼのと食べてる方が多いようですね。

時計塔

　最近私のバイオリンが有名になってきてちょっと嬉しい。最初のころとくらべると観客も増えてきた。日銭も増えてきたのでちょっとはノブユキを楽にしてあげれるかもしれない。そしてジェル（エル）は今日もはりきって演奏する。
最近あの男の人よく見るなぁ、そしてそばに寄り添う猫。猫‥‥じゃないわね。
それにあの男の人の憂いをふくんだ顔‥‥、なんかわけありのようだけど‥‥。私の演奏が彼の心に安らぎを与えれればと思うのは身勝手かしら‥‥。
せめて精一杯の演奏を届けよう、私の心から彼の心へ‥‥。
「では聞いて下さい、私の魂の曲を」
「リクエストがあればどうぞ」

　噴水の近くには時計塔があって、毎時に鐘を鳴らします。最近はちょうど夕方に、よくここでバイオリンを弾く人がいるそうです。男の子と女の子と。
　上手な演奏に聞き入って、昔の事を思い出したりする方もいるようですね‥‥

　懐かしい音色に誘われて、俺は時計塔の近くまでやって来た。きれいな音色‥‥それはバイオリンの音色‥‥。
　それのどこが懐かしいのか、自分にもよく分からない。しかし、時計塔の元で一人の少女が奏でる旋律の美しさは、その懐かしさの理由を考える暇を与えなかった。　‥‥俺はもう少し聞いていたかったのだ。彼女が自分の道具を片づけようとしたとき、思わず‥‥
「もう一曲、弾いていただけませんか‥‥？」
不意に流した涙を、誰にも悟られまいと慌ててぬぐった。‥‥俺は泣いているのか？我に返り、その理由を自分に問うた。
　その後俺は、一枚の写真の入った定期入れを取り出した。その写真には、ローティーンの頃の自分とその傍らにいる少女が幸せそうに写っていた。
　そしてそれこそが、俺に与えられた唯一の「手がかり」なのだ。

記念モニュメント

「人の心に夢を。彼方の世界に翼を。RI財団は、粋な貴方を応援します。^TM」

　ここには、このtwiLiteの出資元で運営にも参加しているRI財団の記念碑が建っています。
　私はtwiLite運営局“MiLion-Lite”所属なので、財団のことはよく知らないんです。徹底した秘密主義で、内部のことも知らされていないですしね。
　それにN◎VA支部は中央区にありますけど、財団の総本部って何処にあるのか分からないんですよ。ヌーヴだとかミトラスにあるだとか、果ては日本本国だって噂まであって。
　園内で警備に当たっている方々にはいつもお世話になってるんですけど‥‥

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