Running#3 "Night's Spawn"
〜 ランニング#3 夜の落し子 〜
11月を迎え、灰色の空に覆われた東京スプロール。今日もまた、大都会の影に生きる者たちの物語が始まる‥‥。 |
十六夜はお洒落なセキュアテック・クローシングから、日本のデザイナーブランドの巫女風のアーマー・ジャケットを購入。 |
謎のテスカトリポカ計画、 |
そのうち、十六夜にフラグが立って目黒
上野のシャーマン達から、足立区の非居住地域を調べてきて欲しいという話だ。生活レベル分の新円を支払ってしまい現在は貧乏な一行は、早速引き受けた。
ギグ前のヴィッキーは「もうリハーサルはやらなくて大丈夫よ」と〈シェイQダウン〉をすっぽかした!
覚醒後の原生林が広がる上野。場違いな一行は好奇の視線を受ける。バーンナウトの道を歩む神薙には冷たい視線もばっちり飛んできた!
湖畔の木の下には、静かに瞑想するローブ姿の白髪の老婆が。
「姿は見えています。いらっしゃい。これはこれは、日本の神のトーテムとは珍しい」
欧米から日本に渡ってきたシャーマン、“銀の癒し手”が一行を迎える。既にイニシエーションを何度も通過した彼女は強力な身体呪文や幻影呪文を自在に操るイニシエト――しかもトーテムは自由と純粋の象徴、ユニコーンだ。
1ヵ月前までシアワセ・バイオテクの研究所があった一帯で、不気味な唸り声や黒い影、娼婦が消えるなどといった噂がたっているという。クリッターがらみの事件のようだ。
「あのシェイプシフターという可能性もある」
前のセッションで会った狐の女傭兵の正体を見破れなくてウラミのある中が呟く。
老婆が言うには、上野の人間が出向いてもいいのだが、彼女の弟子の一人がイニシエーションの儀式中でここを離れられないらしい。ついでに特殊技能のオーラ・リーディングを誇る老婆はアストラル観察から一行の幾人かに険しい視線を向ける! |
「くッ‥‥オレ達にはどうしてもやらなければならないことがあるんだ〜!」
と答えるエッセンス0.1と3.0のレッド・スコーピオンの二人組。
サムライでもないのにエッセンス0.1のチュン‥‥中は「目的があったから(今はない)」と答える。
ついでにヴィッキーまでオーラを見て欲しそうにしている。
「貴方は感情が豊かなようですね」と老婆に言われるとエッセンス5.8の健全なヴィッキーはウキウキした。ぐは〜! 真面目な雰囲気が〜!
「道案内はオレ達がするよ。あの辺には詳しいんだ。よろしくな、兄ちゃん達」
と2人のメタヒューマンが歩み出る。ストリート育ちの牙を生やしたオークの少年、
そのうち雨が降りだしてくる。桐原のハーレー・ダヴィッドソン・スコーピオンの低い排気音が響く横で、中のウェストウィンドの後部座席では十六夜と遥が話していた。
「お姉ちゃん、エルフなんでしょ? どうして耳が尖ってないの?」
問いかける少女。
「‥‥色々訳があったのよ」
と十六夜はシェードの陰で答えた。う〜んシリアス。
一方、雨粒の叩き続けるフロントガラスの外では‥‥少年の乗るエンターテイメント・システムズ・パプースマキシマスというバイクがちゃちいことをいいことに、ヴィッキーがヤマハ・レイピアで煽っている! はううぅ!
雨が強くなってきたので、一行は近くのファミレス『マックヒュー綾瀬店』で休憩することにした。これは英語サプリメントに載っていた、値段の安さ、安全さでシアトルのダウンタウンでも有名なチェーン店である。 |
嵐の今夜、客はあまり入っておらず、
桐原は見晴らしのいい店内を見渡して、遮蔽がほとんどない事に気付いた。試しに神薙がテーブルの下を確かめてみると、しっかりと床に固定されていた!
二人は嬉しそうに食事をする。
「食えるだけ幸せだよ。食べる物もない人だって封鎖区にはいるもんな。姉ちゃんたち、メタヒューマンを差別したりしないよね? よかった。‥‥この東京じゃ、あんまりいい顔されないもんな」
とオークの少年の悠はしみじみと話し出す。
上野の近くに二人で暮らしており、魔法の素質のある遥はあの老婆のところに時々顔を出しているという。いつかもっと強くなって、自分の力で生きて見せる。遥もきっと、優秀なシャーマンになるよと少年は語った。
二人に家族はいないらしい。その事を聞かれると、二人の表情が少し陰った。 |
外では相変わらず強い雨が吹き荒れていた。十六夜はふと思い出す。
フチ社の何者かが私兵を送り、彼女を拉致しようと襲ってきた夜。育ての親の長門(ながと)夫妻の死に激昂し、
が! 「嵐の日は得意の旋風精霊が呼び出せる」と彼女はミラーシェードの陰でややうきうきしている! あうううぅ〜!
酸性雨にも大丈夫なレインコート等を買った一行は徒歩で北に向かった。俸給奴隷の住む集合住宅群を抜け、緑の多い寂れた地域に入る。雨はやや収まり、遠くでは犬か何かの遠吠えが。
公園にも誰もいず、不気味な雰囲気が漂う。その時! 十六夜の〈
茂みからコケコケならぬコカコカッとコカトリス夫婦が突進してきた! 思い切り銃で反撃する一行。接近する前に何とか撃退。と! 今度は後ろからコカトリス夫婦2組目が! 危ういところで射殺! |
「すげぇなぁ‥‥兄ちゃんたち」二人組も感心したように物陰から出てきた。
例のシアワセ・バイオテク研究所から逃げ出してきたコカトリスだろうか? しかし件の研究所も、もうコンクリートの土台しか残っていない‥‥。と! 遠くから微かに、女の悲鳴が聞こえてきた!
急ぐ一行の前に、廃棄された古い教会が姿を現す。遠くの稲妻をバックに、屋根の十字架が空しく輝く。
北アメリカで興った新宗教
蔦の絡まる門を抜け、霧の立ち込める中を一行は進む。一人だけで隠れる意味はいまいちないにもかかわらず、相変わらず影の好きな中は[隠密]する。
扉を開けると中は礼拝堂‥‥奥にはサングラスと黒いジャケット姿の若者が! 口には血が一筋流れている。腕に抱いているのは肌も露な娼婦‥‥だが死んでいる?
「死んじまったよ。バカな女だ」
若者はサクッと女の首を引きちぎると、隅の死体の山の上に放り投げた!
「よく来たじゃないか。最近は誰もこなくて寂しかったんだ。歓迎するよ」
十六夜はアストラルに知覚を切り替える。若者は人間ではない‥‥何かのウィルスに侵されているようだ! 用心する一行はなかなか彼に近づかない。
「そうさ。僕は永遠の夜に生きる。僕はヴァンパイアさ。闇の口づけを受けてから、僕の人生は変わったのさ!」
暗い礼拝堂で、若者は犬歯を剥き出しにして笑った。
「夜明けのバンパイア?」よく解らないことを言う中。(←だからアン・ライスを読んでたって別に自慢しなくていいんじゃぁ〜)
「この辺には邪魔なヤツもいない。さあ、楽しいパーティーを開こうじゃないか?」
礼拝堂に霧が立ち込める中、若者はすらりと日本刀を抜き放った。が! 一行は話を聞かないまま、距離があるのをいいことによってたかってバリバリ銃撃! 当然死亡!
しかし! ヴァンパイアの傷は即座に再生し、彼はむっくりと立ち上がった! 判定に失敗し、一行の誰も奴の弱点や能力を詳しく覚えていない!
「ハハハ、知ってるぞ。サムライに魔法使い‥‥シャドウランナーだな? パーティーはこれからさ! 一緒にダンスを踊ろうじゃないか?」
再び銃撃! 再び死亡! 今度はしばらく動かない。
桐原は死体の山を調べてみた。身元もないようなストリートの住人や娼婦やらだ。全て破壊されている。
その時! 振り返るとまたもやヴァンパイアが立ち上がる! 十六夜の呪文〈疲労(スリープ)〉が炸裂。精神ダメージと肉体ダメージの両方を与えれば倒せるかと考えた中は武器を手に接近。ヴァンパイアの日本刀が襲いかかる!
中は防御集中を宣言、コンバットプールを温存。
しかしこれは失敗だった! 〈身体能力増強(エンハンスド・フィジカル・アトリビュート)〉のパワーで筋力が14に増えていた敵の日本刀はダメージなんと17M! 拡大して17D、プールを使ってもほとんど減らせずに中は一撃で致命傷! まさに大斬りで一本っ! (当時、格ゲーでサムスピ等が流行っていたのです)
が、その時神薙が、判定に成功して脳髄を破壊すればヴァンパイアを倒せることをようやく思い出した。バーンナウトらしく血を吐きながら、呪文が炸裂して一行は何とか吸血鬼を倒す!
「ウゥ‥‥フ、フフ‥‥君たちは大都会の影に生きてる。僕だって永遠の夜に生きてるんだ。言ってみれば僕たちは仲間じゃないか。似た者同士、仲よくできないのかい?」
今度こそ本当に、彼の生命のオーラは消えていこうとしていた。
「僕を殺したって無駄だ。僕の仲間は世界中にいる。覚醒世界の夜に潜んでるのさ。
一行は死体を前に、吸血鬼の言い残した謎の言葉に顔を見合わせた。オルド・マキシマス? ‥‥が! 知力テストで目が走った桐原が(マジになぜか)知っていた! |
入口から見ていた悠と遥も駆け寄ってくる。 |
てな訳で割合早く
一行は教会を焼き払うことを決意。雨も既に上がっている。礼拝堂の壁の大地の母ガイアの絵も、十字架も、全てが炎の中に消えていった‥‥。そのうち、夜明けが訪れる。
一行はマックヒュー綾瀬支店へ戻った。悠と遥は自分たちのバイクで上野の方へ帰還。一行も一度は家に帰り、その後雨の上がった上野に全員集合。
「まさかヴァンパイアまでいたとは‥‥。随分と危険だったようですね。ありがとうございました」
“銀の癒し手”は予定より多く、一人6千新円を渡してくれた。
「何か、聞きたいことがあれば何なりと」
老婆は一行の質問に教えてくれた。52〜53年頃、魔法の素質を持つ身元のない子供たちが消えた事件があちこちで起こったことがあったという。企業のスカウトにしては多すぎる。だが、尻尾は掴めず、ある時期を境にその噂もぱったり止んだという。
「企業を信用してはいけません。彼らは大地を汚そうとしています。いずれにせよ、気をつけることです」
緑に包まれた上野は、静穏な雰囲気が漂っている。昨夜の雨の中を案内してくれた二人組も、今日はさっぱりしていた。
エルフの少女、
それに気付いた桐原は、何も言わずに相棒を眺めていた‥‥嗚呼、男の友情!
でも<や○いネタはやめよう! 天が許してもかみさまが許さないぞ!(笑)
「ところでさ、ヴィッキー、ロッカーなんだって? オレも音楽は好きだよ。シーナ・Mとかテディ・X、マリア・マーキュレルにエルフのダークヴァイン‥‥日本だったらメサイア・メーカーとかね。ギグなんだって? ねえ、オレ達も行っちゃだめかな?」 |
しばらく上野に留まり、十六夜は「よきかなよきかな」と和やかな一時を過ごす。
「私の方でも調べておきます。何かあったら、またいらっしゃい」と“銀の癒し手”は見送ってくれた。
一方神薙と桐原はドク・ワゴン・クリニックへ見舞いに行き、包帯ぐるぐるまきの中に彼の分のクレッドスティックを渡した。外を見るとまたにわか雨が降りだしている。
病院を出たその時、路地裏の方で微かに断末魔の叫び声が!
雨の降りしきる中、急いだ二人は入り組んだ路地の一角で立ち尽くした。背広を赤く染めた“さらりまん”が二人倒れている。その側には、アレスのモノフィラメント・ソードで体を支え、黒っぽいコートの男がうずくまっていた。
何かのドラッグを含み、ゆらりと立ち上がった男は弾かれたように振り向く。後ろに流した長い髪。鋭そうな顔のクローム一色の瞳。二人ははっとした。
かつて池袋のストリートをさ迷っていた頃。やはりストリートに蠢くクズの一匹だった若者――“陽炎(かげろう)”によく似ている? ここ数年、姿を見かけたことはなかったが‥‥? 相手も、二人の顔を見て少し驚いたようだ‥‥。 |
咄嗟に反応しきれなかった二人は顔を見合わせた。反射神経を増強した二人から見ても、今の動きはかなり速かった‥‥。
「イニシアチブはサイコロ3個か‥‥」
登場していないのに呟く中の亡霊。ちなみにリプレイにある通りダイスは6個でした。チミは黙って包帯巻かれてなさい。
桐原たちが見下ろすと、“さらりまん”の一人が震える手で鞄を差し出す!
「こ‥‥このカバンを、チバへ‥‥!」それだけ言うと、気絶してしまう!
ドク・ワゴンTMを匿名でコール。ヴィッキーや十六夜も合流する。鞄の中には、なんと、厳重に封をされた、『レンラク・コンピューター・システムズ』とでかでかと書かれた書類が!
再び中のいる病院へ。携帯電話で電話すると、レンラクのミスター・ヤマダが出てきた。ベッドの中から非論理的支離滅裂な説明をする中。 |
日本有数のハイテク・マーケット、秋葉原の電気街。ホットな最新プログラムを探すデッカーやIN◎UEコーポレーションのゲームデモに見入る子供達、髪の毛を後ろで結んだ若者や道の真中で荷物を持ったまま横文字の多い意味不明な会話を交わす人間などが溢れている。 |
後には、ゴールドのクレッドスティックが。思わぬ副収入である。
「‥‥この新円でバイオウェアの道に走れという天のお告げなのね」
呟く十六夜。それを言うなぁぁ〜!
やがて中も回復。一行はナイトクラブ〈シェイQダウン〉に集合した。悠と遥も、例のメモ書きのバリバリな特製入場券を持ってやってくる。
「ワア〜ォ。クールな入場券だゼ。こんなことをするのはヴィッキーしかいないからな。OKだぜ、ベイビー」
DJのテクノ−Z(ゾンビー)は快く入れてくれた。
やがてヴィッキーのギグが始まる。英語サプリ『SHADOWBEAT』にしたがって判定するとダイスの目が悪く、パフォーマンスの結果はアベレージだったがエブリワンがハッピー・ウィズ・イット(注:サプリメントの原文通り/笑)。悠と遥も本物のギグを見れて大満足のようだ。
かくして、また一つの“仕事”が終わった。物語はいよいよ核心に近づく。 |
闇深まる第六世界を舞台に、冒険は続く‥‥。
〜 またまたウソ広告 〜
(96年当時、劇場版エヴァンゲリオンが公開間近だったのです)
リプレイ用最終セッション
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Title From 映画『ストレンジ・デイズ』
Song by ピーター・ガブリエル featuringディープ・フォレストより
1996年12月公開予定・SF研のえばお向け前売券全国限定5枚
(アスカもといアステカの特製カレンダー付き)
補・完・セ・ヨ・! RI-Foundation > Shadowrun > Night's Prelude > Running#3
(かみさまはしないぞ)