九章

帰還

 

 傷だらけの九尾飛丸に肩を貸し、向島教授は平間村へと帰った。後ろからついてくる九十九鏡も、かなり傷を負っていた‥‥白城美鈴が彼女に心配そうに声を掛けている。
 夜道を急ぎ、一行は神社にたどり着いた。

 

鏡:鏡を返します。

GM:「おお、倒したのか」

向島教授:ゴー・トゥー・ヘヴンしました。イェ〜イ。

GM:「おお、すごい」

鏡&飛丸:きょ、教授‥‥ノリ、軽いですね。

向島教授:教授だからつい英語が出てしまう〜(笑)。

GM:「信じられない‥‥。あれをまだ倒せるものがいたとは」と絶句している。変な教授だと思っていたけど、少し見直したようだね。

鏡:おお。

向島教授:嬉しくないぞー

飛丸:死にそうだー

GM:「それについては俺には何ともできない。まあゆっくり静養してくれ」

向島教授:なんだ八咫烏だったの? てっきり神主のジジィが生意気な口聞いてるのかと思った。

飛丸:俺もだよー(笑)。
(↑GMが演技派でなかったのでその辺がちょっちゅ分かりにくかったようだ)

 

●事件は何とか一応解決だ。だけど、封印し直さないとあの落ち武者の亡霊もいつかは蘇る。一行は結局、神主に事情を全部話すことにしたんだ。

 

GM:神主さんは「先祖の罪を償って、彼らの霊を弔うことにいたします」いや「するぞよ」いや「しておこう」と言います。
「村長には私から話しておこう。これ以上道路建設を続けたらまた烏の群れに襲われることになる。烏の生態系を破壊したからだ、とでも言って」

鏡:世の中には、触れない方がいいこともあるのよ。‥‥って言って納得する人間は世の中にいないと思うけど。

向島教授:ここは国立公園にしよう。

鏡:国会議員がもう一度、首が飛んだり目の前を高速で何かが横切っていったりするのを見たら(笑)、この世には分からないこともあるんだと考え直すかもしれないね。

飛丸:ここには貴重な特別天然記念物クラスの烏が沢山いてなぜか知能が高い。それが最近狂暴化しているとか。

GM:それをなぜか考古学者が言うんですね(笑)。
 じゃあ国会議員の方はそういうことで。村長も彼が説得しておくそうです。神主さんはまだ何か言いたそうにしていますが。

飛丸:素直に言ってみろ。

向島教授:包み隠さず言え!

GM:「いや、‥‥ふう。そのうち分かることじゃから」と奥に引っ込む。

鏡:なにー、今話しなさい! というわけで[思考感知]。

GM:だから抵抗できねえんだって。じゃあ“帰りには連れが一人か二人程増えるかもしれない”とか考えてるのが分かった。

鏡:なにー、八咫烏と‥‥白蛇か! でも別に私が養うんじゃないからいいや、と思ってる。

GM:本当にそう思ってる? では次の日になります。速攻で帰りますか? ここで静養してもいいですが文明世界からかなり隔絶されてますが。

鏡:私活字中毒だから活字が読みたい〜!

向島教授:俺グルメ中毒〜!

GM:ここにも美味しい食べ物はありますが。

向島教授:一種類じゃ駄目なんスよ〜!

飛丸:東京へ帰りたい〜! 痛いよ〜死にそうだ! レンタルビデオ見たいよ〜! マルボロが切れた〜〜! タバコタバコタバコ〜(笑)! (ばたばた)

向島教授:ヤニ中っスか(笑)。

GM:帰る前に神主さんは白い袋をくれます。

鏡:この中には‥‥もしや‥‥? (←麻薬だと思ってるらしい)

GM:報酬だよ!
 「一応これは村の人からの寄進なのでそう思って使って欲しい。そういう訳で今回のささやかなお礼だと思ってくれ」

鏡:お金はきっちり貰っておく。

向島教授:普通封筒だよな。安心して下さい。貰ったら我々が勝手に使いますから。

 

 村人たちに別れを告げ、三人は荷物をまとめると村の入口に停めてある車へと向かった。ロックし忘れていたのに気付くと舌打ちしながら、九尾飛丸がドアを開ける。
 後部座席には、なぜか先客が二人座っていた。大人しげにちょこんと座っている着物姿の少女と、ふてくされたように向こうを向く黒のライダースーツを着た男が。

 

飛丸:おやどうしたんですか、お二人さん。

鏡:こんな田舎はイヤだ〜! と思ったとか。

GM:八咫烏は、「いや俺のバイクも誰かに壊されたんだ」と言ってる。

飛丸:蛇さんは?

GM:表向きっていうか君たちには「なくした記憶を取り戻すため」って言うよ。

向島教授:それはここにあるのでは‥‥。

飛丸:そういうもんじゃないでしょ!

GM:それに光の矢は町の方向へ向かって飛んでいった。で、二人を乗せていきますか?

鏡:乗せるって、もう乗ってるんでしょ。

飛丸:う〜ん、僕にひとこと言ってくれれば、気持ちよく乗せてあげるんだけどなぁ〜(笑)。

鏡:最初から乗ってると気分悪いよね。

向島教授:お化けかと思っちゃった。(←妖怪が言うなよ)

GM:「いや、言おうと思ったんですけど‥‥」と美鈴は「内気」だから。
もう一人は‥‥「暴れん坊」だから‥‥って全然関係ないぞ!

飛丸:なんだこの処刑ライダーは。リッターマシン野郎がちくしょ〜。

鏡:彼のリッターマシンはもうスクラップ状態らしいですよ。で乗せていきますか?

飛丸:乗せていくしかないだろう。僕が運転席、誰かが助手席、それで‥‥?

向島教授:一人トランク?

GM:いや、美鈴さんは小柄だから後ろに三人座れますよ。

飛丸:じゃあ教授、横から走ってきて下さい(笑)。

向島教授:16倍でダダダダ〜ッと(笑)。

鏡:岐阜から東京まで。その日高速道路では、高速で走る人影を見たという怪現象を伝える電話が殺到した、とか(笑)。

GM:「高速を走る謎の人影」って(笑)。

 

 報酬と二人の妖怪を乗せ、行きよりもずいぶん重くなった乗用車を九尾飛丸は走らせた。
 やがて高速に入り、見慣れた風景が目に入ってくる。
 人間世界へようやく帰ってきたのだ。立ち並ぶビル、住宅、鉄道、工場‥‥平間村のような場所は、もう現代の日本には存在しえないような気がする。人間達の造り出した大都会は、この世から闇を追い払った。妖怪達の住むべき場所は、もうどこにもないようにも思える。
 だが彼らは、必ず何処かに潜んでいるのだ。自分たちと同じように。あの落ち武者の亡霊のような存在も、まだこの日本の何処かにいるはずだ‥‥そして、あの雑誌記者の本体も。
 長時間のドライブの後、車は高速から国道十六号線に入った。懐かしい光景が戻ってきた。相模大野の近くで曲がると、車は駅前の駐車場に止まった。
 五人はロータリーの横断歩道を渡ると、雑居ビル二階の<月の雫>へ向かった。

 

GM:座敷童子の龍之介君が「ご苦労さまでした」とねぎらいの言葉をかけてくる。あの人影のことも言う? 多分思いつかないだろうけど。

鏡:仮にも元締めなんだからかくかくしかじか全部話すよ。

向島教授:一人だけ逃げた奴がいるんですよ〜。

飛丸:あの三流週刊誌野郎め、出版界の風上にも置けねえ野郎だ(笑)!

GM:「ちょっと待て、炎を操る妖怪で人間型の‥‥? それはまさか‥‥いやまさかね」とぱたぱた。

鏡:謎の宇宙生命体なのか?

向島教授:思考を読んでしまえ〜!

GM:逆に読み返されるのがオチですよ。

飛丸:はっきり教えて下さいよ〜。

向島教授:そうだ〜。気になってしょうがない。

GM:ソースブックに「陽炎」って奴が出てきたでしょ。元<月の雫>のメンバーで今行方不明の。そいつじゃないかな〜って思う。

 

●このGMの言ってるソースブックっていうのは、この人の作った<月の雫>の資料数ページのプリントのことだ。
 ネットワークの創始者、望月覚夜が妖怪「こしゃく」を倒しに出かけたまま戻ってこなかった時、共に出かけたのが‥‥当時最強だった「陽炎」穂村一志(ほむら・かずし)だとなってる。
 彼は今は、別の妖怪に操られているとか何とか書いてあるけど‥‥。

 

GM:ああこれは余談ですが、週間サーズデイのこと。例の記事の続きは載りませんでした。村上という記者は行方不明になったそうです。
 あとスカイライン計画はすったもんだあった末に結局中止になったそうです。

飛丸:あらまあ。

向島教授:できかけの道路はどうするんですか。植林するんですか?

GM:さあねえ。また責められるでしょうねえ。

鏡:ということで最後を締めようよ。今日もお江戸は日本晴れ。よよよいよよよいよよよい‥‥。

GM:で<月の雫>は新しいメンバーが二人増えたという所で、今回のシナリオは終了します。全員経験値‥‥というかCPを5点増やして下さい。じゃあ以上ということで。お疲れさまでした。

一同:お疲れさまでした。(ぱちぱちぱち)

 

梟の仕切り線です‥‥
......ガープス・妖魔夜行リプレイ『玉静 〜たましず〜』...九章 帰還......
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