W.ちょっとした問題発生とその対策


123A,R型のテスタを使っていて、いままで問題なかったんですが、最近、測定中にGmを示すメータの指針がドリフトするようになりました。今回紹介した、USM-118Bでも同様に起こりました。最初はスイッチなどの接触不良化と思いましたが、原因はそうではありませんでした。このドリフトの症状は、朝の早い時期では、全く問題ありあせんが、昼間や夜には、数分の周期でドリフトしていることがわかりました。このドリフトはGm測定の時のみでIb測定ではほとんど起きません。いろいろ調べた結果、我が家の電源AC100V系にその原因があるようでした。そのドリフトに同期して電源電圧が、若干ですが変動していました。100Vから97Vあたりを行ったり来たりしていました。電源電圧変動によるドリフトだろうと思い、Gm測定用の信号電圧や、B+電圧を測定してみました。しかしGm信号側は、電球をつかったブリッジで安定化されているし、B+電源も真空管による安定化回路で安定化されています。1次側の多少の電圧変動には、全く影響を受けない設計がなされています。
結局、何がドリフトの原因かわかりませんでした。いくつか試行錯誤の末、考えられることは、
AC電源の正弦波の歪ではないだろうかということです。最近の電気機器は、サイリスタやトライアックを用いた電力制御をしています。つまり正弦波の波形を任意の位相でon-offした電力制御を行なっています。このような電子制御では、正弦波の波形を歪ませる原因となり、負荷力率を変動させてしまいます。特に低力率になると皮相電力(無効電力)が大きくなり、1次側の正弦波の波形を大きく乱しているのではないかと考えられます。Gmブリッジのダイオードスイッチも電圧変動に対しては、バランス回路で吸収しますが波形変動は無理のようです。

対策をいろいろ考えてみたのですが、いちばん簡単なのはAC電源とテスタ本体の間に、安定化交流電源を入れてみることです。単なる電圧変動のみを安定化するタイプでなくて、AC周波数を内部で発信させているインバータタイプのものでないとうまくいきません。私は暫定的に、写真に示す、サーバ用の電源を使いました。100Vから115Vへの昇圧も兼ねています。一応、我が家の電気機器を全てoffにして調べたんですが、それでもこのドリフトは収まりませんでした。どうも、ご近所の機器に原因がありそうです。同じ柱上変圧器から数件が、配線されているので、やむを得ません。結局、安定化交流電源を入れることで、全くドリフトは発生しなくなりました。電圧や周波数、波形など安定しているのであたりまえと言えばあたりまえです。

おそらく、このテスタが開発されたころは、サイリスタ制御の電気機器など無かったんで、電圧変動のみを考慮した設計で十分だったんでしょうね。現代では、正弦波を乱す要因はいっぱいあります。AC電源に本テスタを直接接続して使うには、ちゃんとした対策が必要です。

方法として、テスタのGm信号およびGmブリッジを電源に同期しない、影響を受けない自励発信タイプに改造すれば問題なくなると思います。目下、設計中です。一応、ウィーンブリッジ発信器とそれに同期して、Gmブリッジをホトカップラで組み込もうと思っています。うまくいったら、レポートいたします。


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