電子工作のコーナー


1.CATVチューナーの試作Mar.24.2001

はじめに

最近のパソコン用TVチューナーボードやTVチューナー付のビデオキャプチャボードの機能(仕様)を見ていると、CATV対応などとかかれているものがあります。今まで、CATVはケーブルテレビ局から貸し出される、ホームターミナル(これが結構高価な値段がするんです。)でしか見ることが出来ないと思っていました。
我が家では、居間と寝床にそれぞれ1台づつテレビがありますが、居間のテレビには、このホームターミナルがついていて、通常のVHF以外のCATVチャンネル(C13〜C63)も見ることが出来ます(あたりまえ)。CATVチャンネルの中には、別途、契約をしないと見れないチャネルもあります。我が家では、別料金は払っていないのでいくつかのチャネル(たとえばWOWWOWなど)は「未契約」と表示がでて見ることができません。どうも特殊なスクランブルがかけられているようです。
一方、寝床のテレビは、VHFのアンテナ端子にケーブルテレビ局からきている高周波同軸ラインを通常の分配器で分岐させて接続しています。そのため通常のVHFの1チャネルから12チャネルの部分しか見れません。

そこで、「寝床でケーブルテレビを見よう」プロジェクトを起こしてみることにしました。
ただ、あてもなしにこのプロジェクトを起こしたわけではありません。そうです。最近のCATV対応TVチューナーボードを見ていると、なんら特殊なとことはしているわけではありません。ただ単に、CATVチャネル用の周波数が設定できるだけではないのか、思い込んだからです。また、カタログにきちんとCATV対応と明記されているところから、スクランブルがかけられていないチャネルは、ケーブルテレビ局から貸し出されているホームターミナル以外で聴取しても問題ないのでは、と思ったからです。
まずプロジェクトを進めるにあたり、次の計画を立てました。
 (1)ステップ1 CATVの周波数を調べる。
 (2)ステップ2 VHF、UHFの一般的なTVチューナでCATVチャネルの周波数にもつかえそうなものを探す
           (ただしデジタル制御出来るもの)。
 (3)ステップ3 TVチューナーの操作方法や制御方法を決める(出来るだけ安価で簡単に)
 (4)ステップ4 あとは実行あるのみ(ハード設計・製作、ソフトコーディング、デバッグ)

ステップ1を進める

CATVのチャネル周波数は、以前、ハムフェア(アマチュア無線のお祭り、年に1回、8月末に開催される)で購入した周波数帳から探すことにしました。
三才ブックス発行 ラジオライフ別冊
ありました、ありました。周波数リストはこちら

周波数をよく見ると、ちょうどVHF3チャネルから4チャネルの隙間、VHF12チャネルとUHF13チャネルの隙間に割りあてられています。

ステップ2を進める

TVチューナーですが、これは知る人ぞ、知るで、秋月電子のTVチューナ(NEC製のチューナー)を使うのが最適でしょう。以前、同社の液晶TVキットの製作で使ったことがありましたので、迷わず
これに決めました。ただ、CATVの周波数に使えるかどうかは、疑問が残りました。しかし周波数が上記で述べたとおりですので、VCOを使ったPLL制御のチューナであれば多分使えるだろうと推測しました。このチューナーはPLLシンセサイザチューナーですので、外付けのCPUから間単に周波数設定できます。秋月電子のチューナユニットには、周波数制御をするためのICのデータシートがついてきます(周波数設定部分だけ抜粋)。東芝のTD6832というICが使われています。詳細データシートは東芝のホームページでダウンロードできますが、チューナについてくる抜粋データシートで十分でしょう。制御方法の詳細は省略しますが、15ビットのシリアルデータを送ってやるだけでチャネル設定できます。
  結果を示すと要は、
     バンドデータ 4ビット(VHFのLOW周波数からUHFまでを4バンドにわけている)
     メイン周波数データ 10ビット(映像チャネル周波数に中間周波数 45.75MHzをたした、MHz数 整数部)
     サブ周波数データ 5ビット(メインのMHz未満の部分ですが、TVのチャネル周波数ではすべて0です)
 15ビットデータを、シリアルにクロックにあわせて転送することでチャネルが設定できます)
 タイミングチャートを下図に示します。

ステップ3を進める

いよいよCATVチューナーのスペック検討です。
まず、今回は、早く結果を試したいので最低の機能で製作してみることにしました。チャネル操作は、そうはいってもチャネル設定はロータリーエンコーダ式にしたいものです。もともと秋月の液晶テレビキットでも、ロータリエンコーダを使用しています。この操作に慣れているので、やはりこれくらいは実現したいものです。あれやこれやと考えているうちに、良い案が浮かびました。秋月電子のロータリエンコーダーキットを使う方法です。これは、BCD2桁の信号が取り出せるロータリエンコーダユニットです。表示は2桁で7セグメントLEDが使われておりますのでCATVチャネルの表示にはぴったりです。

あとは、PLLを制御するCPUです。何を使おうか悩みました。
まずは最低の機能で製作してみるとしても、将来機能拡張が出来るようにしておきたいと思いました。そんな中で、秋月電子のCPUシリーズなかで選ぶとしたらZ80系のAKI80、今、はやりのPIC(ピクとよんでいます)、或いは、ちょっとこった所でAKI−H8。いろいろありますが、簡易性、経済性の点ではPICマイコンがもっとも優れているでしょう。
以前、PIC16F84を使って、ビデオタイトラ(SSTVの画面にコールサインなどの文字をインポーズする道具)を作った経験があります。そのとき、16F84では、1KByteのプログラム容量しかなくて、苦労した記憶があります。そのときは16F84しか安価に入手することが出来なかったのでしかたがなかったのですが。
最近では、秋月のホームページには、プログラム容量も8KByteまで大きくなり、IO数も数10ビットとれる16F877が販売されています。IOピンが多く取れるのは有難いです。将来液晶表示器などを接続して、チャネル番号に相当するテレビ局の名前を表示したりする機能が追加できます。ということで、PICマイコンを使うことにしました。それも16F877です。これだけ決まると、ブロック図が勝手に決まってしまいます。
ここでPICマイコンについて若干説明しておきます。
PICは米国Microchip Technology Inc.が開発した、RISCライクの8ビットマイコンです。
ワンチップにCPUコア・プログラムROM・作業用RAM・A/Dコンバータなどが内蔵されています。
最近ではPICマイコンも有名になり教科書的な本も出ていますし、ホームページでも多数紹介され
ています。

さてこの16F877を使うには、PICライターが必要です。以前16F84の時は、トラ技(トランジスタ技術 CQ出版)かなにかの記事に紹介あったDOS/Vパソコンのパラレルポートを利用した簡易ライターを作って対応しました。今回、16F877を使うにあたっては、将来のことも考えて秋月電子のPICプログラマーキットを購入する事にしました。
早速、休日に秋葉原に出かけ、プログラマーキットとロータリーエンコーダーキット、PICマイコン(16F877)ほかアルミシャーシ等々を入手してきました。
PICプログラマーキットは、プリント基板に部品をはんだ付けするだけのキットで2時間ほどで完成します。プログラム統合環境ソフト(MPLAB)やPICライターなどのソフトがCD−Rでついています。これらをパソコンにインストールし、RS232Cケーブル(ストレートケーブル)で接続すると完成です。すべてWINDOWS環境で動作して便利です。操作性は抜群です。
秋月電子のPICプログラムライタを組み立てて、アルミシャーシに入れたところ

MPLABでアセンブルしているところ

PIC書き込みソフト

設計・製作

まず、全体の回路図から。回路図はこちら
つずいてソフト設計。これもPICのIOピンの割り付けのみで十分でしょう。
RB7:TVチューナーのENABLEに接続
RB6:TVチューナーのDATAに接続
RB5:TVチューナーのCLOCKに接続

RD7〜RD0:BCDロータリーエンコーダーの出力を接続

あとは、BCDデータにあわせて、チャネル周波数をTVチューナーのTD6832に送るプログラムをコーディングするだけ。
その後、何回かのデバッグをへて、もちろんシャーシ加工なども経て、写真にしめすようなCATVチューナーが完成しました。ばだバグがあるかもしれません。ある程度OKになったら、オブジェクトをアップの予定です。

CATVチューナー外観

CATVチューナーの裏側

使ってみて
いちおう、当初のプロジェクトの目標は達成されたかのようですが、実は、見たいチャネルはスクランブルがかかったままです。
以下に我が家での動作結果について報告します。"我が家での"と断ったのは、CATVのケーブルテレビ会社の我が家の契約条件での動作結果ですので念のため。
・VHF1〜VHF12
   映像音声OK
・CATV13〜63
   ・別契約が必要なチャネル(ホームターミナルでも見れないチャネル)
      音声OK 映像:スクランブル状態
   ・別契約が必要でないチャネル(ホームターミナルで見られるチャネル) ケース1
      音声OK 映像:スクランブル状態
   ・別契約が必要でないチャネル(ホームターミナルで見られるチャネル) ケース2
      音声 映像 OK

               ケース1                      ケース2

以上のような結果でした。別契約が必要でないチャネルでも、製作したCATVチューナーで見れるチャネルと、見れないチャネルがあることがわかりました。まあ、数万円もするホームターミナルをつけていないのでしょうがないかとあきらめざるを得ません。
でも大部分のチャネルは通常に見られるので満足です。

今後の展開

(1) ロータリエンコーダー、チャネル番号のLED表示を16F877 一個で出来るようにする。
(2) チャネル番号に相当する放送局名をLCD表示できるようにする。
(3) ケース1のスクランブル解除法の検討(してはいけないのかな?)

今回試作したCATVチューナに使用したPIC16F877を希望の方には、実費でお譲りできます。
(16F877+プログラム書き込み+梱包・送料=¥2000くらい)
当ページのホームにメールボックスがありますので、連絡ください。
くれぐれも、ご自身のメールIDの記入わすれの無いようにお願いします。

注意! ここで使用したTVチューナは秋月電子通商で以前売られていたNEC製のものです。現在ではALPS製が
売られていますが、こちらでは動作しません。 Jun.04 2001 Update


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