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遠い草原に吹く風

ふとした折りに思い浮かべる風景が3つあります。
一つは青い空をバックに大きなポプラの樹が風を受けて葉がざわざわと鳴っている様子。
2つ目は針葉樹林に雪が降り積もっている様子。
3つ目は……どこか遠い草原の草が、風に揺れている様子です。
誰もいない草原をサワサワと風が流れていくこの風景を
私はいつの頃から想いうかべるようになったのでしょうか。
小学生のころ図書室で読んだ『金色のライオン』には、
金色の秋の陽射しをのせた風が、ライ麦畑を果てしない海のように
波をたててそよいでいる様子が描かれていました。
「ビスク」というビールのような飲み物を作るためのライ麦畑に
金色のライオンが住んでいるお話です。
カポーティーの『草の竪琴』に描かれた「樹の上の家」がある森の草地。
思い出をささやいているという草のざわめきや、
『ヤンとカワカマス』に描かれた、遠くにゆったりと流れる銀色の大河が見える
マツムシ草の咲くロシアの草原もとても印象的です。
物語のなかの草原が、私のなかに広がっている……
そんな気持ちになることがあります。
『金色のライオン』香山彬子著 講談社
『草の竪琴』カポーティ著 新潮文庫
『ヤンとカワカマス』町田純著 未知谷
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