らいぶらりぃ
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神戸フィルハーモニック第40回定期演奏会

●日 時2000年6月10日(土)18時30分開演
●会 場神戸文化ホール・大ホール
●出 演朝比奈千足指揮神戸フィルハーモニック
ギター:福田進一
●曲 目イベール/寄港地
ロドリーゴ/アランフェス協奏曲
シャルパンティエ/組曲「イタリアの印象」
(アンコール)
アルハンブラ宮殿の思い出

 今回の神戸フィルの定期には、テーマがあります。それは、”地中海”であります。地中海! そう言えば、昨年、モロッコに行った時に見損なってしまったな…ということはさておき(^^;、何かしらそういうテーマがあると、演奏会全体がうまくまとまって、聴く側にしても嬉しいものです。

 でも、今回の一番の聴きどころは、やはり、何と言うても、福田さんの「アランフェス」でしょう。近ごろ、世間的には、村治佳織さんの「アランフェス」で話題がもちきり、という感じもしますが(そんなことはない?)、その村治さんの師匠さまに当たるのが、福田さんなわけです。日本を代表するギタリストとして、ご活躍されているのは言うまでもありません。そんな「超」一流の方をお迎えしての「アランフェス」は、ほぼ期待どおりの演奏でした。福田さんのギターは、何というか、とてもふくよかな感じの音色で、たっぷりとした情緒を表現していたと思います。男性的と言うか、やはり男性が弾くギターなのだな、ということが分かり(つまり、何回も聴いた村治さんのギターとは違うということ)、その堂々とした演奏は、素敵でした。一音一音に丹念に思いを込めるように弾いてはるそのお姿が、また素敵で、そのお姿を見ているだけでも、すっかり、彼の音楽に引き込まれてしまうのです。2楽章などは、たまらなく、もう最高でしたね。ノスタルジックな雰囲気が実に見事に表現されていて、聴く者の涙を誘うに十分な演奏でした。ぽろん、と響くギターの音色って、どうしてこんなにも切なく哀し気なんだろう、と思うのは私だけでしょうか… アンコールの「アルハンブラ宮殿…」も最高でした。そして、オケの方も、なかなかに健闘はしていたと思います。2楽章のオーボエのソロもなかなかよかったですし、福田さんの足を引っ張るようなことはあまりなかったのではないでしょうか。(もっとも、もうちょっと思考のある音を出してほしいところはありましたが…)

 さて、オーケストラの方の曲は、聴いたことのないような曲です。イベールの曲は、3つの楽章から成っていて、1曲目がローマからシチリア島のパレルモ、2曲目がチュニジアのチュニスから砂漠の町ネフタ、3曲目がスペインのバレンシア地方、とそれぞれの曲に、いろいろな地方の印象が描かれているのです。特に2曲目は、どこかイスラムな感じの漂う曲で、昨年に行ったモロッコの風景を頭に思い描きながら、何か懐かしいような感じで聴いていました。(^^;

 シャルパンティエの曲も聴いたこのない曲です。5つの曲から成っていて、それぞれがまた、イタリアの印象を描いているような曲です。印象的なのは、1曲目のセレナードの冒頭からいきなり始まり延々と続く、長ぁいチェロのソロ。本当に長いんです。一体、どこまで続くの?と言いたくなるくらいのソロが続いて、それからようやくに他の楽器も加わってくるのですね。そして、このチェロ・ソロのテーマが、後に終曲でも出てきて、曲全体を一つにまとめているような感じなのです。つまり、このテーマこそが、シャルパンティエにとっては、全曲を通じて一番表現したいことなのでしょうね。それにしても長いです。(^^; 他の曲でも度々、他のテーマで、チェロのソロが出てくるのですが、シャルパンティエって、チェロがお好きだったのでしょうか… 各曲とも、それぞれに個性的で、牧場の風景や、騾馬が疾走する風景、山の頂上からの風景などが描かれており、非常に色彩感のある曲だと思います。終曲はタランテラのリズムに乗った、熱い曲で、これでぱぁん!と終わるのが、なかなか格好いいですね。(でも、個人的には、メンデルスゾーンの「イタリア」の終楽章くらいにパンチのある方が好きです…)

 こんなふうに、あまり知られていないような曲を紹介するような演奏会がもっとあるといいですね。少なくとも、地元のオーケストラとしての神戸フィルには、そうした音楽の啓蒙活動的なものも求められているかと思いますので、そうした方針はいいことだと思います。次回はどんな選曲をしてくれるのか、楽しみです。