らいぶらりぃ
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神戸オペラ協会第17回オペラ公演

ヘンゼルとグレーテル

●日 時1997年12月25日(木)18時30分開演
●会 場アルッカイックホール
●出 演総監督:畑中良輔
指揮:河崎聡
演出:杉理一
管弦楽:エウフォニカ管弦楽団
ヘンゼル:飯田美奈子
グレーテル:吉田亜矢子
ペーター:中塚雅敏
ゲルトルート:橋本典子
魔女:加藤紀久代
眠りの精:河合美佳
露の精:熊谷美智代
合唱:神戸オペラ協会合唱団
児童合唱:ミュージカル神戸Alice/神戸ジュニアコーラス
バレエ:唐木幸子バレエスタジオ/聖加バレエ学園
●演 目フンパーディンク/ヘンゼルとグレーテル


 神戸オペラ協会さんの公演に行くのも初めてであります。クリスマスということも あってか、演目は「ヘンゼルとグレーテル」。そのせいか、お子様づれでいらっしゃ てる人が多かったようですね。そっか、学校も冬休みだもんな‥

<第1幕>  まず始まる序曲を聴いて、最初のHrなんか、ちょっと不安定そうでいながら割と 頑張ってはるので、ほぉ、と思っていたのです。が、何だか、段々とアラが見えてき てしまいました。(^^;) 管楽器の音はよく出ているのですが、何か、唐突に出てくる んですね、これが。あくまでも音楽全体の流れの中に、それらの音がある、という感 じには、ちょっと聴こえにくかったように思います。で、ちょっと期待が砕けてし まったのですが‥

 幕が開くと、何とも貧乏ったらしい家が(失礼)。ヘンゼルとグレーテルが、遊ん で、じゃない、仕事をしています。がすぐに仕事に飽きて、じゃれあうのですが、グ レーテルの吉田さんの歌には、ほぉ、と思うものがありました。この神戸オペラ協会 の公演でも、度々、役をもらって登場して、場を積んでいるだけのことはあります ね。声もよく通っていて、なかなかいい響きをしてはりました。一方、ヘンゼルの飯 田さんは、ちょっと声の芯が細いかな‥という感じで、比較してしまうと、ちょっと 響きが足りないように聴こえてしまいます。それが、逆に、少年っぽく、ボーイ・ソ プラノっぽく聴こえてきている、とも思いましたが。(^^;) しかし、吉田さんは腰か けては、足をばたばたとさせて、可愛らしい女の子、という風をよく演じてはります ね。演技にも、それほど違和感がなかったです。

 はしゃいでいるところへお母さんが帰ってきて、叱られる2人。しゅんとしながら も、割れてしまった壺からこぼれたミルクを、指ですくってはちびちびと舐める2 人。その様はまるで、子猫のよう。(実際、みゃぁ〜って、子猫のような声をあげて はりましたし。^^;)また叱られて、2人は苺を摘みに、森へと出かけて行くのでし た。

 うなだれるお母さんをよそに、お父さんのお帰りです。何やら陽気に歌いながら、 下手の花道からの登場です。このオペラの中で、唯一の男声ですね。そのせいか、何 か新鮮な風にも聴こえてしまった。(^^;) でも、実際、中塚さんの歌唱は、日本語を しっかりとしゃべっている、という感じで、言葉がとても聞き取りやすいなぁ、と思 いました。他の女声の皆さんの歌って、結構、聞き取りにくいんですよね。ま、無理 矢理に(?)訳詞を、もとのメロディにそのまま乗せて歌っているから、ということ もあるのでしょうけど、やはり、日本語の扱い方って難しいねんなぁ、ということを 改めて実感したのでした。やがて、お母さんとお父さんとが子供達を追って、森へと 飛び出して行って、1幕は終わりです。

<第2幕>  …と言っても、これもまた幕間なしで、続いていくのです。森のシーンが展開しま す。うっそうとした森、という感じを出すのに、今回、特別の演出をしたというの が、ここで森の香りを会場に漂わす、ということ。鼻をひくひくさせて、その香りを 味わおうとした…のですが、隣のおばさまの香水の匂いとごっちゃになって、よく分 からなかったよぉ。(;_;)(一応、それらしい香りはしたのですが、自信がない…) でも、ここの舞台での緑色の使い方はなかなか奇麗だったと思います。苺を摘んでい るうちに、日が暮れてきて、という光景も、奇麗に、黄昏という感じが出ていたと思 います。一瞬、「もののけ姫」のシシ神の森を思い出してしまいました…(^^;) 遠く から聴こえてくる子供達の歌は、まるでコダマの声のような…(^^;)\(--;) 2人が 不安そうにしていると、真ん中の大樹の中から出てくるのが、トトロ、じゃなくて、 眠りの精。砂をかけて、2人を眠りへと導きます。オケがここでとっても奇麗な音を 出して、眠りの中へ、静寂と安らぎの中へと沈み込んでいく様を、美しく表わす…は ずなのですが、何だか、弦(特にVn)のきこきことした響きが気になって、あんま り美しくなかったように思う… 舞台中央の茂みの中で完全に眠りにつく2人(う〜 ん、ここなんかも、シシ神の森の中で、アシタカが倒れているシーンを思い出すぞ… ^^;)、やがて、この2人を取り囲むように、天使達がやってきます。バレエ団によ る、天使の舞いであります。安らかさとやさしさ、そして神々しさが、しなやかな肢 体の動きで、実によく表れていたと思います。あぁ、女神さまっ!って感じで、その 美しさにしばし、うっとりと見とれてしまうのでした…(^^;) これだけでも見に来た 甲斐があったというものですな。(^^;;

<第3幕>  休憩の後、幕が上がると、そこはまだ第2幕と同じ場面。朝になり、2人が目覚め ます。朝から元気に歌うグレーテル、寝覚めで、そんなに声の出る人はおらんや ろぉ、てな突っ込みはおいといて(^^;)、やがて、舞台後方で、下の方から、お菓子の 家がずず〜ぅっと姿を現してきます。と、会場中にぷぅ〜んと漂う、何とも甘ぁいお 菓子の香り。そ、これが本公演の一番の目玉なんですね。そのあまりに美味しそうな 香りに、う〜ん、お腹すいたよぉ。(^o^;) でも、こういう演出はいいですね。何に しても、五感に訴えてこそ、印象に残るものだというところを、突いてくるのは、見 事なことだと思います。ちなみに、私も以前に、香りのするコンサートの手伝いをさ せてもらったことがあるのです。芳香機も私が操作しましたけど、会場ではいい香り でも、その元の機械の所では、臭いほど、その香りでいっぱいになって、しばらく は、その香りが体から離れなかった、なんてこともありました…

 やがて、魔女が登場し、2人を何とか家の中に誘い込もうと、あれやこれや言う台 詞が面白いです。「家の中には、ケーキにシュークリームに…(中略)…がいっぱり あるんだよぉ。」は、ま、普通ですが、「和風がよけりゃ、お饅頭にお団子、それに タコ焼きもあるんだよぉ。」…って、何でやねん!「ゲームがしたけりゃ、スーファ ミもあるし、あの、何と言ったか、そうそう、たまごっちもあるんだよぉ。」…何で やぁ! と、ここが一番、会場がどっと湧いたところでありました。やっぱり、関西 のノリなんですかねぇ。(好きだけど。^^;)そして、遂に杖の先からびびびっと光線 (?)を発して、2人に魔法をかける魔女、この魔法のシーンも、なかなか照明に 凝っていて、よかったですね。家の中に引きずり込まれた2人の前で展開するのは、 魔女の歌とそれに合せて踊る帚の舞い。魔女の加藤さんの声も、なかなかよく出てい て、いいなぁと思いました。けど、やっぱり、日本語が聞き取れないんですぅ… 台 詞のとこでは、会場いっぱいの笑いをとるほど、はっきりとしゃべってはっただけ に、ちょっと残念な気もしました。あと、帚の舞いは、暗転した舞台を背に、黒子さ んが手に、蛍光塗料を塗った帚(と言っても本物じゃなくて、柄がくねくねと曲がる ようにしたやつ)を持って出てきて、ピンスポを浴びて歌っている魔女の歌に合せ て、動かしている、わけですな。なかなかいい演出だと思いました。魔女も自分の帚 にまたがって、空を飛んでましたし(と言っても、ホリゾントのとこで、それらしい 人形を下から上へ引っ張っただけですが)、ここが終った時には、会場いっぱいの拍 手が起こりました。

 そして、何とか、魔女のスキを突いて、魔法の杖を奪い、魔女を落とし込もうと企 むヘンゼルとグレーテル、かまどの前に魔女をしゃがませて、そぉっと背後から近づ き、どぉん!と魔女を押し込んでしまいます。きゃぁぁ!って叫び声がほしかったな …とは思いましたが、テンポよく展開されるこの辺りは、特にお子さんなんかには、 飽きさせずに、舞台にぐっと目を引きつけさせるのでしょうね。

 最後は、魔法が解けて、よみがえった子供達との大合唱。お菓子の家は、真っ赤な 炎(?)の中に落城(??)し、森に平和が戻ってきます。下手の花道から、2人を 探しにやって来たお父さんとお母さんが現われ、無事の再開を喜びあい、歓喜の中 に、幕は降りてくるのでした。最後には、2幕の天使さまたちも後ろにすらっと並ん で、華やかさを盛り立てています。やっぱり、いいですねぇ…(*^^*) そうそう、 カーテンコールと言えば、ここでも、魔女を紹介、という段になって、あれ、何故か 魔女が3人…?ということをしてました。最後まで、イキな演出でした。

<まとめ>  ま、総じてみれば、オケと声楽に多少、不満もなきにあらず、なのですが、バレエ の美しさや、香りの演出のよさ等、なかなか楽しめた公演だったと思います。しか し、こういうものは、やはり、時期柄、2人で見にくるべきでしたかね…(って、相 手もいませんが…^^;)ゞ)