らいぶらりぃ
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神戸バッハ・カンタータ・アンサンブル第16回定期演奏会

●日 時1998年2月28日(土)18時開演
●会 場神戸新聞松方ホール
●出 演李善銘指揮神戸バッハ・カンタータ・アンサンブル
ソプラノ:佐藤則子/石塚広子/梅村憲子/鈴木公子
アルト:栗木充代/清水伊津子
テノール:頃安利秀
バス:緋田吉也/猪澤文人
●曲 目バッハ/ロ短調ミサ曲BWV232

 ロ短調ミサ、この大曲を、アマチュアで聴くというのも、あまりないかと思うので すが、果敢にも、神戸バッハ・カンタータ・アンサブルの皆さんが挑む、ということ で、期待して出かけていきました。

 「Kyrie」、出だしの何とも言えない緊張感が、この演奏にかける皆さんの意気込み というものを伝えてくるようです。おっ、なかなかいいじゃない、このぞくっとくる ようなんがいいのよねぇ、などと思いながら、「Christe」の二重唱。ソリストも、合 唱の団員から出してきてはるのですが、力のある方たちなんですね、十分に聴かせて くれはります。第2キリエも、荘重な雰囲気をうまく表現していました。

 そして、「Gloria」。あれ、ちょっと疲れが出てきたのかしらん、と思ってしまい ました。もう少し声が出てきてもいいような感じはしました。でも、トランペット が、いかにもバロックのラッパという音を出していて、華やかな雰囲気を盛り立てて いますね。「Laudamusu te」のソプラノ独唱、石塚さんの声って、個人的には好きな のですが(*^^*)、この曲にはまさにぴったり、という感じですね、明るい、優しい感 じで。オブリガートのヴァイオリンもまた、いいなぁ、と思いながら聴いてました。 しばらく音楽が流れていくと、「Qui sedes」、ここのオーボエ・ダ・モーレの音がま た、いいですね。この部分にふさわしい雰囲気を作り上げています。そして、バスの 独唱になる「Quoniam」、うぅ、Hrの音がちょっと… 一瞬、舞台の上の奏者全員に 焦燥感のようなものが見えたのは、気のせいかしらん。緋田さんも、何か歌いづらそ うな様子で、ちょっと残念な部分でした。けど、合唱がまた盛り返してきて、最後の フーガまで、一気に。崩壊しそうな不安も多少、ありましたけど(ごめんなさい)、 でも、見事に歌いきって、インタミとなるのでした。そりゃ、これだけの曲ですもん ね。歌うのも疲れますわなぁ。

 「Credo」は休憩の後だけに、ちょっとは盛り返してきたかな…という感じでした。 独唱よりは合唱の方が多くなる部分ですね。なかなか上手くまとめていたのではない でしょうか。何よりも素敵なのは、こう、こちらに訴えかけてくるものが、あるんで すね。それをはっきりと感じ取ることができるのが、嬉しいです。多少のしんどさは 確かに見受けられるのですが、それでも、「Crucifixus」のところなど、とってもき れいな演奏でした。(←この部分が一番好き。)「Et resurrexit」や「Et expecto」 の部分の盛り上がりも、素晴らしかったですね。人数的にはソプラノが多いのです が、少ない男声陣もなかなか頑張っていたと思います。テナーの響きも、私の好みに は合っているので、好感が持てます。(^^;)

 「Credo」が終わった段階で、ちらちらと会場から拍手が起こりましたが、曲はまだ 続くわけで、次の「Sanctus」、う〜む、さすがに疲れは隠せませんなぁ。もうちょっ とだけ、ハリがあれば、なおよいのにぃ、と思いました。「Osanna」も然りですね。 とりあえず、元気さはあるのですが、欲を言えば、ということです。

 「Agnusu Dei」、ここのアルト独唱が、また、とっても渋くって、いいですね。栗 木さんのソロは、深みのある響きで、まさにこの部分にふさわしいものだったと思い ます。そして、それを受けての合唱。最後のクライマックスへ向けて、次第に緊張感 が高まっていくのが、はっきりと分かります。じわじわっと来て、荘厳な雰囲気をか もし出しながら、全曲の幕が降りたのでした。

 はっきり言えるのは、上手く言葉では表現できないけれど、団員さんたちの何かし ら熱い想いみたいなものが、こちらにもしっかりと伝わってきた、ということです ね。ロ短調ミサを歌うんだ、という、それだけでもいいわけで、そういう想いが見事 に達成されていたのではないでしょうか。プログラムには指揮の李さんの言葉で、 「時期尚早」かもしれない、というようなことも書かれていましたが、決してそんな ことはなく、非常に”熱い”、素晴らしい演奏だったと思います。そして、アマチュ アだからこそ、ここまでできる、そういうことをも実感したのでした。