らいぶらりぃ
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ザ・シンフォニーホール名曲コンサートVol.32

美しき伝説 ザビーネ・マイヤー&小泉和裕

●日 時1998年9月15日(火・祝)14時開演
●会 場シンフォニーホール
●出 演小泉和裕指揮大阪センチュリー交響楽団
クラリネット:ザビーネ・マイヤー
●曲 目ウェーバー/歌劇「魔弾の射手」序曲
モーツァルト/クラリネット協奏曲イ長調K.622
ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調Op.67「運命」
(アンコール)
バッハ/G線上のアリア

 かつて、カラヤンが彼女をベルリン・フィルに登用した際に、問題として騒がれた マイヤーさん、1年でBPOを去ってからはソリストとして活躍していらっしゃいま すが、今回はそんな彼女の手によるモーツァルトです。

 あの問題の当時から彼女の美貌は知れ渡っているところですが、それは今でも変わ りありません。気高く美しいその様は、まさに、舞台の上で映えるというものです。 が、美しいのはその容姿だけではありません。クラリネットの音色もまた、素晴らし く美しいのです。それも、ただ単に美しいというだけでなく、音楽的にもぐっと充実 してきた、その円熟の美、とでも言うか、何やら風格のようなものすら感じられるの です。1楽章の明朗なテーマの歌い方はもちろん、ちょっと陰が漂うような部分での 表情もまた素敵です。3楽章も同様ですが、一番、おぉ!と思ったのは、2楽章。こ のアダージョの歌い方が中途半端でなく、むっちゃ奇麗!なんです。他の楽章が、ど ちらかというと、明るく太い線で響かせているのに対し、この楽章は、ほんま、細ぉ い線でぴぃ〜んとした響きを作り出しているのです。これこそ、まさにモーツァルト が書き表わしたかった響きなのだろうなぁ、という気がします。それに、この楽章の 後半の方で、ppになるところがあるのですが、この部分なんか、響きの線を完全に 細く1本に集中していて、その緊張感には、ぞくっとくるものがありました。これほ ど奇麗なモーツァルトというのも、なかなか聴けないのではないか、と思います。素 敵な演奏でした。

 ところで、今回のオケは大阪センチュリー。マイヤーさんのソロを、バックで実に 見事にサポートしていたと思います。先程の2楽章後半のppの部分でも、完全にマ イヤーさんと響きを一にしているのです。え、こんな細い響きも作れたの? と一 瞬、耳を疑ってしまいましたが(すみません…)、いや、見事にppを作り上げてい ました。在阪のオケでこれだけのppを出せるオケって、他にはないんじゃないかし らん…と、改めてセンチュリーの実力というものに感心します。だから、休憩後の 「運命」(今年何回も聴く曲ですね…)も、安心して聴くことができました。大フィ ルのように、ラッパ系の音に、え…? ということもなく、また、関西フィルのよう に、曲の組み立て方に、え…? というようなこともないんですね。全体をかっちり とまとめあげていて、やっぱり、関西はセンチュリーでもっているようなものなのか なぁ、と思ってしまうのでした… (そんなんだからこそ、他のオケにも頑張ってほ しいものなのですが…)