らいぶらりぃ
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朝日新聞創刊120周年記念

朝比奈隆のブルックナー

●日 時1998年9月13日(日)15時開演
●会 場フェスティバルホール
●出 演朝比奈隆指揮大阪フィルハーモニー交響楽団
●曲 目ブルックナー/交響曲第8番ハ短調(ハース版)

 7月の定期の時にも、ブルックナーの5番を見事なまでに演奏した大フィル。今日 は、同じく朝比奈隆先生の指揮で、ブルックナーの8番です。2か月の間にブルック ナーを2つも聴けるなんて、何と嬉しいことでしょう…(演奏する方は大変でしょう が。)

 さて、その7月の時と同様、今回も団員の皆さん、かなり気合が入っているよう で、第1楽章が始まるとすぐに、その気合が伝わってくるような感じになります。 ずっしりと太く響く低弦のテーマからして、何か、いつもと違うような雰囲気が漂っ てきます。ブルックナーらしい動機が現われては繰り返されて、曲が進んでいきます が、この扱い方が、まさに、ブルックナーらしさを表に出していると思います。それ は、つまり、朝比奈先生の持っていらっしゃるブルックナーの世界、それにオケが しっかりと着いて行っている、ということでもあります。再現部でクライマックスへ 至るところなど、実に見事にその頂点を築き上げていたと思います。ひとつ、気にな るのは、Tpの音がちょっと… ということ。決して外れているとかいうことはない のですが、音そのものにもう少し渋みがあってもいいような気がするのです。その方 がこの曲には合っているかな、と思うのですが、やはり、難しいのでしょうかねぇ…

 第2楽章のスケルツォもなかなかの熱演です。が、印象的なのは、スケルツォの部 分よりも、トリオの部分です。Vnに何ともロマンティックなメロディが現れるとこ ろの何と美しいこと。大フィルの弦で、これほど、おぉ!と思ったことって、あまり ないだけに(--;)、余計に印象的に聴こえます。そして、その弦の美しさは、第3楽章 に至って、さらに増していきます。Vn或いはVcに現れる、いくつかのテーマ、こ れらを実にたっぷりと歌い上げていくのは、ほんと、感動的です。このアダージョの 中に込められている(のかどうか分かりませんが)、敬虔なクリスチャンであったブ ルックナーの宗教心というようなものも垣間見るような感じがして、じぃっと聴いて いると、ほろりとくるものがありました。

 そして、輝かしい第4楽章、第1テーマもばっちりときまっています。第2、第3 のテーマを歌い上げ、さらに曲は進んでいきますが、そのどっしりとしたテンポは、 まさに王者の風格とでも言うようなもので、まさに王道を歩んで行く、という感じで す。うねうねとするような展開部、さらに大きく広がる再現部と進んで、やがて金管 に導かれてのコーダ、この辺りからか、何やら、Hrに疲れが見え始めたようで、 ちょっと音が危なっかしいようなところもあったのですが、でも、そのような小さな ことは気にしますまい。どんどんと曲は盛り上がりを見せ、最後には、巨大な頂点を 築き上げて、堂々とフィナーレを飾るのでした。

 総じて言うと、この曲の持っている、宗教的な響きというものが実によく表現され ていたと思います。さすが、ブルックナーと言えば朝比奈先生、と言うだけのことは あります。その素晴らしい音楽の組み立てには、ただ、感動するばかりでした。7月 の5番と並ぶ、素晴らしい演奏だったと思います。あとは、大フィル側にしてみれ ば、金管の音がもうちょっとよくなれば、と思います。(それだけが今回の気がかり です…)