らいぶらりぃ | |||||
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●日 時 | 1999年12月13日(月)18時30分開演 |
●会 場 | 神戸国際会館こくさいホール |
●演 目 | モーツァルト/歌劇「フィガロの結婚」 |
●出 演 | アルマヴィーヴァ伯爵:アダム・クルシェフスキ |
伯爵婦人:ゾフィア・ヴィトコフスカ | |
スザンナ:マルタ・ボベルスカ | |
フィガロ:アンジェイ・クリムチャック | |
ケルビーノ:マウゴジャータ・ガルーシュカ | |
マルチェリーナ:アレクサンドラ・ホフマン | |
バジーリオ&クルツィオ:イェージ・クネティッグ | |
バルトロ:イェージ・マーレル | |
アントーニオ:ボグダン・シリーヴァ | |
バルバリーナ:ユスティーナ・ステンピェニ | |
芸術監督:ステファン・ストコフスキ | |
演出:リシャルド・ペリット | |
舞台芸術:アンジェイ・サドフスキー | |
ズビグニェフ・グラーヴァ指揮 | |
ポーランド国立ワルシャワ室内歌劇場管弦楽団&合唱団 | |
ハープシコード:エヴァ・ペルヴェーツカ |
今回が初来日という、ポーランド国立ワルシャワ室内歌劇場オペラ。モーツァルト の全オペラ作品をレパートリーに持っているということですが、今回、上演するの は、「フィガロの結婚」。噂に違わない、素敵な公演でした。何が素敵って、まず、序曲が始まり、そのオーケストラの音を聴いた段階で、何 か、とってもいい感じがするのです。オーケストラ自体の音が、とても古典的という か、古楽のような響きを持っているのですね。それが、モーツァルトの軽やかな音楽 に実によく合っていて、あの序曲にしても、ころころと転がるような軽快さを出して いて、聴いていて、実に心地よいのです。そして、それは歌劇の中に入っても同様 で、この軽やかで上品な響きが、歌い手達をしっかりと支えていて、軽快でコミカル な歌劇、というのをよく表わしているように感じます。これこそが、モーツァルトの 音、というものではないかしらん、とも思います。
その歌い手達も、皆さん、実に素晴らしい技量を持っていらっしゃます。全員、声 量も豊かで、表情に富んでいるのですね。特に印象的なのは、スザンナのボベルスカ さん。声が実にころころとした響きを持っていて、コロラトゥーラのとっても上品な 感じです。しかも、声だけでなくて、所作も軽快で、喜劇的なちょこちょことした動 きが、とっても自然で、可愛らしいです。舞台の上を、あちこちとちょこまかと動き 回り、時にはイスの上に乗ったり、時にはベッドの下へもぐりこんだりしながら、そ れでいて、高音なんかも自然にすぅっと伸びやかに出てくるのですね。その力量に は、感心します。また、フィガロのクリムチャックさんも、ハリのある美声を聴かせ てくれます。舞台に登場してくる時、必ず、走り込んでくるのが、ちょっとおかし かったりしたのですが、そのアリアはいずれも、素敵なものでした。そして、忘れて はならないのはケルビーノのガルーシュカさん。あの有名なアリアなど、とっても愛 らしい歌い方をしていくのです。ほんまのボーイ・ソプラノが歌っているのかと思う ような声質で、何かしっとりとした愛らしさがあるのですね。それに、容姿も可愛ら しかったから、なおさらにそのように思うのでした… また、伯爵のクルシェフスキ さんの声も、どっしりとした貫禄のあるもので、いかにも伯爵、という雰囲気を出し ていたと思います。
その他、伯爵婦人のヴィトコフスカさんも素敵でしたし、皆、素晴らしい歌声を披 露してくれました。そして、第4幕は、それらの皆さんそれぞれにアリアが出てきま すから、まさに歌合戦のような感じで、聴き応えのある歌唱が並んで、満足、なので した。変な言い方かもしれませんが、ハズレのない公演というのは、こういうのを言 うのでしょうね。誰をとってみても、皆、一流の歌手ばかりで、十二分にこちらの期 待に応えた歌唱をしてくれるのです。そういう意味では、とってもいい公演だったと 思います。
そして、そうした演奏、歌唱をさらに盛り上げていたのが、実は日本語字幕だった りします。(^^; いかにも今風の日本語が使われていて、それで会場のウケを取って いる部分も多々ありました。伯爵がスザンナに言い寄ってきていることを、スザンナ 自身が話す部分では、「”援交”を頼まれたの」としてみたり、フィガロが、マル チェリーナとバルトロが自身の両親であることを知った時の台詞を「どっひゃぁ 〜」、マルチェリーナがフィガロに、バルトロのことを言う時に、「こっちが”製造 元”よ」としてみたり、なかなか小気味のいい日本語を使っていて、結構、笑えま す。舞台の方もテンポよく進んでいくから、それにこの日本語がうまく合っていて、 モーツァルトのこの歌劇のコミカルさというものをうまく表わしていたのではないで しょうか。こういうのも一つの演出、会場にいた人達にとっては、楽しいものではな かったかしらん…?
舞台もシンプルな作りで、そのシンプルさがまた、好印象を与えてくれます。シン プルな中に、素敵な歌唱や演奏で、素晴らしい公演であったと思います。「フィガ ロ」以外にも、「魔笛」等、他のオペラも、いつか、この歌劇場で見てみたいもので す。