ソーラ チャージシステム

  キャンピングカーにとって、電気はなくてはならない物のひとつです。
キャンピングカーが いくら、走行用のバッテリーとは別にサブバッテリーを搭載している
とはいえ、限りがあります。
  通常、バッテリーの充電システムとして代表されるのが、ベース車輌のオルタネータを
利用した、走行充電システムが揚げられます。
しかし、このシステムは、走行時しか有効でなく、まして、充電のためにエンジンを
回しっぱなしにするのは、付近の人への騒音や環境問題等、よくありません。
そこで、登場するのが太陽電池による発電システムです。

  では、実際にキャンピングカーへのソーラーシステム導入の手順を見てみましょう。



      太陽電池の基礎知識  

太陽電池は、太陽の日射条件をはじめ、様々な自然条件の影響を受けます。
そのため、カタログ等のデータは、ある条件下でのデータを示しています。
    代表的な例
                通過空気量          放射照度           セル温度
                 AM1.5             1000W/m2            25℃

通過空気量(AM)

  太陽光は地表に到達するまでに、大気中のチリ、水分、ガス等により吸収されて
弱くなります。
この光の通過する大気の厚さを示すのがAM値です。
    大気圏外では、 AM=0 です。
地表におけるAM値は、具体的には太陽光の入射角度や大気圧によっても規定され、
    赤道上海抜0mでは、AM=1
    日本での標準値     AM=1.5


日射量(W/m2)

  発生する電流は、光の強さに比例して、電圧は あまり影響を受けません。
この太陽光の強さを表すのが日射量です。
カタログの条件でよく用いられる 1000W/m2 という値は余程の好条件が揃わないかぎり
実現しません。
  一般的な日本の南中時の日射量は、季節によっても変動しますが400〜900W/m2程度
です。
   
  日本の年間日射量は1500〜2000時間で、1日当りの平均日照時間は4〜4.5時間です。
しかし一般的に発電に利用できる時間は精々、2.6時間〜4時間程度で、これを
有効日射時間といい、ここでは平均値で3.3時間とします。

セル温度

  発生する電圧は、温度の上昇とともに減少し、電流にはあまり影響を受けないと
いった特性があります。



      システム設計

  今回は、P泊を考慮して以下のような電気製品を使用すると仮定し、設計して
みましょう。

           電気製品        電流         使用時間
          蛍光燈 16W      1.6A           5時間
          TV   55W      4.5A           3時間
          FF暖房          1A          15時間

を使用した時の1日当りの消費電流量を求めます。

          <式> 電流×使用時間=1日当りの消費電流量  より、

           電気製品        電流         使用時間      1日当りの消費電流量
          蛍光燈 16W      1.6A           5時間           8   Ah/day
          TV   55W      4.5A           3時間          13.5 Ah/day
          FF暖房          1A          15時間          15.0 Ah/day

これより、全電気製品の1日当りの消費電流量を求めると、

              8+13.5+15.0= 36.5 Ah/day
 
になり、太陽光発電を採用しない場合でも、放電深度を60%とした場合、60Aクラス
のサブバッテリーを搭載すれば、朝までなんとか使用することが可能ですが、2日目以降
の連泊はサブバッテリーに負担を強いることになります。

   *放電深度:バッテリーは、全容量を使い切ってしまうような使用方法をすると
              寿命が極端に短くなってしまいます。
              そのため、ある程度バッテリーが残っている状態で使用をやめて充電
              するのが、バッテリー長持ちさせる秘訣です。
              どれだけ使用(放電)させたかを表す値が放電深度です。
                 放電深度100% ・・・完全放電状態
                 放電深度     0%・・・満充電状態
               

  そこで、太陽光発電の登場となる訳ですが、36.5 Ah/day の消費電流を賄うことが
できる太陽電池の必要発電量を求めると、

          <式>  1日当りの必要発電量=1日の消費電流量/(補正係数)

    補正係数には、
    気象の変化、太陽電池の汚れや経年劣化などの補正値=0.85
    バッテリーの充放電効率にともなう係数=0.95
    などがあります。
これらを上式に代入すると、
                36.5/(0.85×0.95)=45.2 Ah/day

消費電流量の充電を100%太陽光発電依存すると仮定すると、
                                                 
           <式>  1日当りの必要発電量 / 有効日射時間     より
                             45.2/3.3 =13.7A

必要となり、市販されている50〜70Wクラスの大型ソーラパネル1枚当りの発電
電流は、精々3〜4A程度 ですので、ソーラパネルは3枚〜4枚必要になります。
  キャンピングカーのルーフ面積や、コスト面などを考慮すると、太陽光発電に100%
依存するのは難しいので、今回は、サブバッテリーの使用可能な時間を延ばすことを
目的として65Wクラスのソーラパネルを1枚だけ使用します。

  採用したソーラパネル

      メーカ  モデル   出力  開放電圧  短絡電流  負荷電圧  負荷電流  
     SOLAREX  MSX-64   64W   21.3V     4.0A     17.5V      3.7A

このソーラパネルを使用した時、1日当りの発電量は、
      <式>  負荷電流 × 有効日射時間      より、
               3.7×3.3=12.2Ah/day      
 
1日当りのバッテリー消費量は、
      <式>  1日当りの消費電流量− 1日当りの発電量
                       36.5−12.2=24.3 A

となり、80Aクラスバッテリーを放電深度50%で使用するとしても、2日目も使用
可能となります。
また、FFヒータを使用しない季節であれば、一層、電力に余裕を持たせる事ができる
でしょう。