あすみパソコンクラブは、元高校教師のグループで中学・高校用教育ソフトと理科教材の作成と配布をしております。 | |||||
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復氷現象の実現 |
水の状態図から考え、氷にワイヤーをかけ重りを吊すと、氷の中をワイヤーは通過するが通過した後、氷は切れずに元のままであることが考えられる。この現象を「復氷」とよび、参考書や問題集等に記載されている。 しかし、実際にはこの現象を授業等で行ったという報告を耳にしたことはなく、また氷の棒にただ重りを吊しただけでは必ず失敗する。 そこで、この「復氷」現象を100%成功させるための条件を求めると同時に、実現させるための器具の製作をした。 尚、授業中の演示実験を前提に考え、「復氷」は5分~10分で実現させることとした。 |
図1 |
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①氷のサイズ | |||||||
あまり大きなサイズだと吊り下げる荷重が重くなることが予想され、かつ取り扱いが難しくなる恐れがある、また併せてワイヤーの強度などの問題が発生する。 更に、冷蔵庫で作った氷では気泡が入り、その部分の強度が弱くなってしまう。 そこで今回は、スーパーなどで売られている「板氷」をノコギリで切り、実験テーブルで融かし幅2.0cm~2.3cm、厚さ3.5cm前後、長さ15cm 程度の大きさの氷を作成し使用する。 (氷の大きさは、何度も実験を行い最も適当と判断したものである) 尚、できた氷はサランラップにくるみ、肉などが入っていた発泡スチロールの箱に入れ冷凍室に保存しておく。 |
図2 |
②吊り下げる重りとワイヤー | ||||
ワイヤーはたまたま手元ににあった、直径が0.41mmのピアノ線をループにして利用することにした。 また、重りは2リットルのペットボトルに水を入れたものを使用することにした。 |
図3 |
③氷の温度と加える圧力 | ||||
加える加重が小さ過ぎるとと変化がなかったり、逆に加重が大き過ぎると氷が割れたりする、そこで加える加重の大きさをを求めるために、氷に穴を開け内部温度の変化を測定してみた。 その結果、冷蔵庫から取り出した氷りは急速的に暖かくなり、その後表面が融けだし室温が15℃~20℃では内部温度は約-1.1℃、室温23℃~30℃では内部温度は約-0.6℃前後で平衡に達していることが分かった。 これをもとに、氷にかける圧力を計算してみた。 水の三重点が0.01℃、4.58mmHgであり、水の融点が0℃であることより融解曲線の勾配は1atmあたり0.01℃と考えられる。 また、室内に放置した氷(横2.0cm~2.3cm、縦3.5cm~4.0cm)の内部温度は、表面の氷が融け始め表面が透明になる時点で-2~-3℃である。また、その後内部温度は徐々に上昇し-0.6~-1.1℃で一定になる。「復氷」現象が起こる温度を-1℃と仮定すると加える圧力は100atm前後が必要と考えられる。 ピアノ線の直径が0.41mm氷の幅が2cmとして吊り下げる重りの重さを右の式で計算してみる8.5kgとなる。 8.5kgは、大きめに仮定して計算した値なので、吊り下げる重りの重さ7kg~8kgとした。 |
図4 図5 |
*5分~10分以内に「復氷」現象を実現させる条件 | ||||
① 大きさ縦横3cm~3.5 cm前後の透明氷。 ② ワイヤーはUボルトに直径0.35mmのピアノ線を張ったもの。 ③ 吊り下げる重りはペットボトルに水を入れ重さは5~6kg。 ④ 外部からの熱の影響を防ぐために発泡スチロールのケースと透明カバー。(図6) ⑤ 氷は表面が融け出すまで手で暖めて使用。 ここで⑤の操作が非常に大切で、この操作を行わないと復氷現象を起こすまでに20分以上も時間がかかってしまいます。尚、早く復氷現象を起こそうと考え、荷重を重くすると最終的に氷が割れてしまう現象が起こってしまいます。 |
図6 |
ここで、配布するものは 図6の左側の外部からの熱の影響を防ぐための「発泡スチロールのケースと透明カバー」 形状は少し異なりますが図3の「ピアノ線をセットした金具」 です。 |
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