旅への想い

2009年11月、2年連続だが、仕事での訪問を別にすれば、約10年ぶりのヨーロッパ(スイス)への一人旅!
もちろん楽しみであったし、気持ちはわくわくする。

しかし、旅行前に会った友人に...『いいなぁ、スイス。それにしても、いつもさりげなく出かけるよね(笑)私
だったら、もう何週間も前から興奮しちゃって眠れないかもね♪』と言われた。確かに僕も以前はそうだった (-_-)

1979年10月、大韓航空でソウル乗換えアンカレッジ経由パリ(オルリー)行きのチケットを握りしめ、期待と
不安が交錯する中、飛び立った事をふと思い出した。
前年、初めてツァーでヨーロッパを訪れ、憧れに憧れていたスイスの地を踏みしめ、美しさに感動、本当のスイスの
美しさを求めて、一人旅を計画...無理矢理休暇を取り、ヨーロッパへと旅立った。
半年以上前から、プランを立てる。格安航空券と周遊券の手配、ネット予約なんかはまだない時代、ホテルリストを
観光局でもらい手紙で予約。トラベラーズチェックの手配...
今では考えられないほど、出発までには『やる事』がたくさんあった。

出発前の空港待合室...僕を運んでくれるDC10の機体をじっと見つめる。
フライトの中、狭いエコノミークラスの座席。小さな窓に額を押し付け、じっと外を眺め続けていたっけ。
機内食も喉を通らず、喉の渇きに飲み物ばかりオーダーしていた。
今の様に機内エンターティメントは充実していなくて、映画も前方スクリーンで2本だけ。勿論、寝ていれば二度と
見れない。音楽プログラムも数えるほど。
でも、着いた先にあるものへの期待、あれこれ想像する、初めて訪れる街や自然を思い描き、大げさでなく、今まで
生きて来た集大成がある様な...そんな感動の予感に、胸が高まったものだった。

そして、30年後の2009年11月、僕はロンドン(ヒースロー)行きのJALのビジネスクラスに乗っている!
出発前の空港ラウンジで、朝食と昼前だが、お勧めの
シャンパンを飲みながら、不在中の仕事の段取り等を
メールする。
僕を運んでくれる、最新鋭のB777−200ERに
目をやる事もない。

通路側の席、ベッドモードにすれば、ほぼフラットで
ゆったりと睡眠が取れる(それにしても、僕はいつ頃
から、通路側の席ばかり予約する様になったのか?)。

コースの食事、キャビン・アテンダントの方も絶妙な
タイミングで、飲み物や軽食の声をかけてくれる。
豊富な機内エンターティメント。退屈はしない♪
しかし、かつて、額を丸い小さな窓に押し付け、星空を、北極の氷の海原を、雲の起臥しを一生懸命に見つめていた
自分は、そこにはもういない。

外資系企業に20年以上勤めていたので、海外出張は日常茶飯事、ヨーロッパやアメリカ、アジアへ100回以上の
渡航。そんな繰返しが『旅』への充実感や喜び、不安の中の期待や感動を希薄なものにしてしまったのか?
『旅』への一番大切な想いを、僕は失ってしまったのかも知れない?

アンカレッジ経由はもうないが、1979年の時と同じルートで旅をしてみようと思うあの時の想いを少しでも思い出すために...
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