準備書面 四の二 1992年4月23日


東京都が行なったアセスにおける大気汚染予測手法が理論的に誤っていることを詳細に述べた書面です.この誤った予測手法は建設省の外郭団体である道路協会のマニュアルに載っているため,他の多くのアセスでも同じ誤りが見られます.


都市計画決定手続の違法性(法13条違反)

−本件環境影響評価書における予測手法の欺瞞性

一 はじめに

 近年、図1が示すように東京における大気汚染、特に二酸化窒素濃度の悪化の傾向は著しく、公害防止計画が目標とする環境基準達成の見込みは到底ない。

 

 二酸化窒素(NO2)の環境基準は、現在「1時間値の1日平均値が0.04ppmから0.06ppmまでのゾーンではそれ以下であること」と定められている(昭和53年7月17日付環大企262号「二酸化窒素に係る環境基準の改定について」)。その評価方法は、長期的評価により、年間の1日平均値のうち、低い方から98%に相当するもの(98%値)を環境基準と比較して評価する。

 図1に明らかなように環境基準が達成されていないことについては、本件アセスが行なわれた1990年(平成2年)の時点においても同様であった。

 したがって、本件地下道路事業についての都市計画を決定するにあたっては、通常道路を建設すれば交通量が増加し、その排気ガスによって大気が汚染されることが経験上明らかに予想される以上、少なくとも本件事業を遂行しても環境基準が確実に達成される見込みが環境影響評価(以下、「本件アセス」という)によって証明されなければならない。そうでなければ、公害防止計画に反する都市計画を容認することになり、法13条に反することになる。

 以下、詳論する。 

 

二 本件環境影響評価書の構造

1 本準備書面においては、本件アセスの中で最も問題が大きいと思われる大気汚染物質のうち二酸化窒素についてのみ言及することとする。なぜならば、現在自動車排ガス成分の中で環境基準が達成されておらず、かつ喘息、肺癌等、その汚染による人体への影響が最も深刻なものの代表的なものだからである。(現実には自動車排ガス成分の内、浮遊粒子状物質やオキシダント、多環芳香族化合物等発ガン性の強い物質の存在が確認されているが、その予測方法の不確実性等により環境影響評価指針においてアセスを義務づけられていないので除外せざるを得ない。)  

2 大気汚染についての本件環境影響評価書(以下、「本件評価書」という)の言及の仕方は、@現況調査、A本件事業の完成時(1995年)及び供用開始後5年経過時における大気汚染程度の予測、BAに対する評価という構造になっている。

 この内、今回はAの予測について、かつその中の将来の二酸化窒素濃度予測手法の虚偽性についてのみ言及する。

 ただし、今回問題点を指摘していない数値については、あえて本件評価書に採用されている数値をそのまま使用した。(実際はこれらの中にも大きな疑問が含まれているのであるが、今回は本件評価書の予測手法の虚偽性に絞って論ずるものであるから、とりあえず数値そのものは問わないことにしたものである。)。

 なお、Bの評価については、その指標を公害対策基本法に基づく環境基準によることになっており、本件評価書は二酸化窒素について環境基準を下回ることが可能であると結論づけているものである。 

 

三 本件評価書における将来二酸化窒素濃度予測の虚偽性

1 将来NO2濃度予測手法

 将来のNO2濃度は、本件事業予定地の内、大橋、西新宿のインターチェンジ部、富ヶ谷、新宿南、中野本町、池袋南の出入口における計14地点で行なわれているにとどまり、地下道路を通行する自動車の排ガスを排出する換気塔の影響を最も多く受けると思われる沿道地域については、具体的数値をあげた予測が行なわれていない。

 かかる地域について予測が行なわれていないこと自体きわめて不当であるが、ここでは上記14地点における予測手法についてのみ検討することとする。  

2 予測手法の概要と問題点

@ まず、予測すべきある将来の時点で、当該道路がなかったとしたときの窒素酸化物濃度をバックグラウンド濃度といい、これを算出する。次に、同じ将来の時点で、当該道路ができたとき、当該道路を通行する自動車により増加するであろう窒素酸化物濃度を寄与濃度という。このバックグラウンド濃度と寄与濃度とをあわせたものがその地点での将来予測値となる。

 これらの窒素酸化物濃度は、自動車が1キロメートル走行したことによって排出される窒素酸化物の重量を排出係数とし、これは当然、車種ごとに異なるから、車種ごとの将来予測交通量と上記排出係数とからバックグラウンド濃度及び寄与濃度を算出し、そこから窒素酸化物の将来予測濃度を導き出すのである。

 なお、排出係数は、窒素酸化物(NOx) の重量で表されるのに対し、将来予測濃度は二酸化窒素(NO2)濃度で示されるので、前者から後者への転換が必要となる。   

A 予測手法の概要は以上のとおりであるが、実際の予測にあたっては以下のような問題点を解決しなければならない。 

1)将来のNOx排出係数はどのような方法で決定するのか

2)将来の交通量はどのように予測するのか

3)排出源から予測地点までの拡散をどのように予測するのか

4)NOx量からNO2濃度はどのような転換式を用いて求めるのか

5)バックグラウンド濃度をどのように予測するのか

6)将来濃度は通常年平均値で予測されるが、98%値(環境基準として用いられている値)にどのように転換するか

 これらすべての点に関して、本件地下道路事業についての本件評価書が用いている方法にはきわめて大きな疑問があり、本件事業の大気に与える影響を不当に低く評価しているが、本準備書面では右の問題点のうち、4、NO2濃度への転換式、5、バックグラウンド濃度予測の二点を中心に本件評価書に採用されている方法論の間違いによってもたらされた本件アセスの虚偽性を指摘する。

 

3 NOx濃度からNO2濃度への転換方法

@ NOxの転換式(転換モデル)とは

自動車排ガス中の窒素酸化物排出係数は、一酸化窒素(NO)と二酸化窒素(NO2)の混合物である窒素酸化物(NOx)について調査されている。一方、NOxの中で人体への影響の大きいのはNO2であり、環境基準は大気中のNO2の濃度について定められている。したがってNOx濃度をなんらかの計算式によりNO2濃度に転換しなければならない。

 自動車から排出されるNOxのかなりの部分はNOの形で大気中に放出されるが、NOは大気中の反応により一部がNO2に変化する。この反応のメカニズムはほぼ明らかになっているが、転換速度は化学反応の速さだけではなく、拡散の速さにも関係するため、簡単には見積ることはできない(東京都環境影響評価技術指針関係資料集、昭和63年、東京都、39頁、資料T−13、以下、「資料集」という。また、これに記載されている技術指針を単に「技術指針」という)。

 このNOx濃度からNO2濃度へと転換するためのモデル、すなわち窒素酸化物の転換モデルとして資料集には、統計モデルを含む4種類が掲載されている。この中で、周辺の環境濃度データが十分整備されていて、窒素酸化物の濃度が著しくは変化しない時には(工場排ガスのような極端な高濃度の場合でなく、自動車による影響がこの場合にあたる)、統計モデルが有効であるという(資料集39頁)。

 したがって、23区内のように多数の測定局による十分なデータがあるところでは統計モデルが実体に即しているといえる。   

A 資料集による統計モデル

 大気中のNOxが増加するとNO2も増加する。しかし、これらの増加量は直線関係にはなく、NOx濃度の増加にともないNOx中にしめるNO2の比率は低下することが知られている。このことから、NO2濃度は同一条件のもとではNOx濃度の指数関数として表すことが出来る(図2)。

 

 したがって、将来のNO2濃度を予測するための転換モデルとして次の回帰式が導かれる。

 

     [NO2]=a([NOx]DF+[NOx]BG)b・・・・・・@

        a,b:定数 

     [NO2] :NO2濃度(ppm)

     [NOx]DF:NOx寄与濃度(ppm)

     [NOx]BG:NOxバックグラウンド濃度(ppm)

     [NOx]DF+[NOx]BG:予測地点でのNOx濃度(ppm)

 

 (ここでは、NOx寄与濃度の予測手法については今回は問題とせず、NOxバックグラウンド濃度の統計的予測についての問題点は後述する。)

 

 @式における定数a,bの値を過去の実測値から統計的に求めるのがこのモデルの特徴である。現在、東京の実測地は、自動車の排ガスの直接的な影響を調べようとする自動車排ガス測定局(以下、「自排局」という)と一般の大気の汚染濃度を調べようとする一般環境大気測定局(以下、「一般局」という)とがあるが、道路端における自動車の排ガスの寄与濃度を調べようとする本件アセスのような場合、当然自排局のみのデータを用いなければならない。

 具体的には、まず、適切な年度、適切な地域内における自排局の年平均NOx濃度と年平均NO2濃度との関係からa,bを決定してNOxとNO2の関係式をたて、予測地点での NOxのバックグラウンド濃度と寄与濃度とを合わせた数値を代入することでNO2の年平均濃度を求めることとなる。   

B 本件評価書における手法

 ところが、本件評価書における沿道のNO2濃度予測の方法は、技術指針が定めるNOxのBG濃度にNOx寄与濃度を加えてからNO2濃度に換算する方法と異なり、NOxBG濃度、同寄与濃度をそれぞれNO2濃度に換算してから、それを合わせてNO2濃度を算出している。この違いを分かりやすく表示すると次のとおりである。

  技術指針・・・・・・・・・(NOxBG濃度+NOx寄与濃度)→NO2濃度

  本件評価書・・・・・・・(NOxBG濃度→NO2BG濃度)+(NOx寄与濃度→NO2寄与濃度)=NO2濃度

 (→はNOX濃度からNO2濃度への転換式を意味する)

 このうち、NOx寄与濃度からNO2寄与濃度への転換式は本件評価書独自のものである。すなわち、自動車排ガスの影響を直接受けている自排局と、バックグラウンドと考えられる一般局とにおけるNOx、NO2それぞれの差が自動車による寄与濃度であるとし、NOx、NO2それぞれの寄与濃度を求め、両者の関係式を立てるというものである。

 つまり、本件評価書は、都内の自排局と同一市区内にある一般局との間で次のような関係が成立するというのである。

 

 自動車からのNOx寄与濃度(Xとする)

=自排局NOx濃度(Xiとする)−一般局NOx濃度(Xjとする)

       [X=Xi−Xj]

 

 自動車からのNO2寄与濃度(Yとする)

=自排局NO2濃度(Yiとする)−一般局NO2濃度(Yjとする)

       [Y=Yi−Yj]

 

 そして、YとXとの間に

  Y=C・Xd ・・・・・・・・A

 

  の関係が成立するというのである。

 このA式における定数c,dは、1983〜1985年における自排局、及び同一市区内にある一般局のデータを集計し統計的に求めている。

 

C 本件評価書における手法の誤り

 しかしながら、評価書で用いられた転換式は、数学的にも成立せず、さまざまな矛盾を持っており、故意に事実を歪めようとしたものとの疑いを抱かざるを得ない。以下、具体的に指摘する。

(1) 本件評価書の中での矛盾

 本件評価書で採用されたA式の意味するところは、自動車増加によるNO2寄与濃度(自排局と一般局の差)はNOx寄与濃度(これも自排局と一般局の差)の増加量の関数で表されるというものである。すなわち、NOx寄与濃度(NOx濃度増加量)に応じてNO2寄与濃度(NO2濃度増加量)も定められるというものである。

 この考え方は、一見もっともらしく聞こえるが、根本的に間違っている。実際にはNOx濃度増加量が同じであっても、もともと存在するNOx濃度やNO2濃度の絶対量、すなわちバックグラウンド濃度の違いによってNO2濃度の増加量は変わってくるのであって、NOx濃度増加量とN02濃度増加量との間に一定の関係はない。バックグラウンド濃度は都内全域で一つの値をとるのではなく、地域による変動があるので、バックグラウンド濃度というファクターを無視したこの関係式は成り立たないのである。

 NOx濃度増加量に対するNO2濃度増加量がバックグラウンド濃度により変化するという考え方は、@式、すなわち、NO2濃度がNOx濃度の指数関数(それぞれ濃度増加量でないことに留意されたい)で表される、という考え方に基づいている。この@式の意味するところは、前記・の項で説明したように、NOx濃度が増加すると、NO2濃度のNOx濃度に対する比率が減少する、すなわち、NOx濃度増加量が同じであってもNOx濃度の絶対値(バックグラウンド濃度)が大きければ、NO2濃度の増加量が小さくなるというものである。

 したがって、@式の考え方(NOx濃度とNO2濃度の絶対値相互間には指数関数関係が成立する)にたてば、A式の考え方(NOx濃度増加量とNO2濃度増加量との間に指数関数関係が成立する)は成り立たないことになるのである。

 ところで、本件評価書添付の資料編(以下、「資料編」という)207頁をみると,将来のバックグラウンド濃度値を予測する際にこの@式の考え方を採用しているのである。すなわち,1983〜1985年の一般局におけるNOx,NO2年平均濃度を集計し,

 

 [NO2]=0.191 × [NOx]0.656

 

という回帰式を導いて、将来のNO2のバックグラウンド濃度予測に用いているのである。これはNO2濃度がNOx濃度の指数関数で表されるという考え方を環境影響評価の手法として認めていることを示すもので、寄与濃度予測のために本件評価書が採用する窒素酸化物転換式とは明らかに矛盾している。    

(2) 数学的な見地からの誤り

 先に述べたことを数学的に示すと以下のようになる。

NO2濃度をy、NOx濃度をxとすると、自排局について以下の式が成り立つ。

 

 y=ax・・・・B  a,b:定数

 

同様に一般局についても以下の式が成り立つ。

 

 y=cx・・・・C  c,d:定数

 

本件評価書の式を、自排局をyi、xi、一般局をyj、xjとして表わすと次の式になる。

 

 yi−yj=e(xi−xj)・・・・D  e,f:定数

 

しかし、B、C式が一般的に成り立つ以上、D式は以下の理由から一般的には成り立たない。

 B、Cはそれぞれ図2のような曲線で表わされる。今、NOx濃度xの差が0.05ppmだった場合について考えてみる。自排局NOx濃度xiが0.15、一般局NOx濃度xjが0.10だったとすると、その時のNO2濃度yの差は図3のα=0.004である。一方、自排局NOx濃度xiが0.10で、一般局NOx濃度xjが0.05だった場合には、NO2濃度yの差は図3のβ=0.011であり、自排局NO2濃度と一般局NO2濃度の差y(i−yj)は一定にならない。

 すなわち、自排局と一般局のNOx濃度差(xi−xj)が一定になっても、自排局と一般局のNO2濃度差(yi−yj)は定まらず、関数関係にあるとはいえないのである。

 以上から、B、C式が一般的に成り立つ以上、D式は数学的に成り立つはずはない。

 

(3) 実際の測定値からみた誤り

 NOxやNO2の濃度は、自動車の影響以外に、風などの気象条件、測定局の位置や高さ、緑の量など様々なファクターの影響を受ける。それは測定局ごとに大きく異なっており、同じ区内にあるからといって自動車の影響以外のファクターが同一であることは有り得ない。従って、当該区内の一般局の測定値をバックグラウンド濃度として、自排局と一般局との差が自動車からの直接寄与分であるとする本件評価書の考え方には明らかな飛躍がある。東京の一般環境を把握するにはすべての一般局を総合的にとらえる必要がある。事実本件評価書においても寄与濃度を問題としないで単にバックグラウンド濃度予測だけを問題としている部分においてはこの考え方に立っており、多くの測定局のデータから沿道地域のバックグラウンド濃度予測値を算出しているのである。

 ところが、本件評価書においてNOxやNO2の寄与濃度を問題とする場合、バックグラウンド濃度として擬制している一般局のデータの中には、その一般局の所在地が実際には幹線道路に近くバックグラウンドとはいえないところもある。逆に自排局とはいってもNOxは幹線道路から遠く離れたところで測定しており、直接自動車の影響を受けているとはいい難いところもある(例えば、80メートル離れている大森や70メートル離れた中落合の自排局)。資料集192頁によればこの変換式を算出するにあたって、幹線道路に近い一般局のデータを除いた場合より、それを含めた方が「相関係数が高いので含めた値を採用した」という。本来、バックグラウンドとしてはふさわしくないデータも含めた方がいい結果がでるということ自体この手法の破綻を示すものである。

 表1(末尾添付)に1983年から1988年における23区内およびその周辺の自排局のNOx、NO2濃度、および同一市区内の一般局の各濃度、およびそれらの差、つまり、この予測手法にそってデータを整理して一覧表に示した。同一区市内に一般局がない測定局は除外したが、このように選定すると24カ所あり、周辺の市まで含めて3年分として72のデータがあるはずである。しかし、本件評価書では67のデータしか用いていない。本件評価書において、どのような理由で、どの地点のどの年度のデータを採用、あるいは不採用としたのか明確でない。計算の上で不都合な地点を除外したのであろう。

 その上、この表にはおかしな点が多々認められる。大田区の大森自排局と、糀谷一般局とを比較すると、1987年においては自排局の方がNOx、NO2ともに一般局よりも低い値を示している。つまり大森においては自動車によりかえって周辺よりも汚染が少なくなる、ということになってしまう。NOxの増加がNO2の増加に結びつかず、NO2の差が0という点は83年の中落合、85年の天沼で見られる。1984・88年の大森ではNOxの差とNO2の差が等しく、NOxの増加がすべてNO2の増加に結びついてしまうことになっている。

 このような矛盾が生じてしまう理由は明らかである。本来成り立たない、誤った転換式を用いたからである。   

D 正しい予測手法

 (1) 本件評価書のデータをそのまま利用する場合

 正しい予測手法として資料集の統計モデルによる転換式を用いて予測のやり直しを試みることにする。ここでは一応本件評価書におけるNOxのバックグラウンド濃度予測、バックグラウンド濃度補正、各道路からのNOx排出量およびそれに伴うNOx寄与濃度予測が正しいものと仮定する。

 ある地点でのNOx濃度はその地点でのNOx寄与濃度とNOxバックグラウンド濃度とを加算したもので与えられる。NOx濃度からNO2濃度への換算は、過去のデータから求めた自排局での両濃度の関係式(@)に当てはめて行なう。これが資料集による手法である。以下、実際に本件評価書に記載されている予測地点について再計算を行なってみる。年平均NO2濃度から98%値への変換式は一応本件評価書による。なお、自排局のデータは本件評価書と同様1983年から1985年度のものを用いる。実際の計算手順は省略するがバックグラウンド濃度補正など疑問のあるものも含めた条件はすべて本件評価書と同じにしている。

 具体的計算方法は概略以下のとおりである。

 

 本件評価書にはNOx寄与濃度の記載がないので、まず、次の式でNOxの寄与濃度を求める。

 

 [NOx]=([NO2]/0.0775)1.4245・・・・B 濃度はppm

 

 この式は資料編 P.193の回帰式を逆算して得たものである。

 次に、NOxバックグラウンド濃度は資料編203ページによる。

   1995年:0.049ppm    2000年:0.044ppm

 

 自排局のNO2とNOx濃度の関係は1983〜1985年度の実測データから次の式が得られたので、NOxの項に、NOxの寄与濃度とバックグラウンド濃度の和を代入する。

 

  [NO2]=0.1027[NOx]0.428・・・・C 

 

 この式の相関係数は 0.91 となり、本件評価書の手法の 0.84 (資料編192頁)を上回る。(相関係数とは、この場合でいえばNOxとNO2の転換式の正確さを表すものでこれが1であれば完全な関数関係にあることになる。)

 次に、Cで得られたNO2濃度は年平均値であるので、環境基準の値である日平均98%値に転換する。本件評価書では1983〜1985年の実測値を基にして次のような式を用いている。(資料編217頁)

 

    Y=1.52X+0.009・・・・D

    Y:NO2の日平均の98%値

    X:NO2の年平均値

 

  この方法で予測結果をまとめると次のようになる。

 

    《NO2の98%値(ppm)》

【トンネル坑口部】  

  1995年 2000年
  本件評価書 正しい手法 本件評価書 正しい手法
0.056 0.058 0.053 0.056
0.059 0.061 0.056 0.059
0.059 0.061 0.058 0.060
0.059 0.061 0.055 0.058
0.059 0.061 0.055 0.058
0.058 0.059 0.053 0.055

 【インタ−チェンジ部】

  1995年 2000年
  本件評価書 正しい手法 本件評価書 正しい手法
0.056 0.057 0.052 0.054
0.056 0.057 0.052 0.053
0.058 0.058 0.053 0.055
0.064 0.065 0.059 0.063
D' 0.058 0.057 0.053 0.055
0.062 0.063 0.058 0.060
0.062 0.062 0.058 0.059
0.067 0.067 0.061 0.063

 予測地点は、本件評価書128〜139頁に示されている各予測箇所に対応する。トンネル坑口部の1〜6は断面1〜6を示す。インタ−チェンジ部のうちA〜D’は大橋インタ−チェンジ、E〜Gは西新宿インタ−チェンジの各予測箇所を示す。

 これによれば、1995年度のインターチェンジ部で本件評価書を下回る部分が1ヶ所生じるものの、本件評価書では1995年に14ヶ所中4ヶ所、2000年の1ヶ所で基準を超えると予測していたのに対し、1995年に8ヶ所、2000年に2ヶ所で基準を超えており、本件評価書の予測値が不当に低めに押さえられていることが分かる。 なお、本件評価書において、2000年に1ヶ所基準を越えるとされた地点についても、資料編219頁において、「環境施設帯の設置や既設高速4号線の側壁のかさ上げを行なうこと」によって、0.059ppmとなるとされているが、本件都市計画決定の中には環境施設帯の設置予定はなく、何の根拠もない。   

(2) 本件評価書策定当時の最新データに基づく補正を加えた予測

 東京都知事は、1990年6月7日、都環境影響評価審議会の答申に基づき中央環状新宿線の環境影響評価書案に対する審査意見書を提出しているが、その中で「計画路線周辺のバックグラウンド濃度については、大気汚染の状況の推移等を考慮し、推定すること」と述べている。窒素酸化物転換式に関しても、バックグラウンド濃度の基礎となる一般局のデータを用いているので、当時の最新データを用いなければ片手落ちとなる。当時の最新データは1988年度のものである。そこで1986年から1988年のデータにより予測をやり直す。その結果前記のC式は

  [NO2]=0.0985[NOx]0.398・・・・E

と書き換えられる。

 さらに、年平均から日平均98%値への変換式についても最新のデータに基づいて定める必要があり、1986年から1988年の実測データから次の式が得られた。

   Y=1.21X+0.023・・・・F

その結果を前記方法で再計算すると以下のようになる。

 

《NO2の98%値(ppm)》

【トンネル坑口部】  

  1995年 2000年
  本件評価書 正しい手法 本件評価書 正しい手法
0.056 0.063 0.053 0.062
0.059 0.066 0.056 0.064
0.059 0.066 0.058 0.065
0.059 0.066 0.055 0.064
0.059 0.066 0.055 0.064
0.058 0.064 0.053 0.062

【インタ−チェンジ部】

  1995年 2000年
  本件評価書 正しい手法 本件評価書 正しい手法
0.056 0.063 0.052 0.060
0.056 0.062 0.052 0.060
0.058 0.063 0.053 0.061
0.064 0.069 0.059 0.067
D' 0.058 0.063 0.053 0.061
0.062 0.067 0.058 0.065
0.062 0.066 0.058 0.064
0.067 0.070 0.061 0.067

 

 これによれば、正しい手法によって得られた値は、すべての予測地点で本件評価書を上回っており、2000年の2ヶ所を除いて基準を越えている。1985年以降大気汚染がふたたび進行しはじめており、その結果がこうした数値に表れているものと考えられる。  

 

4 本件評価書におけるバックグラウンド濃度予測値の虚偽性

 @ 本件評価書におけるバックグラウンド濃度予測手法

   本件評価書におけるバックグラウンド濃度予測値は、1985年度に行なわれた東京23区およびその周辺における年間NOx総排出量の推計値、1985年におけるNOx濃度の平均値、将来の予測NOx総排出量とから算出されることになっている。1985年度における総排出量の推計は、自動車に関しては車種別走行台数、速度とそれに応じた排出係数とから算出し、その他の発生源からの排出量を加算したものである。その後1990年度に同様の調査が行なわれ、その結果に基づく新たな東京都環境管理計画が策定されたばかりであるが、その最新データに関しては、別の機会に言及することとして、ここではあくまで本件評価書策定当時利用できたはずの資料に基づいて議論を進める。

 将来のNOx濃度は次の式で与えられる(資料編202頁)。

(NOx濃度('85)−NOx自然界濃度)×予測年度総排出量/基準年総排出量('85)+NOx自然界濃度…G

 本件評価書では、1985年におけるNOx総排出量は52,700トン/年、当該道路周辺地域での年平均はNOx濃度0.062ppm、自然界のNOxバックグラウンド濃度は0.003ppmという値を採用している。本件評価書における予測年度のNOx総排出量の予測数値について重大な疑問があるので、以下A、Bで取り上げる。  

A 本件評価書におけるNOx総排出量予測

 本件評価書においては、予測年度、すなわち1995年と2000年のNOx総排出量データは、「窒素酸化物対策の新たな中期展望 昭和63年12月23日(環境庁)」(以下、これを「中期展望」という)、「今後の自動車排出ガスの低減対策のあり方(答申)、平成元年12月22日、中央公害対策審議会答申」および「東京都環境保全局資料」を基に作成している(資料編202頁)。その結果、2000年における自動車からのNOx排出総量は、2429(千万台km)×0.883(g/km)=21,400トン/年、と計算されている。自動車以外の発生源からのNOx量は、中期展望により、14,900トン/年としており、合計36,300トン/年が年間NOx総排出量となる。

 また、1995年におけるNOx総排出量については、上記2000年の値と中期展望における1993年の予測値とから算出しているが、中期展望にあげられた同年の予測値には2つのものがある。つまり、単体規制を中心にしたこれまでの対策が行なわれた場合に予想される数値に加えて「自動車交通対策や季節大気汚染対策が関係方面の協力を得て効果を発揮すれば」達成できると予想される数値の2つである。

 この内、予測値の低くなる場合を何の根拠もなく採用し、先の2000年の値とこのの値とを比例配分して、1995年におけるNOx総排出量を年間40,900トンと予測している。   

B 本件評価書におけるNOx総排出量予測の問題点

 東京23区における自動車の走行量とNOx排出量との関係は1985年度に行なわれた東京都環境保全局の調査で明らかになっている。そのデータより自動車の実走行時の排出係数が計算できるので、以下に示す。

 

【乗用車類】

  走 行 量

(万台km/年)

走行比率

(%)

NOx排出量

(トン/年)(%)

排出係数

(g/km)

平均排出係数

(g/km)

軽乗用 28,835 1.4 218 0.6 0.756 0.01058
乗用/除LPG 758,470 36.5 5,581 16.6 0.736 0.27085
乗用LPG 343,100 16.6 1,771 5.3 0.516 0.08566
バス 22,265 1.1 1,872 5.6 8.408 0.09245
乗用車合計 1,152,670 55.9 9,442 28.1    

 

【貨物車類】

  走 行 量

(万台km/年)

走行比率

(%)

NOx排出量

(トン/年)(%)

排出係数

(g/km)

平均排出係数

(g/km)

軽貨物 89,060 4.3 1,046 3.1 1.174 0.05048
小型貨物 271,925 13.2 7,322 21.8 2.693 0.35548
貨客 288,350 14.0 3,916 11.7 1.358 0.19012
普通貨物 216,445 10.5 10,019 29.8 4.629 0.48605
特種(殊) 41,975 2.0 1,863 5.5 4.438 0.08876
貨物車類計 907,755 44.1 24,166 71.9    

 

【乗用・貨物 合計】

走 行 量

(万台km/年)

走行比率

(%)

NOx排出量

(トン/年)(%)

平均排出係数

(g/km)

2,060,425 100.0 33,608 100.0 1.631

     排出係数;排出量/走行量  平均排出係数;排出係数×走行比率

   (東京都環境保全局資料・「東京都自動車公害防止計画」に引用されたもの)

 

 このように、1985年当時、車種を問わず車1台が1km走ると平均して1.631gのNOxを排出する計算であった。これと同様にして2000年における東京23区の平均排出係数を算出してみよう。

 資料編198頁に示された車種別走行比率に1985年当時の車種別排出係数(上記の表参照)をかけあわせて平均排出係数を計算すると、1.641g/kmとなる。ところが、本件評価書では2000年における平均排出係数予測値を0.883g/kmとして計算している。これだと自動車単体の規制により約46%もの削減ができるということを見込んでいることになる。

 しかしながら、この見込みには根拠が全くない。

 本件評価書作成当時、自動車単体規制よって実現できるNOx削減見通しは、最大限単体あたり27.5%である(中期展望によれば、1993年時において自動車走行量は9%増加するが、NOxの総排出量は21%削減できるとしているからである)。これは93年時の予測であるが、本件アセスが行なわれた90年当時単体規制が効果を失っていることがすでに分かっており、93年の21%削減も達成不可能であることが分かっていたのであるから、楽観的に考えるにしても、2000年時の予測についてはこの数値(単体あたり27.5%削減)を基礎として予測を立てるべきであった。

 したがって、2000年時における予測平均排出係数は1.641×(1-0.275)で1.190g/kmとすべきである。

C 正しいNOxバックグラウンド濃度予測

Aにおいて示したように2000年時における走行量を2,429千万台km/年とするとし、それに前記予測平均排出係数1.190g/kmをかけあわせると自動車によるNOx総排出量予測値は、約28,900トンとなり、その他の発生源による14,900トンと合わせて、2000年のNOx総排出量は43,800トンとなる。これをG式にあてはめると

 

 

(0.062-0.003) ×43,800/52,700 + 0.003=0.052    

 

となり、2000年時のNOxバックグラウンド濃度は0.052ppmとなる。

 1995年時のNOx総排出量予測値は、中期展望の1993年時のNOxの総排出量予測値と2000年の予測値である43,800トンとの年度比例配分から求められる。1993年時の予測値については・に記した中期展望の2つの予測値の内、単体規制のみが効果を発揮した場合の数値である46、200トンを採用すべきである。これにより、1995年時のNOx総排出量予測値は、45,500トンとなる。したがってG式により

 

  (0.062-0.003)×45,500/52,700+0.003=0.054

 

となり、1995年のバックグラウンド濃度は0.054ppmとなる。

 これらの値は、1995年で0.049ppm、2000年で0.044ppmとした本件評価書の予測を大幅に上回るもので、本件評価書のバックグラウンド濃度予測の不当性を如実に示すものである。

 

5 本件評価書におけるバックグラウンド濃度補正の虚偽性

 本件評価書におけるバックグラウンド濃度予測に関しては、前記の問題点とともに、その後の本件事業の寄与分の取扱い方においても明白な誤りがある。

 本件評価書では最終的なバックグラウンド濃度予測数値を算出する前にバックグラウンド濃度補正と称する数値操作を行なっている。

 資料編208頁によると、「将来の窒素酸化物等の総排出量の内、自動車排出量の算出にあたっては、都内総走行トリップの中に計画街路、環状6号線および交差街路等が含まれているため、排出量についてもこの中に含まれ、バックグラウンド濃度に寄与することとなり、拡散計算値(寄与濃度)と加算する場合に重複することになるためこれを差引補正した」とある。

 この考え方自体は合理的であり間違ってはいない。しかし、補正をするからには、どのような重複が生じてしまったのか十分に分析する必要がある。この点、アセスの手法は全く根拠のない恣意的な方法で重複分を過大に見積り、バックグラウンド濃度予測値を不当に低く押さえ、その結果、本件事業による環境に対する影響は小さいと評価しているのである。

 以下、詳論する。   

@ 本件評価書における補正法

 本件評価書で用いられている補正法の考え方は、資料編208頁の図−3.1.59に示されている。これによれば、道路から離れるにしたがって道路からの寄与濃度は減少するが、300メートル以上離れると寄与濃度が一定となり、この濃度がバックグラウンド濃度の中に重複して盛り込まれた分であり、これを予測地点における年平均濃度から差し引く、というものである。

 NO2濃度についての補正値はすべての地点において0.001ppmとされている。バックグラウンド濃度予測の方から見ると、この道路の寄与分は・式における都内のNOxの予測年度総排出量の中に含まれているのだから、本件評価書の考え方は東京23区及びその周辺で0.001ppmの寄与があるということを意味している。

 ここで、0.001ppmの寄与とは具体的にはいかなることを意味しているかを検証するため、東京23区等での0.001ppmの寄与濃度がNOx総排出量の中でいったい如何なる割合を占めているかを、本件評価書のNO2バックグラウンド濃度推定の考え方に基づいて逆算してみることにする。

 例として2000年のNO2バックグラウンド濃度が0.001ppm少なくなる場合を挙げると以下のようになる。

  寄与含む 寄与含まず
NO2濃度(ppm) 0.0243 0.0233 0.001
NOx濃度(ppm) 0.0437 0.0409  
対1995年比 0.689 0.643  
総排出量(t/年) 36,300 33,900 2,400

 ここで明らかなように、バックグラウンドNO2年平均濃度0.001ppmという数字は、NOx年間排出量2400トンに相当している。この数値は、2000年の自動車からのNOx総排出量予測値21,400トン(資料集197頁)の1割以上にも達している。都内には都市計画道路だけでも1445キロメートルあり(東京都総合実施計画、東京都、平成3年11月)、それに対して、本件両事業(ここでは、将来の時点における寄与濃度補正を問題にしているのであるから、本件両事業が完成したことを前提にしている)により供用が予定されている道路の長さは、地上、地下合わせても20キロメートルたらずにすぎない。これだけの道路でこのような大量のNOxが排出されることを前提としたこのバックグラウンド濃度補正は、明らかに間違っている。

 仮に、この結論が正しいとすれば、本件両事業によって莫大な量の窒素酸化物が排出されることを認めなければならない。

A 正しい補正法

 バックグラウンド濃度とは本来、どの道路からの寄与分とも特定できない、トータルの汚染状況を示すものであり、寄与が明白なものはバックグラウンドではない。本件事業のような道路の新設(地下)及び改築(地上の拡幅)については、当該予測年度において同事業が完成していないと仮定した状態でのNO2濃度がバックグラウンド濃度である。それに本件事業が完成した場合の本件道路による寄与濃度が加算されて、環境影響が評価されるべきである。

 したがって、本件両道路によるバックグラウンドに対する寄与分は、予測年度におけるNOx総排出量予測値から、本件両道路のNOx排出量予測値を差し引いたものをもとにして、バックグラウンド濃度を算出し、各予測地点においては、そのバックグラウンド濃度に本件両道路の寄与濃度を加算すればよいのである。実際、本件評価書におけるバックグラウンド濃度に織り込み済の本件両道路の寄与分とは、予測年度における都内区部NOx総排出量に加算済みのものをいっているのである。

 具体的に2000年のNOx総排出量を計算する中で本件両道路の寄与分が組込まれているのは、その年度の走行量、2429千万台km/年の中である。したがって、そこから本件両道路の将来予想走行量(但し、拡幅前の環状六号線の走行量を減じる)を減じた数値をバックグラウンド濃度算出の基礎データとすればよいのである。

 本件両道路の推定交通量(評価書23ー26頁)、現況交通量(資料編214頁)をまとめて表2(末尾添付)に示した。ここでいう現況交通量は1985年、1987年の調査に基づくものである。

 2000年における中央環状新宿線および拡幅後の環状六号線の予測走行量は、46,897万台km/年となる。一方、現在の拡幅後の環状6号線の走行量は、16,450万台km/年である。従って、本件両道路事業による走行量の増加はこれらの値の差、30,447万台km/年となる。本件両道路からの寄与分が組込まれている時の走行量、2429千万台km/年、からその値を減ずると、2000年の走行量は、2399千万台km/年となる。4、・によれば、NOx排出係数は、1.190g/kmだから、都内23区等の道路からのNOx排出量は、2,399千万台km/年×1.190g/km=28,500トン、となる。これに、道路以外の排出源からのNOx、14,900トンを加えた、43,400トンがNOx総排出量となる。これを・式にあてはめると

(0.062-0.003) ×43,400/52,700+ 0.003 = 0.052

となる。2000年のNOxバックグラウンド濃度は0.052ppmとなる。

 1995年は、中期展望の1993年の前記NOx排出量予測値、46,200トンと2000年の43,400トンとの年度比例配分から、45,500トンと予測される。したがって・式により

(0.062-0.003) ×45,500/52,700+ 0.003 = 0.054

となる。

 すなわち、バックグラウンド濃度は、1995年が0.054ppm、2000年が0.052ppmとなり、バックグラウンド補正を行なわなかった場合と変らず(前記4の・参照)、本件評価書で行なったNO2の年平均値で0.001ppmという補正がいかに過大なものであったかが分かる。

 

四 結論(本件評価書作成時点における正しい予測)

1 以上述べてきたように、本件評価書における将来NOx濃度予測は、数学的にも成り立たない誤った窒素酸化物転換モデル、全く根拠のないNOx平均排出係数により不当に低く見積もられた将来NOx総排出量に基づくバックグラウンド濃度予測、バックグラウンド濃度と寄与濃度の違いについて正しく認識していないとしか思えないまやかしのバックグラウンド補正等に基づくもので、環境の悪化を心配する原告ら周辺の住民を愚弄するものである。

 ここまでに指摘した点をまとめて正しい予測を行なうと以下のようになる。

 

《No2の98%値(ppm)》

 

【トンネル坑口部】  

  1995年 2000年
  本件評価書 正しい手法 本件評価書 正しい手法
0.056 0.066 0.053 0.065
0.059 0.068 0.056 0.067
0.059 0.068 0.058 0.068
0.059 0.068 0.055 0.067
0.059 0.068 0.055 0.067
0.058 0.067 0.053 0.065

 

【インタ−チェンジ部】

  1995年 2000年
  本件評価書 正しい手法 本件評価書 正しい手法
0.056 0.065 0.052 0.063
0.056 0.065 0.052 0.063
0.058 0.065 0.053 0.064
0.064 0.071 0.059 0.070
D' 0.058 0.065 0.053 0.064
0.062 0.069 0.058 0.068
0.062 0.069 0.058 0.067
0.067 0.072 0.061 0.070

 

 本件評価書では、1995年に4ヵ所あった基準超過地点が、2000年には1ヵ所に減り、それについても一層の汚染削減策をとるから「影響は少ないと考える」と結論している。しかし、正しい手法で行なえば上記表のとおり1995,2000年ともすべての地点で基準をはるかに超過することになり、「影響が少ない」とは到底いえないのである。このように数値や数式を意図的に操作して偽りの結論を導くようなやり方は、行政のあり方として、きわめて不当であり、その違法性は高いといわなければならない。  

2 以上要するに、本件事業が完成すれば、1995年時点においても2000年時点でも環境基準をはるかに超えることが明らかであり、公害防止計画に適合せず、法13条に違反する。

 

表1,表2

 

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                               以 上