調停案に対する都や公団の姿勢の変遷

1997年9月22日現在のまとめ 


私たちの調停案提出

1995年3月、車線の見直し、脱硝装置設置などを柱にした私たちの調停案を提出

1996年8月、東京都と首都高速道路公団が、裁判を行っている状態で調停はありえないと拒絶

 

委員会からの調停案提示とその後の経過 (概要)

調停案A 1996年10月18日、委員会が都や公団に口頭で提示

見解A 調停案Aに対する都と公団の見解 (1997年1月20日に口頭で紹介)

調停案B 1997年1月31日付けの文書で双方に各3項目ずつの調停事項が提示された

申請人は受け入れ表明し、調停成立の際は裁判を取り下げることも表明

見解B 調停案Bに対し都と公団がほぼ全面拒否の見解(1997年3月7日付文書)

調停案C 1997年3月28日、都と公団のみに修正調停案を口頭で提示

見解C 調停案Cに対し都と公団がほぼ全面拒否の見解 (1997年5月16日)

 

委員会の調停案に対する都や公団の見解の変遷

東京都に対して

調停事項 @ 車線構成の見直しを含む交通量対策

  調停案 見解
窒素酸化物や浮遊粒子状物質の濃度,及び騒音・振動等が所期の予想に反して悪化したときは速やかに是正対策を講ずるものとし,交通量対策の一環として車線構成の見直し(変更)を含めて検討する. 道路は個別の問題ではなく,さまざまな条件を考慮して広域的に計画されるものであり,その中で道路幅,車線数も決まっている.車線構成は都市計画の根幹をなすものであり,その変更は困難である.したがって,この条項は受け入れられない.
東京都は,都道環状6号線の自動車交通により,窒素酸化物,浮遊粒子状物質等の濃度及び騒音,振動等が初期の予測に反して基準値を大幅に超えていることが明らかになったときは,すみやかに是正措置を講ずるものとし,この場合,必要に応じ交通量対策の一環として,車線構成の見直し(変更)を含めて検討を行なうものとする. 委員会案は,実質的に環状6号線拡幅事業における環境影響評価の実施を求めているものと考える.

環状6号線の環境影響評価については,東京都環境影響評価条例の施行時,既に都市計画決定がなされ,幅員22m,4車線の街路として事業着手し現在供用されているので,条例附則2項・3項の規定により条例の適用が除外されている.よって,環境影響評価を行わない.

また,道路計画に当たっては,交通条件,自然条件,社会条件などを考慮し,「道路構造令」などをもとに,交通量や道路区分による基本的な幅員構成などの幾何構造は,都市計画の決定内容である位置,延長,幅員,道路構造などを裏付けるものであり,表裏一体のものである.このため,環状6号線の車線数及び基本的な幅員構成などについては,都市計画の根幹をなすもので,その変更は困難である.

以上により,委員会案を受け入れることはできない.

東京都は,都道環状6号線の自動車交通により,窒素酸化物,浮遊粒子状物質等の濃度及び騒音,振動等が初期の予測に反して基準値を大幅に超えていることが明らかになったときは,必要に応じ交通量対策を含めすみやかに是正措置を講ずるものとする. すでに回答しているように受け入れることはできない.

 

調停事項 A 大気汚染等監視のためのモニタリングポスト

  調停案 見解
道路自動交通による大気汚染,騒音,振動の状況を調査するためモニタリングポストを設置する.設置場所については道路の全線供用開始以前に申請人代表と協議の上決定する. 大気の監視は環境行政の一環として行うもので,自動車排出ガス測定局を設置して大気汚染の監視体制の充実を図っている.これらは環境保全局の管轄であり,道路事業者である建設局が設置を決めることは困難であり,そうした条項を受け入れることはできない.協議については,申請人らが沿道の住民代表とは限らないから不適当であり受け入れられない.
東京都は,沿道における自動車交通による大気汚染,騒音,振動の状態を,モニタリングポストその他の方法で継続的に調査し,その結果について沿道住民に周知を図る. 東京都は,すでに,環境行政の一環として自動車排出ガス測定局を設置し,大気汚染の監視体制の充実を図っている.また,道路交通騒音,振動については,区市に測定を委任し,状況の把握に努めている.

したがって,拡幅後の環状6号線で,改めて調査を行う必要はないと考える.

以上により,委員会案を受け入れることはできない.

東京都は,道路の自動車等による公害については,自動車排出ガス測定局により大気汚染を常時監視し,また,交通騒音,振動については,区市に測定を委任し,状況の把握に努め,測定結果を周知する すでに回答しているように受け入れることはできない

 

調停事項 B 沿道緑化等の環境保全策

  調停案 見解
東京都は,環状6号線の拡幅工事にあたり,植樹帯の整備,車道及び歩道の維持補修,その他沿道周辺の環境保全に常に配慮した施策を実施するよう努める. 東京都は,環状6号線拡幅事業実施の中で,沿道の土地利用状況等を踏まえ,歩道や中央分離帯への積極的な植栽や車道の低騒音舗装など,環境に配慮した構造を検討し実現可能なものについては,極力実施していく.

したがって,委員会案を受け入れる

 

その他の事項

  見解
東京都は,すでに回答している通り,B以外の委員会案については受け入れることはできない.なお,最高裁判所への上告の取り下げは,調停受諾の要因とはなり得ない.

本年3月及び4月に,2度にわたり民放テレビにて本件調停の模様の報道があり,その内容は,調停案として検討している項目まで含まれるものであった.この報道内容は「調停の手続き及び経過は公開しない」とする公害紛争処理法第37条の主旨に反するものと考えざるを得ない.

以上により,東京都は調停に応じることはできない.

 

首都高速道路公団に対して

調停事項 @ 脱硝装置の設置

  調停案 見解
低濃度脱硝の技術が進み,脱硝装置が開発され実用段階に達したときは,それらのうち最も浄化能力の良いものを設置する方向で検討する. 脱硝装置を設置する場合,装置の安全性,耐久性,装置の小型化,省エネルギー,脱硝率の安定性などの課題を総合的に解決した上で設置するかどうか決めるのであって,浄化能力の良いものだけが基準になるものではないからこの条項は受け入れられない.
公団は,排気ガス浄化のため,低濃度脱硝装置の技術が進み,本件地下トンネル内に設置可能な脱硝装置が開発され,実用段階に達したときは,それらのうち,安全性,耐久性,装置の小型化,省エネルギー化,安定した脱硝率等を総合的に勘案し,最も適したものを設置する方向で検討する. 首都高速道路公団は,建設省,日本道路公団及び阪神高速道路公団と共に,低濃度脱硝技術の具体化のため,装置を構成する全ユニットを組み合わせた実際の装置に近い規模での実験に着手し,安全性,耐久性,騒音・振動,維持管理,スペース,エネルギー,コスト等の課題の解決に取り組んでいますが,これらの課題が未解決なため,現在実用化についての見通しを述べるに至っていません.

したがって,現段階では受け入れることはできません.

公団は,排気ガス浄化のため,低濃度脱硝装置の技術が進み,本件地下トンネル内に設置可能な脱硝装置が開発され,実用段階に達したときは,それらのうち,安全性,耐久性,装置の小型化,省エネルギー化,安定した脱硝率等を総合的に勘案し,最も適したものを設置するかどうかを検討する. 首都高速道路公団は,建設省,日本道路公団及び阪神高速道路公団と共に,低濃度脱硝技術の具体化のため,装置を構成する全ユニットを組み合わせた実際の装置に近い規模での実験を行っておりますが,安全性,耐久性,騒音・振動,維持管理,スペース,エネルギー,コスト等の課題について解決の目途が立っておらず,現在実用化についての見通しを述べるに至っておりません.したがって,現段階では脱硝装置に係る内容は一切受け入れることはできません.

 

調停事項 A 換気塔の規模の検討

  調停案 見解
脱硝装置を設置する場合には,換気塔の要否を含めてその規模について再検討する. 仮に脱硝装置が実用化されたとしても視認性を確保するため換気塔設置は必要になるので,この条項は受け入れられない.
脱硝装置を設置する場合には,公団は,現在予定している換気塔について,規模並びに設置場所等につき再検討する. 脱硝装置の実用化についての見通しを述べるに至っていない現段階では,「脱硝装置を設置する場合」のように仮定に基づく内容については受け入れることはできません.

また,トンネル換気所の設置場所については環境影響評価及び都市計画において決定されており,脱硝装置の有無に関わらず現計画の位置は適切なものと考えています.

なお,公団は,規模及び景観を対象として十分に配慮した検討を行っています.

公団は,現在予定している換気所について,換気所の規模並及び景観について十分に配慮し再検討を行う. 拒否理由の説明なし.

 

調停事項 B 住民との定期的な協議

  調停案 見解
申請人代表と公団は毎年1回,脱硝技術の開発状況等について情報交換のための会合を開催して意見交換をする. 申請人らが沿道の住民代表とは限らないから,この条項は不適当であり受け入れられない.
公団は,沿道の関係住民に対し,毎年1回以上,上記脱硝技術の開発状況等について,説明会を開催する. 調停は,申請人と被申請人との関係で行われているものであり,調停と関わりのない関係住民を対象とすることは,本件調停になじまないと考えます.

また,脱硝技術の開発・研究については,学識経験者からなる「低濃度脱硝技術評価委員会」においてパイロット実験の成果を踏まえて検討を行うこととしており,その状況については,適宜,記者発表等で公表することを予定しています.

これによって周知の目的は達することができると考えており,受け入れることはできません.

公団は,低濃度脱硝技術評価委員会を通して脱硝技術の開発状況を適宜記者発表等で周知するものとする. 現段階では脱硝装置に係る内容は一切受け入れることはできません.

 

その他の事項

  見解
申請人らの一部は行政訴訟をいまだに係属しており,話し合いによる調停とは矛盾する.訴訟が続いている以上は調停による解決はありえない.
なお,平成9年3月28日及び4月9日,東京メトロポリタンテレビによって本件調停にかかる報道が行われましたが,委員会から示された調停事項の内容が開示されており,当事者双方の互譲によって紛争を解決することを目的とし規定されている公害紛争処理法第37条「調停委員会の行う調停の手続きは公開しない」に明らかに違反しているものと考えざるを得ません.

以上により,被申請人は,本件調停において,今後これ以上の対応はできない旨申し上げます.

 

調停のページへ戻る

ホーム