『テーマ館』 第15回テーマ「しかし・・・」
迷警部 武智虎次郎 登場 by ひふみ
「犯人はお前だああ!!」
その部屋にいた皆が警部の差した人物に注目した。
「うそだああ!!」
指された人物=鹿鳥(しかとり)敬二は、いきなり警部の指をつかむと自分に指さ
れた指をむりやり方向修正しようとする。
「いたたたた、痛い!痛い!こら、子供じゃないんだからって、ああああ、噛むな!
噛むな!!」
いきなり警部と鹿鳥さんのとっくみあいが始まった。腕に噛み付いた鹿鳥さんに、
警部が腕をぐるぐる回しながら応戦する。だが、32歳とはいえ小柄で童顔の警部
(実際、警部はいまだに中学生と間違えられる時がある。ある意味生きた七不思議)
の腕に、立派ななりをした鹿鳥さんが噛み付いているのは、端で見てるとものすごく
滑稽であった。周りで観戦していた人達(僕も含めて)も果たして笑っていいものか
どうか困ったような顔をしながら手を出せずにいる。うーん、いと、あはれ。
「さあ、小噺君!!手錠だ!!」
だが、乱戦(子供の喧嘩)を制したのは警部だった。どこがどうなってああなった
のか、さっぱり分からないが、いつのまにか鹿鳥さんは取り押さえられている。
「ですが警部、どうして鹿鳥さんなのですか?」
鹿鳥さんに手錠をかけながら僕は警部に訊ねた。すると警部は無言で床に散らばっ
た折り紙を指差す。殺された佐々木四郎さんのすぐ側に”しかし・・・しりとり”
と書かれた折り紙がある。それは佐々木さんのダイイングメッセージと思われる物
であった。
「これはアナグラムだ。”しかし”の尻に”とり”をつけてみたまえ。」
し か し と り −−−−> し か と り し (鹿鳥氏)
!!!!!・・・・
その場にいたもの全員に驚愕が広がる。その驚愕の中央で警部は一人得意そうに
にんまりと笑うと、あさっての方向に向かってガッツポーズをした 。
「うーん、これにて一件落着!! ぶりっっっ (警部の造語、ぶいのつもりらしい)!!!」
・・・・こうして、偉大なる武智虎次郎警部の事件簿に新たな一ページが加わった。
「話って何ですか?小噺さん」
とある街角の喫茶店、席につくなり彼女はそう僕に訊ねた。
「自首しなさい。」
妙なからめ手はつかわずに、ただ一言僕はぽつりと呟いた。
「鹿鳥さんじゃなかったんですか?」
僕の一言に、とぼけることも、否定することもせず、彼女はゆっくりとそう答える。
先に注文していたクリームソーダを口に含んで、僕は視線を外を歩く人々にむける、
喉を通る冷えた炭酸がとても痛い。
「鹿鳥さんは、あの時、僕と話していたんです。あの人に佐々木さんが殺せない
ことは誰よりも僕が知っているんです。そういう視点でみてみると、あのダイイン
グメッセージに隠されたもう一つのメッセージが浮かび上がります。」
僕がそういうと、彼女はにっこりと微笑み、諭すように言う。
「あの言葉にこだわってらっしゃるようだけど、はたしてそれでいいのかしら?た
しかに、探せばいくらでもメッセージは出てくるかもしれない。でも、鹿鳥さん
じゃなかったから今度は私・・・結局、あの言葉にこだわりすぎることはナンセ
ンスなんじゃな・・・・」
「どうして、黒の折り紙だったのか」
僕が一言ぽつりともらすと、彼女はふいに喋るのをやめた。
「どうして、黒の折り紙の表地に白の修正ペンで書かれなければならなかったの
か?周りには鉛筆だって、なにより黒の裏地は白の地であったに関わらず、どうし
て、あえて書きづらい修正ペンを使ってわざわざ普通とは逆にしなければならな
かったのか!!」
一息に言って、彼女の様子をみると、彼女はやわらかく微笑んでいた。ひょっと
したら今日ここにくる意味を、彼女は知っていたのかもしれない・・・
「あえて逆・・・そのことに目を向けてみると、明らかな佐々木さんの遺志が、あ
の言葉の中に秘められていることに気づくのです・・”佐々木いさき”さん・・・」
1 ”しかし・・・しりとり”
2 しかし−−−>SIKASI
3 SIKASI(逆さ)−−−−>ISAKIS
4 尻をとる ISAKI*
い さ き・・・・・
すべてを話し終えた後、僕は残ったクリームソーダを一気に喉に流し込むと、その
名も知らぬ喫茶店を後にした。冷たい炭酸が喉につーんとした刺激を与える、僕は
振り返ることをせずゆっくりと歩く。
ふと、見知った人間が、人ごみの中から僕をじっと見ているのに気づいた。
ちびで童顔の中学生のような容姿。そう、・・・愛すべき僕の上司であった・・・
<おわり>
(01月29日(木)14時32分29秒)
逆接殺人月間? "しかし"だらけの事件簿