『テーマ館』 第15回テーマ「しかし・・・」



 「ひとり2」   by はなぶさ

          ( 「ひとり」)

      夜の空間を私は落下している。いつもなら、そこに存在するのは
      カラスのような鳥か虫くらいだが、今は私が地面に向って飛んで
      いる。体が回転し、町の灯かりからマンションの自分の部屋の窓
      へ体が向いた。このマンションは確かに高いようだ。私の部屋が
      もうあんなに遠くになった。なのにまだ私は地面に到着しない。

      空気を受けながら、昨日友人に借りた3万円を返していないこと
      を思い出した。もう返すこともないな、もうけたかなあ。そうそ
      う会社の机に入れたままのアダルトビデオを見られたら恥かしい
      な。

      そう言えば昔いなかっぺ大将ってマンガでにゃんこ先生が、空中
      三回転っていう着地技を主人公に教えてたな。子供の頃に真似し
      て大怪我したな。

      人ってこういう時はもっといい思い出が込み上げるのだろうが、
      私はつまらない事しか思い出さなかった。何だかあっけない感じ
      がして、笑ってしまった。

      しかし、自分の体が地面に激突する音を聞いたのは、笑ってから
      すぐだった。
                              (つづく)

(02月15日(日)21時41分43秒)