「ひとり2」 by はなぶさ
( 「ひとり」)
夜の空間を私は落下している。いつもなら、そこに存在するのは
カラスのような鳥か虫くらいだが、今は私が地面に向って飛んで
いる。体が回転し、町の灯かりからマンションの自分の部屋の窓
へ体が向いた。このマンションは確かに高いようだ。私の部屋が
もうあんなに遠くになった。なのにまだ私は地面に到着しない。
空気を受けながら、昨日友人に借りた3万円を返していないこと
を思い出した。もう返すこともないな、もうけたかなあ。そうそ
う会社の机に入れたままのアダルトビデオを見られたら恥かしい
な。
そう言えば昔いなかっぺ大将ってマンガでにゃんこ先生が、空中
三回転っていう着地技を主人公に教えてたな。子供の頃に真似し
て大怪我したな。
人ってこういう時はもっといい思い出が込み上げるのだろうが、
私はつまらない事しか思い出さなかった。何だかあっけない感じ
がして、笑ってしまった。
しかし、自分の体が地面に激突する音を聞いたのは、笑ってから
すぐだった。
(つづく)
(02月15日(日)21時41分43秒)