『テーマ館』 第16回テーマ「視線」



 ひとり −その後−  by はなぶさ

          ( 「ひとり2」)

      ふと気が付くと、私は地面に仰向けに寝ていた。朦朧とした意識
      の中でマンションの自分の部屋から飛び降りたことを思い出した。
      私の住んでいたマンションはこうやって見上げると更に高く感じ
      る。

      しばらくすると通り掛かりの人が私を見つけて寄って来た。人は
      どんどん増える。私を見る目は優しいものではなく哀れなものを
      見る目だったり、好奇な目だったりした。何処かに行ってくれと
      思った。

      消えかかる意識の中で私は強烈な視線を感じた。その視線は遠く
      であるが、どんどん近づいている。手には花束を持っている。私
      の方へ一目散に近づいて来る。綾だ。

      綾の顔は蒼ざめているようだ。走って来たのか汗をかいている。
      今日の夕方の約束から数時間遅れての登場と言うわけか。すっぽ
      かされたわけじゃなかったのか。

      綾の視線の源が私の顔に最接近するころには私の意識はなかった。

                              (おわり)


(02月23日(月)19時53分17秒)