▼Developer act.3 |
仕方無いんで、細長い足を自分の腰に巻いて持ち上げる。 よっこらしょっと、ベッドの上へ。 足で薄い肌掛け布団を蹴っ飛ばして、彼女を仰向けにして枕に頭を乗せてやる。 俺は身体を半分ずらして、片肘ついて彼女の顔を眺めながら、汗ばんだ顔を撫でてやった。 枕元に置かれた小さなゴミ箱に、まだ使ってないビニール袋が被せてあった。 それを口元に当てて、自分が吐いた息を吸わせてやる。 過呼吸症の応急手当だ。十分ぐらいはそうしてたかな? やっと目が開いた。 「あ…私……」 「刺激が強すぎたかい?」 「はぁ……あつっ…まだ入ってるの?」 「そりゃそうだ。こっちはまだ終わってないからね」 「ごめんなさい……」 と呟く彼女に 「いや、良く頑張ったさ」 と囁きかけて、額と目尻にキスをした。 汗と涙の味がしたね。 「まだ痛いかい?」 「ん…と…あんまり、感覚無い…平気みたい」 中はもう慣れたんだろう。寝ていた身体の方は、そう醒めてた訳じゃないよ。胸を撫でても、尻を撫でても、触れた肌が粟立つんだから。 「はぁ…加持さん…」 「なんだい?」 「大丈夫だから、好きにして…良いから…加持さんも」 「俺も気持ち良くなって良いのかい?」 「うん…ちゃんと、して」 今度はモニターは見えない。 まあ、俺も集中して彼女を味わう事にした。 唇を重ねながら、細い身体に圧し掛からないように、肘で体重を支えて彼女の上に重なった。 「腕は首に…そうだ」 俺の首に腕を回させて、裸の胸を重ね合わせる。 汗で貼り付くみたいに滑らかな肌だ。 彼女の背中の下に手を差し入れ、細い身体を包み込むように抱く。 「これが正常位。膝の力は抜くんだ。足が邪魔なら俺の身体に巻くと良い」 太股が腰に巻き付いてくるんだが、どこもかしこも細い。 乗っかったら潰れちまいそうだから、気を使ったよ。 「あっつうっ」 ぴったり収まった腰の角度が変わって、入り方が深くなった。 「痛むかい?」 「…少しだけ」 さっきは後ろ向きだったが、今度は向き合ってもっとぴったり入った感じだな。 彼女の処女の記しが残っていたとしても、これで全部傷付いたはずだ。 「すぐには動かないよ。ゆっくり慣れろ」 そんな言葉を囁きかけて、長い髪に指を絡ませる。 あらわになった丸い額に唇を落とす。 細い眉に、目尻に、鼻の頭に、耳朶に。 顔中に口付けて、最後に唇だ。 「んっふっ」 俺の首に回った腕に、力が入るのが分かった。 重ねた唇の中で舌を貪るように伸ばしてくる。 彼女の感覚では、キスが一番ココロに近い所でするスキンシップなんだろうな。 ディープなキスは相当気に入ったみたいだ。 「はっ…」 だから、口が離れると寂しそうな顔をする。 子供がする顔じゃない。もっとゾクゾクするような、誘ってる顔さ。 「加持さん?」 「疲れた?」 「ううん…でも」 「入ってるだけで結構良いよ。アスカは違うのかい?」 「ん…当たってる所が」 足を上げさせたのは、こっちの恥骨が向こうの恥骨との間にクリトリスを挟む体勢になるためだ。 中の感覚が鈍くても、身体が重なった所でちゃんと感じてるハズだ。 「もう平気なの、ホントに」 「ふっ…そうか」 リクエスト通り『ちゃんと』する事にしたよ。 重ねた所が離れない、こすり付けるようなゆっくりしたストロークでまずはスタートだ。 「んっ…ふっ…ふぅっ」 俺が身体を揺らすのに合わせて、彼女の吐息が途切れる。 痛みも大して感じないかわりに、快感も大した事が無い。 だから少しずつ、動きを強めてやる。向こうが戸惑わないように、徐々に徐々にペースアップさ。 「あっ…んっ…んんっ」 ちゃんと感じてるんだが、少しずつじれったそうな声になるんだよな。 痛さも快感も、どっちももうある程度慣れたって事だろう。なら、もっと刺激を与えてやらないとな。 「加持さん…もっと」 「おねだりかい? 余裕だな」 自分の上体を支えていた腕をずっと下げる。 彼女の頭のとなり、枕に自分の額を当てて首で上体を支える。 そうしておいて、下げた手で尻をぐっとね、鷲づかみだ。 「ああっ」 足を上げて深く曲げてるから、掴んだ尻はピンと張り詰めてた。 その丸いカーブに沿ってぴったりと手の平を押し付けて、ゆっくり持ち上げるように力を入れる。 ぶつかり合う腰の角度をもっと上に向ける感じだな。 「どんな角度が良い? 良かったら言えよ」 人それぞれなんだ。上付き、下付き色々だから。 「ああっ…ああっ…いいっ」 どうやら彼女は自分で一番良い所を見付けたようだ。 俺の腰を挟んでた膝がぐっと深く曲がって身体を捉えてくる。 俺の動きに合わせて太股で押し返してくるようになって、まあ初心者マークは外してやっても良いって感じだろう。 「そうだ、飲み込みが早いね。相手が動くに任せるだけじゃダメさ。ペースもストロークも下からコントロール出来るはずだ」 彼女のテンポを見失わないように、おれ自身は入った中よりむしろその脚の動きに神経を集中させてた。 手も道具も使わないでイかせる時ってのは、めちゃくちゃに突けば良いってもんじゃない。 心地良い深さとテンポを守ってやった方が話が早い。 だから必要以上に体重を掛けるのはアウトだな。 「あっ…あっ…ああっ」 喘ぎ声が段々高くなってくる。 足を動かすタイミングも早まる。 そろそろ動いてる気持ち良さが掴めてきた頃合いだろう。 そこで一気にフィニッシュに持って行く――タイプじゃないのはもう分かってるだろ? 彼女の身体に大きく腕を回したまま、寝返りをうつ。 これだけ体格差が有れば簡単だ。あっという間に騎上位。 「はんっ」 首に腕を巻いたままだったから、彼女の身体はまとわり付くみたいに回った。 胸に手を置いて上体を起こさせる。 下からの眺めも悪くない。 固くて形の良い胸が、弾むように揺れる。 「さあ、今度は全部自分で動くんだ」 「うっ…んはっ」 身体を起こして完全に腰を落とすと、一番深く繋がる体位になる。 一瞬痛みに顔を顰めたが、すぐ擦れ合う外側の気持ち良さに気付いたんだろう。ぎこちなく動き始めた。 けど、脚の力で上下に動くのはすぐに疲れるから不正解。 恥骨を支点にグラインドするのが正解。 コツを掴むまで腰骨に手を添えて動かしてやる。 上下じゃなくて、前後に揺らす。 「あっ…んんっ…あんっ」 俺の方は、動かない。勝手に気持ち良くなれば良いのさ。 外側を擦り付ける動きにつれて、中もちゃんと動いてる。 何せ狭いからな、すぐにこっちも良くなってきた。 「ああっ」 俺の胸に手を突いて身体を支えていたが、とうとう堪えきれなくなって突っ伏してきた。 まあ、しょうがない。イクまで一人で動き続けるのはまだ無理だろう。 「ん? どうした?」 「だめっ…力が入んない…はぁ」 俺の胸の上に倒れ込んで、荒い息を吐いてる。 途中で止まったんじゃあ、お仕置きをしてやらないとな。 「動けない?」 身体を丸めた彼女の後ろに手を伸ばして、丸い尻を掴む。 少し持ち上げるようにして、下から突く。 疲れるんだが、今の体勢ではこれしかしょうがない。 だがストロークが限られるからな、俺としては少々刺激が足らんのも事実だ。 「あんっ」 驚いたように身体が跳ねたね。 なに、尻の丸みを掴んでいた手を少しずらして、後ろの穴を撫でてやっただけだ。 「随分敏感だな」 「違っ…そんなとこ触っちゃいや」 「どうしてだい?」 「だって…汚いもん」 「汚くないさ。アスカの身体なら何処を舐めたって良いね」 「やっ…あっ」 正常位でしていた時に溢れた愛液でドロドロだった。 指先に絡めて、少しだけお邪魔した。 「いやっ…抜いてっ」 「ダメだ」 後ろを刺激されると、反射的に前が締まる。 膣の筋肉と括約筋は繋がってるんでね。 前の入り口を馴らした時みたいに、ゆっくりゆっくり、指を回して馴染ませる。 「あっ…あはっ…やっ…やっ」 首を振って嫌がるんだが、嫌がっているというよりむしろ戸惑っているように見えた。 感じるべき所じゃない場所で感じてるって事実にさ。 何か、ピンと来るモノが有った。 このカラダは開発されたがってるって、直感みたいなモノがさ。 ベッドの端にローターが転がってる。 使わない手は無いだろう? 「やっ…止めてよ…加持さん」 「好きにして良いんじゃなかったのかい?」 「でもっ…ダメッ」 そう嫌がられると、チャレンジしたくなる。 そういうもんだ。 「意地悪してるんじゃ無い。俺はホントにこうするのが好きなんだよ」 スイッチを入れないローターで、尻の穴の回りをグルグルと刺激してやる。 何をされるのか、すぐに理解したみたいだ。 「そんなの入れないで」 ほとんど泣いてる声だったな。 感じてる声よりゾクゾクくる。 「怖がるなよ。さっきみたいに痛いわけじゃ無い」 「でもっ」 「これもタブーの一つに過ぎんだろ? 倍も年の離れたお前を抱いてるのもそう。後ろの穴をエッチな事に使うのも同じ事」 「やっあっ」 嫌がって力を入れてたが、ツルっと滑って入り口をくぐった。 長い方のローターだったが、半分まで押し込めば、後は丸みで勝手に入ってく。 力を入れてるせいなんだな。 力を抜けばそんなに奥まで勝手に入るもんじゃ無い。 「やっ…あっ…どんどん入ってくるっ」 膣腔と直腸は、身体の中でも隣り合ってる。 アスカの中に入ってる俺のモノの裏筋に、固くて丸い圧迫感が伝わってくるぐらいの距離だ。 「はっ…やっ…あっ」 異物感に力をこめるから、前が締め付けられてどんどん良くなっちまう。 文字通り、頭では嫌がってるのに身体が勝手にって状態だな。 もちろんそれで終わりじゃない。スイッチを入れないと。 「はうあっ」 ぐったりもたれてた上体が、飛び上がるみたいに反り返った。 「あっ…はっ…あ…いやあっ」 身体を起こしたから、後ろに入ってるのが抜け落ちないように手を添えなきゃならん。 中で震えてるのが俺のモノにもびんびん伝わってくる。 イヤイヤ言ってるのに、彼女の身体は勝手に腰を振り始める。 俺のが軋むぐらいのイキオイで、さっき教えた前後のグラインドをね。 「やめっ…やめてっ」 勝手に動いてるのに『やめて』は無いよな? スイッチはもちろん切らない。 腰の上で前後に身体を揺らす彼女を乗せたまま、俺の方は下から突き上げる。 それぞれが勝手に動いちゃタイミングがズレるばっかりだ。だからちゃんと、リズムを合わせてさ。 知力、体力、経験。 プレイを楽しもうと思ったら、どれも鍛えてなきゃいけない。 「はあっ…ひあっ…ああっ」 うん、ほとんど悲鳴。 俺はこれを聞く時が一番幸せな充実感を感じる。 悦がり狂う女の声ほど耳に心地良いモノが有るかい? 「まだだ、まだだぜ」 先にイカれてまた気を失われたんじゃたまらんからな。 こっちも遠慮無く突かせてもらう。 身体が擦れ合う湿った音。 彼女の尻が俺の太股に打ち付けられる乾いた音。 それと悲鳴の三重奏。 「いっ…ひっ…ひあっ…いやっ…いやあああっ」 髪を振り乱して泣き叫んだ。 その声に痺れて、果てたね。 「ああああっ…はああああっ」 ビクンビクンと彼女の身体が跳ねる。 その中で、俺のモノもドクンドクンと脈打ってた。 欲望の塊が、吹き出して止まらない。 白く汚せ。 身体の奥底へ。 隅々まで注ぎ込め――ってなもんだ。 「はっ…は……あぁ」 目を閉じた彼女は、俺の胸の上に崩れ落ちた。 お見事、としか言いようが無い。 失神して力が抜けると、すぐに後ろからローターが飛び出す。 たっぷり汗をかいた胸を合わせたまま、身体を離さなかった。 なにか、勿体無い気がしたんだな。 その狭い場所にずっと止まっていたかった。 袋小路さ。 何処へも逃げられない。 それは俺の人生と同じ。 終わったモノが徐々に弛緩してくる。 張り詰めていた時には自分の鼓動を感じていたモノが、緩んでくると今度は彼女の鼓動を感じた。 それはさすがに知らなかったからな、ちょっと新鮮な体験をさせてもらった。 曲がったままの脚が窮屈そうだったから、膝を伸ばして身体を真っ直ぐにした。 股間は繋がったまま、胸は重ねたまま。 長い髪のおかげで俺は少々息苦しいが、彼女はそのまま眠ってくれても良いと思った。 |
三十分もそうしていたかな。ただ髪を撫でるだけ。 近すぎて寝顔も見れない。 吐息がずっと耳にかかってた。 「はっ」 突然目が覚めたみたいだった。 「んっ……あ……加持さん?」 「何処へも行かないよ」 どういう訳か、目が覚めた途端に泣き出した。 正直、参ったね。 「どうしたんだ」 「わかんない……止まらないの」 泣きじゃくる訳じゃない。 ただ、ぽろぽろと涙が零れてくる。 「あ…れ?……まだ……繋がってる」 「そうだよ」 「良かった」 何が良かったんだか知らんが、力一杯しがみ付いてきた。 「怖い夢でも見た?」 「うん」 「そうか」 もう手が届かない、そんな夢を見たと言ってた。 俺が居なくなるのか、自分が消えてなくなるのか。 どちらか分からんが、そんな夢だったとさ。 予感か、一種の正夢だな。 「何時?」 「さあな……ちゃんと覚えてるかい?」 「もちろん…加持さんが意地悪だってコト」 「そうかい?」 「そうよ。普通にしてって言ったのに……」 彼女が身体を起こして、繋がったまま顔を合わせた。 拗ねたみたいに口を尖らせる顔も、悪くない。 「普通なんて、人それぞれだろ。ベッドの上の趣味は一人ずつ、みんな違う」 「じゃあ……ミサトは?」 「俺が普通のプレイに満足しなくなったのは、半分はアイツのせいだな」 「そっか……そうなんだ」 少し悲しそうな顔をして、風呂に入りたいと言い出した。 離れるのが少し惜しい気がしたね。 「連れてってやるよ」 「このまま?」 「ああ。栓をしておいたんだ。シーツが汚れる」 「でも……あっ」 抜けないように気を付けながら、彼女の身体を抱える。 立ち上がってそのまま歩く。 向こうは首に腕を回して、腰に足を絡めてしがみ付いてる状態だ。 「んっ……んっ」 歩くたびに、どうしたって身体は揺れる。 彼女が目を覚ましてから、俺のはもう一度元気になっていたしな。 「シャワー? それとも湯船で身体を洗う?」 「あ…の…下ろして」 「離れがたいんだよ。ずっとアスカの中に居たい気分だ」 「あぁ……加持さん」 抱き着いてきた顔は、心底嬉しそうだった。 けど、まあ、そのままじゃ何かと不便だ。 二時間はずっと繋がって居た事になるか? 久しぶりに、彼女の胎内から自分のモノを抜き出した。 「あうっつ」 奥まではまってたモノが、抜け落ちる時に傷に当たったんだろう。彼女の膝が崩れた。 ぺたんと座り込んだ股間の下、風呂場の明るいピンクの床へ、白と赤のまだらな液体が流れていく。 「あ…溢れてくる……」 まだ冷め切って無い風呂の湯を汲んで、かけてやった。 湯船に熱い湯を足しながら、彼女の身体をシャワーで流す。 「たっぷり汗かいたな」 「ねえ、みんなあんな風になるの?」 「なにが?」 「その、気が遠くなっちゃった事」 「失神するほどのプレイはなかなか出来ないね。アスカは素質が有るんだろう」 「何の素質?」 「セックスを楽しみ尽くす素質さ」 彼女の後ろに立って、身体中手の平で撫で付けた。 シャワーで流しながらね、そうして愛撫しながら喋ってた。 過呼吸の話はしなかったよ。思いきり喘いで気が遠くなるのも悪くないだろう。 「そろそろ温まったかな」 良い湯加減になった湯船にアスカを抱えて入った。 さすがに溢れて流れるが、水道代だって料金のうち。じゃんじゃん使ってナンボだろう。 俺が下になって、彼女を背中から抱きしめる。 風呂も豪勢なモーテルだ。 二人で足を伸ばせる湯船さ。 「あっ…んんっ…くすぐったい」 「泡だらけになって肌が触れ合う感触は、どうだい?」 「やっ…分かってるくせに」 股間に彼女の尻の丸みを感じながら、太股を絡める。 両手は胸をゆっくり、さするように揉む。 逆ソープでサービスって気分だな。 全身くまなく、手の平で触れてやる。 ただ腕を握って滑らせるだけで、皮膚が粟立つ。 「はぁあ……」 「気持ち良いかい?」 「加持さんは?」 「楽しんでるよ。手触りが良い」 嘘じゃない。 正直に言えば、もう少し柔らかな肌が好みだがね。成熟してない固く張り詰めた肌の滑らかさも、悪くない。 たっぷりの湯に身体が浮くから、尻も腿の裏も撫で付けてやる。 特に尻の丸みは、石鹸の泡が付くとなおさら良いね。 「ちょっと邪魔だな」 彼女の尻の下に、俺の固くなったモノが有るんだが、これが邪魔なんだよ。二人の間でゴリゴリとね、少々感触が良くない。 「私も触って良い?」 「なにを? おっ。そういう事ね、どうぞ」 彼女は俺の腹の上に尻を乗せて、身体を起こした。 太股の間でそっくり返った俺のモノを、石鹸混じりのお湯の中で両手で包む。 悪くないね。 「こういう事をしてくれるお店が有るんだよ」 「ソープって言うんでしょ?」 「良く知ってたな」 「こんなにくすぐったくて気持ち良いってコトは、知らなかったけど」 ツルツル二人で手を滑らせ合う。 なんて言うのかな、恋人同士みたいにじゃれ合ったさ。 「うふっ……加持さん」 「どうした?」 「熱くなってきちゃった」 風呂の湯で温まったって意味じゃないぜ。 なんてこった、もう誘う事を覚えたかと嬉しくなったね。 「どこが熱い?」 「どうしていちいち聞くの?」 「アスカが答えにくそうにするからさ。恥ずかしそうな顔を見るのが良い」 「趣味わる〜い」 「そうか?」 「いやんっ」 趣味悪いって言ったお仕置きに、指先を後ろの穴へ突っ込む。なに、ツルンと簡単に滑り込むんだよ。 「やっ…やっ…もうっ」 「誘ったのはそっち」 「お尻じゃなくてっ」 「ん〜〜、じゃあドコ?」 ま、別に言ってくれなくても良いんだけどな。 そういう風にからかわれて、赤くなる顔が見たいってだけ。 俺の指から逃れるように、彼女はくるっと後ろに振りかえった。 「ミサトだったらこういう時、どうするの?」 「どうした、怖い顔して」 「負けたくないもん」 「ふっ、そうか。アスカは負けず嫌いだったんだよな」 「そう、だから」 「葛城なら、おねだりなんて回りくどい事はしないな。やりたい時は向こうから勝手にやって来るさ」 「それって…ちょっと」 「女らしくない?」 「うん」 「アスカは案外大和撫子だな」 「自分からなんて、多分楽しくない」 「どうして?」 「何されるんだろうって、ドキドキしてる時間が一番」 「なるほどね」 向かい合った彼女の脇の下に手を入れて、ちょっと持ち上げて浴槽の縁に腰掛けさせる。 普通の湯船とは作りが違う。 浴槽の回りはぐるりとベンチぐらいの幅が有る、滑らかな大理石だ。そこに座らせる。 「なに?」 「一々言わない方が良いんだろう?」 目の前に腰掛けた彼女の脚の間に鼻先を突っ込んで、その股間を舐め始める。 「あっ…やっ…やめてっ」 普通は最初にするんだけどな、まあ今回の二回戦でのお楽しみがこれだ。 「どうして? 指で触るより良いだろ?」 今度は焦らしたりしない。 じゃれ合ってもう十二分に滾ってるからな。 膨れたクリトリスを唇で挟むようにして吸い付く。 包皮がペロッと剥けたら、舌先で中身を転がしてやる。 「ああっ…はあっ…ああんっ」 脚を上げて膝の裏で俺の肩を掴んできた。 尻がつるつる滑って安定しないから、手は俺の髪を掴んできたよ。少々痛かったがまあ仕方無いだろう。 秘裂を初めて舐められる経験ってのは、強烈らしいからね。 「やっ…あっ…あんっ」 また腰が振れ出す。ホントに素直な身体だ。 見た目も舌触りも良かった。 付き合う女にクンニしやすいように剃毛したりする事も有るんだが、彼女の場合は必要無いだろうな。 始めから、恥骨の上に小さな三角形を描いて生えてるだけさ。脚の間や大陰唇はツルンとね。 だから唇や頬に当たるジョリジョリした感じが無い。 まあ、あれも有っても悪く無いんだけどな。 顔に触れるのが柔肌ばかりって感触は、一度知ると病み付きだね。ずっとそこにむしゃぶり付いていたくなる。 「ああっ…だめえっ」 「良いじゃ無いか。何度でもイケよ」 彼女の声を聞いてるだけで楽しい。 舌触りが楽しい。 新鮮な反応も、もちろん。 ナニを突っ込んで痛がられるぐらいなら、ずっと舐めていてやったって良いさ。そういう性格なんでね。 「イッちゃう…イッちゃうから」 「良いって、遠慮するな」 「はあっ」 膣腔に、右手の指を二本。深く入れると処女膜の傷に触れるから、浅い所を探る。 手前側の天上、恥骨の裏にざらつきを感じる。 Gスポットの輪郭がはっきり分かるタイプだった。 こういう身体は塩吹き体質だったりする事が多い。 手を上に向けて、指の腹でそこを強く押してやると、膨れてくる。それとクリの根っこが繋がってるんだ。一層充血して、クリトリスが『勃起』してくる。 もちろん唇で包皮を摘まんで開いて、舌先でまんべんなく刺激してやる。 キスするよりもずっと繊細な口技が必要だ。 「ひいっ…ひあああっ」 かすれた声が風呂場の固い壁に反響する。 あと一息だろ。締めはやっぱり三所責めといきたいね。 指でも良かったんだが、ふと脇を見ると、用意してたバイブとローションをここの棚にも置いてた事を思い出した。 全部シリコンの、柔らかいアナルバイブも有る。 ローターほど振動しないが、長いし身体の中で自由に曲がる。慣れてないアスカにはこっちの方が良いだろう。 ローションをたっぷり付けて、入れてやる。 「いっあああああっ」 余った左手で胸を掴んで乳首を摘まむ。 アスカの手は俺の頭をしっかり掴んで、腰をぐいぐい押しつけてきてた。 ラストめがけてバイブのスイッチを入れてやる。 中を犯してる二本の指は、少し乱暴なぐらいがちょうど良い。 「はあっ…ひあっ…あはああああああっ」 狭い風呂場だから、その日一番大きな声に聞こえた。 叫ぶのに合わせて、勃起したクリを舌で押しつぶすぐらいのつもりで強く舐め上げる。中で硬くなったGスポットもぐっと押してやる。 思った通り、口の中に苦いモノが溢れてくる。 尿道口から少し白濁したのが、射精するみたいに飛び出してきてた。 口を離すと、二回、三回、まだまだ身体が痙攣するのに合わせて吹いてくる。思った通りの身体だ。 「いやっ…やあっ…あふっ」 お漏らしだと思って止めようとすると、余計に出る。 男の射精と同じなんだな。 「ああ…ああ……」 手を離すと、そのまま湯船の中に落ちてきた。 完全に脱力。 目は虚ろで口は開いたままだ。 「新しい性感に目覚めた感想は?」 「はぁ…はぁ……はあ……」 まだ肩で息をしてる。 「何が……わかんない」 「そうなるように出来てるんだよ。気持ち良かっただろ?」 「は…恥ずかしいし、怖かったし…んっ」 頑張ったご褒美のキス。 背中から尻に向かって撫でると、まだアナルにバイブが入ったままだった。スイッチを切ってやる。 「抜いて…もう…」 「自分で出せよ。手は使っちゃダメ」 「ええっ」 追い出すように湯船から上がらせる。 丸い尻の間から尻尾みたいに、半透明のアナルバイブがぶら下がる。 「手使わないって…」 「そこでしゃがんで」 「やっ…いやっ」 「どうして?」 「もう許して」 泣きそうな顔したって、許さないね。両手首を掴んで離さない。彼女は膝の力が抜けてしゃがみこむ。 「そう、そこで出してごらん。見ててやるから」 「いやっ…いやよ…やあ」 いってる間にズルズル抜けてくる。 「はぁ…はぁっ」 腰がプルプル震えるぐらいに力を入れたって、逆効果さ。 丸くて短いローターとは違う。 長くて半分出てるから、息むと勝手に出てくる。 「はっ…はうっ」 どろんと、ローションに濡れたバイブが床に落ちた。 それがキッカケになったんだな。 「やっ…ああっ…止まらない」 膝を閉じて床に座り込んだんだが、オシッコがね。 排水口に向かって流れてく。 「いやあ……見ないで加持さん」 バッチリ眺めるさ。DVを風呂場に持ってこなかったのは失敗だったな。 あれだけコークハイを飲んだ後だ。しょうが無いだろう? 「はあ…はあっ…ああ」 手を離すとペタンと崩れ落ちた。 手桶でお湯をかけて流してやる。 なに、もう恥ずかしい事なんて無い。 「アスカの恥ずかしい所は全部この目で見たよ。それが望みだったんだろ?」 「違っ……そんなんじゃないもん」 「奇麗な事ばっかりじゃない。自分も他人も全部ひっくるめてさ。それが人間だろ」 「だって……」 「むしろ好きになるよ。汗もかくし腹も減る。食べたら出す、飲んだら出るのは当たり前」 「恥ずかしい……」 「平気だって」 また湯船に連れ戻して、ゆっくり全身をさする。 嫌われるんじゃないかと思ったが、そうでも無いね。 怖い物が無くなっただけ、正直になれる。 「疲れちゃった……眠い」 排泄する姿は一番無防備だからさ、改めて彼女の事を可愛いと思った。 「まだまだ。俺は元気だよ」 二回戦をしてみたくなったって良いだろう? 「でも、もう」 「限界?」 「わかんない……けど」 「まだ教えてない事が有る」 「へ?…はんっ」 今バイブが抜けたばかりのところに、また指を差し入れる。 首筋に掴まって身体を固くするけど、もう逃げ出しはしない。 「やっ…そっちはもう」 「柔らかくなったな。覚えるなら若い内の方が有利だよ」 「なに?…いやあっ」 「力抜かないと、怪我するよ」 「やっ…だめっ…ああ、熱い」 指を二本に増やしたんだ。 揃えていても隙間が出来るから、そこからお湯が入り込む。体温より風呂の湯の方が温度が高いからな。身体の中が熱く感じる。 「もう許して」 「許さないさ。アスカの身体は隅々まで知り尽くすよ」 「あうっ…くうっ」 俺の首の後ろ、回した手で自分の手首を掴んでる。 痛みと熱さ、それと感じちゃいけない場所で感じる快感。 「あっ…はっ」 初めての場所を馴らすんだ。前でした時みたいに、丁寧にな。 若い皮膚と筋肉だ。丁寧に扱えばちゃんとほぐれる。 「ど…どうするの?」 「こっちでする」 「いや…いやよ」 首を振って嫌がるが、身体は離さない。離れさせない。 二本入れたまま抱え上げて、後ろを向かせて膝立ちにさせる。 湯船の縁に腹をつけさせたら、腰を折って身体を前に倒す。 洗い場の床に手を付けさせれば、尻の上がった良い光景だ。 「やんっ、冷たいっ」 ローションのボトルを逆さにして、たっぷり濡らす。 溢れたのは前の穴へ流し込む。 「あっ…ああっ」 並んだ普通のバイブの中で一番おとなしいヤツを前の穴に。 首を振るタイプのだったが、奥まで入れない。スイッチを入れれば入り口に引っかかってるぐらいの浅さでぐりぐり回り出す。 「はあっ…はあっ」 「後ろの穴も、キレイだよ」 「見ないでっ」 「そういうわけにはいかんだろ」 濡れて輝くような白い肌の、まるいお尻の真ん中。 襞もピンクなら中も奇麗な色だ。 後ろの穴に本気で欲情したのは始めてだったな。 マジで犯してやりたくなった。 閉じようとひくつくそこに、口を付けた。 指の周りを舌でなぞると彼女の身体が震えた。 「そんなとこ舐めちゃやだ」 たっぷりのローションが腹の中でたぷんたぷんと揺れる。 二本の指をゆっくり開いて更に拡張する。 「痛っ…やめっ」 逃げ出したいけど浴槽に引っかかってるから、腰は逃げられない。 立ち上がって自分のモノにもたっぷりローションを付ける。 割と固めのローションだ、流れないで良く絡んだ。 アスカの背中を左手で押し下げて、さらに前傾させる。 後ろでする時、尻は上がれば上がるほど良いんだ。 前に入れておいたバイブを一旦抜いたら、向こうも少しは楽になったか、おとなしくなった。 指を差し入れたまま、自分のモノをあてがう。 「あう……」 覚悟を決めてくれたかな。 ゆっくり指を抜いて、閉じない内に先端を押し付ける。 「はあっ」 「そうだ、ゆっくり息を吐け」 「はあっ…はああっ」 たっぷりのローションで、ジュプッと湿った音がしたね。 入り口がひときわ筋肉が強い。 けっこう力を入れて腰を押し出さないと入っていかないぐらいだ。 だが雁首の一番太い所がそこを通っちまえば、もう大丈夫。 今度は抜こうとしても抜けないぐらいさ。 「はああっ……はっ…入ってくるう」 未開発で感覚が鈍い膣腔より、肛門性感の方がまだ敏感なぐらいだろう。 肌と粘膜がローションで濡れて擦れ合う。 尻から背中にかけて鳥肌が立ってたよ。 俺の方も皮膚が粟立ちそうだった。まさに痺れる程のってやつだ。 背中を手の平でゆっくりさすってリラックスさせてやる。石鹸のおかげで手も滑る。 「さすがにキツイな。すぐイキそうだ」 「んあ……やあっ」 ゆっくり動き出す。 根元は手で思いっきり握り締めたぐらいの締め付け方だ。 乱暴に動くとそれこそ怪我するからな。ゆっくりゆっくりだ。 とは言え、後ろだけじゃ彼女も物足らんだろう。 入れる時に抜いた首振りバイブを、前へ。 「キツイ…入らない」 「大丈夫だよ。力抜いてごらん」 「あっああっ」 バイブの先が回り出すと、俺のモノの真ん中アタリで引っかかる感じがしたな。 薄い筋肉一枚で隣り合った二つの穴が、どっちも一杯に広げられた状態。 息をするのも辛いんだろう。呼吸が浅い。 「ふあっ…ああっ…いやあっ」 とうとう泣き出した。 泣いてる声も、嫌いじゃ無い。 自分でもやってる事の背徳感に、酔ったね。 |
「あうっ…はうぁっ」 ゆっくり突く。 直腸の感触を感じながら。 背中から眺めても、奇麗な身体だ。 後ろから肋骨が透けるぐらいに薄い。 ウェストは内蔵が入ってるのが信じられんぐらいに細い。 なのに、尻の丸みは女を感じさせる。 でもやっぱり、小さなお尻だな。 その真ん中に、自分のモノが突き立ってる。 悪くない眺めだ。 そこに彼女のむせび泣く声が、反響して響く。 「いあっ…あうっ…くうっ」 徐々に動きを早める。 感じてるのか辛いのか、動きに合わせて彼女の身体も揺れる。押し殺した喘ぎが漏れる。濡れて垂れ下がった髪から、細いうなじが覗いた。 浴槽の縁に手をついて、その背中に身体を重ねる。 うなじなら髪で隠れる。 痕が付いても良いだろう。きつくキスをして、泡にまみれた身体の前に手を滑らせる。 左手はぐるりと回して右の乳房を掴んだ。 右手は真っ直ぐ腹の下へ。 引っかかって回り続けるバイブの根元で、クリトリスがいっぱいに勃ってた。 それを指の先で、摘まんでやる。 「あああっ」 やっぱり、まだ前も後ろも穴の中は未開発なんだろう。 けど外側の感覚は、開発するまでも無く始めから備わってるもんだ。 で、彼女のそれは人並み外れて敏感。 「やあっ…触らないでっ」 痺れるような快感が走ると、反射的に穴が締まる。 どっちもいっぱいいっぱいだから、収縮すれば痛むだけだ。その痛みから逃れるには、快感を諦めるしか無い。 でも、俺としては痛みと快感の限界を味あわせてやりたかった。 摘まんで剥いて、更に刺激してやる。 「ひぃあっあああっ」 脚がジタバタ暴れたね。 でも細い身体は抱きすくめられて、俺に圧し掛かられてる。体格差がありすぎて腕の中にすっぽり収まってるんだ。逃げ場は無いよ。 その状態で徐々に深く強く、突き上げる。 「あひっ…ひあっ…いやああっ」 壊れちまうぞ、とブレーキを掛ける俺が居る。 壊しちまえ、とアクセルを踏む俺が居る。 細い身体が軋んだ。 痛みと強すぎる刺激から逃れようと、狂ったように暴れた。 アクセルが勝つね、こういう場合。 「あうっ…くうっ…許してっ…許してえっ」 股間に伸ばした手の平に、またどろどろと流れ出すものを感じた。潮を吹いたのか、内蔵への圧迫に耐え切れないで漏らしたのか、もうどっちだって良いさ。 アスカは自分の身体を守るように、手で両肩を掴んで身を捩ってる。 鬼畜め、地獄へ落ちろ。 と自分を呪いながらフィニッシュに向けて走り出す。 我を忘れて突いたのは、まあ、久しぶりだ。 いつもは女を啼かせる事しか考えてない。 自分のモノは二の次にしてる。 その時は違った。 自分さえ良ければ良かった。 「あひっ…ひあっ…ああっ…ああああっ」 泣いてるアスカの尻が締まった。 掴み掛かって千切れそうなイキオイさ。 こらえていたのが、たまらず弾けた。 跳ねるようなイキオイで吐き出す。 ドクンドクンと何度も何度も、どれだけ出るのかと。 「はあ…はあ…ああ、堪能したよ」 全部出し切るまで中に居た。 痙攣するように締め付けてくるせいで、残らず絞り取られたって感じがしたな。 「はっ…はっ…あうっ」 身体を離したら、途端に彼女の中からローションと一緒に溢れてきた。 後ろが緩んだのと同時に、引っかかってたバイブもちゃぽんと湯船に落ちた。 アスカはうつ伏せのまま、またぐったりと。 今度は喘いだせいじゃ無くて、悲鳴の上げ過ぎで過呼吸になったかもしれん。 抱えてゆっくりシャワーで清めて、ぐったりしてるままベッドまで運んだ。 |
彼女が目を覚ましたのは明け方。良く寝てたんだと思う。 その間に俺はDVをチェックして道具を全部車に運んだ。いつでも逃げ出せるようにね。 目を覚ました彼女は、信じられないセリフを吐いたよ。 「……好き。加持さん」 メチャクチャにされて、なんでそう言えるのか、正直分からん。 「こんな俺が?」 「だから、試したんでしょ?」 「まあ、そういう言い方も有るかもしれん」 「分かったの。恥ずかしい事されたと思ってる。楽しいばっかりじゃないって事も。でも、それが加持さんと付き合うって事なんでしょ?」 「開き直って言えば、そうなるね」 「だから、加持さんは本気で、正直に自分を見せてくれたんだわ」 「誉められてるのか、それ」 「お礼よ。全部見られた。死にたいぐらいに恥ずかしかった。でも、私も全部見たわ。加持さんの事」 幼くても、女はタフだと思ったね。 アレはやっぱり、別の種類の生き物だ。 だから、やめられない。 そろそろ出ようと言うと、彼女は着換えを持ってトイレにいった。 なんでか知らんが服を着る所を見られるのは恥ずかしいそうだ。 ところが、服を着ない内に慌てて戻ってきた。 たった一つの小さな荷物、化粧ポーチを引っつかんでまたトイレに消える。 次に現れた時は、髪も奇麗に梳いて服を着てた。 「どうしたんだい、慌てて」 「別に。血が止まらないと思ったら、傷のせいじゃなかった」 「……そっか。そりゃ良かった」 「良くないわよ。また二三日お腹痛いかと思うと……」 「ま、さすがに孕ませたんじゃキマリが悪い」 初モノって事で、生でしたかったんだな、どうしても。 だから照れ隠しに笑ったんだが、彼女は笑わなかった。 「……そしたら、どうしてた?」 その問い掛けには、冗談で答える訳にはいかない。 彼女の為じゃ無い。 自分の為に、正直に答えた。 「……そんな身体じゃエヴァには乗れんだろう……連れて逃げるさ。地の果てまで。地獄まで」 「加持さんとなら、堕ちても良いわ」 「本気だな」 「もちろんよ」 「良い顔だ。女の顔になった」 |
結局モーテルを後にしたのは、空が明るくなった五時頃。 「帰りたくないなぁ……」 隣りに座った彼女の呟きは何気ないモノだったが、何故か心に染みたね。 俺との別れを惜しんでる訳じゃない。一夜限りの逃避だったが、もっと遠くまで逃げたかったんじゃないかと、そんな事を思った。 「まだ時間は有るよ」 「どこか寄れる?」 「月並みだが、海でも見に行こう」 朝の霧が濃かったな。 山道を延々下るんだが、ライトを付けると真っ白だ。 慣れた道だから夜明けの空の明かりを頼りに走った。 海岸近くまで降りると、ようやく霧が晴れた。 青い空や白い砂浜より、陽光に照らされた彼女の手足の方が眩しく見えた。 モーテルのチープな間接照明なんかより、夏の太陽の方が似合うな。 暗がりの中では痛々しいほどの手足も、こうして眺めれば健康的なもんだ。 「寂しい海ね……」 波が砕ける音が少々うるさいぐらいに響く。 小田原海岸は旧市街の残骸さ。 半ば海に浸かった建物は汚くくすんでるが、波に砕かれたコンクリートの欠片は、漂白されたみたいに真っ白になって元の砂に帰ろうとしている。 「この辺は泳ぐには危なすぎるからなあ」 車のラジオが懐メロを流してた。 夏に流行った陽気なポップスだったが、セカンドインパクト以前の歌はどれも懐かしい。 聞いてるだけで、泣きたくなるような気分さ。 海岸道路から砂浜に乗り入れても、遊泳禁止の立て札だけが寂しく立ってる。 湘南の海が海水浴のメッカだったなんて、今の子供達は信じないだろう。 「降りても良い?」 「もちろん。けどのんびりはしてられないぞ」 「分かってる」 赤い靴が危なっかしかった。 俺と逢うからって、わざわざヒールの高い靴を履いてくる事なんて無いのにな。 しばらく波打ち際を歩く後ろ姿を眺めてた。 俺は車にもたれて、煙草を吹かして待ってるだけ。 俺の吸ってる煙草の匂いは葛城が良く知ってる。彼女が隣りに居たんじゃ、さすがに狭い車の中では吸えない。 「そろそろ、時間だ」 戻った彼女の手に、貝殻が一つ。 「そんなモノ探してたのか」 「ガラスでも石でも、なんでも良かったの」 「ふーん」 特別な一日の、記念のつもりか。 女の子ってのは、良くそういう事をしたがるね。 |
「じゃあこれやるよ」 シャツのカフスを一つ。気取るつもりは無いが、カフスだけは安物じゃない。タイピンとセットで親父の形見だ。 それを片方だけ。 「ありがと、加持さん」 「礼を言われるほどのもんでも無いさ」 |
だから俺がここで死んでも、彼女は忘れないだろう。 初めて寝た、男の事を。 それだけで、十分じゃないか。 別に悟ってるわけじゃない。 ただ、覚悟は最初からしていた。 こんな仕事をはじめる以前からね。 だからあちこちに種を蒔いたのさ。 芽を吹かなくても良いんだ。 残せたモノが有る、そう思えるだけで違う。 そうだろう? さて、そろそろこの話で引っ張るのも限界かな。 別の話を聞く気は無いかい? たとえば、NERVの技術部長がどんな女かとかさ。 興味無い? 俺はまだ喋り足らないんだがね。 ――アンタにとっても忘れられんだろう? 今際の際に、女と寝た話しをベラベラ喋る男なんざ、そうは居ない。 どう? 興味無いって顔だな。 残念だねえ、面白いのに。 |
↑prev ←index ↓next |
「読み切りくりぃむゲリオン」目次へ戻る 目次へ戻る |
|||
制作・著作 「よごれに」けんけんZ 返信の要らないメールはこちらへken-kenz@kk.iij4u.or.jp レスポンス有った方が良い場合はくりゲストブックまで。 |