▼Dilemma act.2 |
「そろそろ出るかい?」 入れ違うには早すぎるタイミングで風呂場に入る。 「あ、すいません。すぐ出ます」 「良いよ。裸の付き合いも悪く無いだろう」 自慢じゃ無いが、風呂場は広い。高品質の設備が売りのマンションだった。 膝を抱えて湯船に浸かった彼の差し向かいに、有無を言わさず身体を沈める。 たっぷり張られたお湯が盛大に溢れるが、こういう入り方は嫌いじゃ無い。 「また、唐突ですね」 「そうかい。見てない所で泣いてるんじゃ無いかと心配になったんだ」 「そんな風に見えました?」 「どうも、泣き上戸らしいね」 「普段飲まないから、分かりません……今日は、たまたま……」 「そうかい」 |
予想通り、線が細い。 肩幅は有るが、骨だけ伸びて他の成長が追いついていない感じだった。 チルドレンのデータはすべて持っているが、やはりデータはデータだ。こうして目の前にしてみると、服を着ている時の印象以上に未成熟な身体だ。 「ふう、結構熱い風呂に入るんだな」 「そうですか?」 「酔い覚ましにはちょうど良い」 軽く温まっただけで、さっさと上がって頭を洗う。 浴槽の縁に腕組みをして、こちらを覗き込む仕草が可笑しかった。他人との距離を計りかねている……自分から歩み寄る術は持たないが、相手から飛び込まれてしまうと拒絶できないタイプなのか。 「さっきの話、続きはしてくれるんですか?」 「ん? ああ、ちゃんとするよ。すまんが手桶は何処かな?」 「流します」 頭の上から湯を掛けられ、不思議な感慨を覚えた。 家庭と言うモノを持てば、これが普通になるのかも知れない。しかし俺に息子は居ないし、彼は父親というモノを知らない。 「背中流しますよ」 「ん? そんな事までしなくて良いよ」 葛城の気持ちも分からないでは無い。 奇妙な家族ごっこは、本物の家族なら付き物の葛藤が無い分、楽しさと安心感だけ感じる事も可能だ。 「良いです、向こう向いてて下さい」 「そりゃどうも」 これも、彼なりの距離の計り方なのかもしれ無い。 正面から裸を見られるのは恥ずかしい気がするが、相手の背中になら歩み寄れる。 もしかすると、遠い父親の背中を、俺のそれに重ねて見ているのかもしれない。 「お父さんの記憶は、どのぐらい有る?」 「また唐突ですね」 「いや気になってね。そう言えば昔は親父と風呂に入ったなと」 「そうなんですか……僕は、覚えてないです。無かった訳じゃないと思いますけど」 「そうか」 一人しか居ない肉親を、嫌えば良いのか、恨めば良いのか、それとも受け入れて欲しいのか。彼自身、それが分からない。 だから、混乱するし、傷つきやすい。 愛されている確かな実感を、これまでの人生で一度も味わえなかったのか。 「ありがとう、さっぱりしたよ」 身体を流して湯船に入る。 今度は彼が身体を洗い始めた。 「なんだ、まだ洗って無かったのか」 「ええ、頭だけ洗って、ボーッとしてて。長風呂ですいません」 「じゃあ背中は任しとけ」 「いえ、良いですよ」 「なんでさ? 遠慮するな」 「え……じゃあ、はい」 泡にまみれたスポンジを受け取り、湯船から手を伸ばして背中を洗ってやる。 身構えるように身体を丸めて背を向けるのが可笑しい。 「怖いのかい? それとも、くすぐったい?」 「慣れてないんですよ」 「家族ってのは、無意識に相手に踏み込み過ぎるもんだ。依存したり、甘えたり、甘やかせたり……それでも、遠ざけあって背を向けているよりは良い」 「そんな風に見えますか? 僕と、父さんが」 「いや、相手に背を向けるのは意識してる証拠だ。シンジ君は、どうしたら良いのかじゃなくて、自分がどうしたいのかが分かってないんじゃないか? 流すよ」 「あ、どうも……」 たっぷりお湯を掛けてやって、スポンジを返す。 酔い覚ましに良いかと思った熱めの風呂だが、逆に酔いが回ってきているような気もする。それは彼も同じかもしれない。 ふと見た顔がひどく赤いのに、今頃気が付いた。 「お父さんは……僕に何も、教えてくれませんから」 「それは、悲しい? 寂しい? それとも」 「不器用だって自覚は有るんです……ただ、どうすれば良いか分からないだけで」 洗い終わって、また湯船に差し向かいになる。 互いに足を向けるだけの余裕が有るが、殊更身を縮めている様子。 「話し掛けて、拒絶されるのが怖いんだろ」 「そうかもしれません……加持さんぐらい遠慮無しなら、こっちも話さない訳にいかないんですけど」 「遠慮が無いのは自覚してるよ。黙ってると何も喋ってくれないからね」 「いけません?」 「いや、人それぞれだろう」 顔を洗って立ち上がる。 「さっきの話の続きは……」 「すまんな、上せそうだ」 |
後から入って先に上がる。いつにもまして不器用なのは、自分の方かもしれない。 タオル地のバスローブを羽織り、頭をタオルで拭きながらソファに座る。 TVのニュースを見るともとも無く眺めながら、またウィスキーを割る。 少々飲み過ぎだが、不思議と心地好い酔いだ。 「パジャマ、良いんですか?」 「ん? 他にも有るよ。汗かきそうだから、この格好の方が落ち着く」 遅れて風呂から上がった彼の手足に、サイズの合わない濃紺のシルクのパジャマが、アンバランスにまとわり付いていた。 そう言えばアスカの時も、細すぎる手足に戸惑った。 それと同じか……それとも。 「喉が渇いたろ。飲めよ」 「良いんですか?」 「薄く作ったよ。泣きたい時は、泣いた方が良いのかも知れん」 「そう……見えますか」 「どう見れば良いのかな?」 濃密な、落ち着いた時間が流れていると感じる。 家族ごっこも、ここまで距離が縮まれば成功かもしれない。 「加持さんの、家族って」 「弟が居たよ。親父も居たし母親も居た。みんな、好きだった」 「今……は?」 「居ない……セカンドインパクトで両親は死んだ。弟は、その後の混乱期に亡くした。俺が殺したようなもんさ。守ってやれなかった」 「……そうなんですか」 「ずいぶん後になって、遠縁の親戚が引き取ってくれた。二年かかったかな、親類を見付けるまでに」 「それまでは?」 「はじめは施設に居た。だが、刑務所並みに自由が無い。弟と仲間を連れて逃げ出した。食い詰めたが、施設に帰るよりは良いと思った。誰も、助けちゃくれない……自分達で生きていく為に、良くない事もした」 「良くない事?」 「泥棒さ。生きてく為に……てのは、言い訳だな。だれもが必死で、自分で自分を守るのが精一杯だった」 「その頃の事は、小さすぎて覚えてません」 「だろうね。でもそれが俺の青春時代さ。一人、また一人と、仲間を失った。それでも俺は死ななかったが」 グラスを空けるたび、言葉が途切れる。 恐ろしく間延びした会話だったが、彼はちゃんと耳を傾けて聞いていた。 「気が付けば、自分自身も失ってたんだな」 「どういう意味です?」 「ただ、生き延びたのさ。生きる為にじゃない、死ぬのが怖かっただけ」 グラスを重ね、また煙草に火を付ける。 ピッチが早すぎるのは自覚していたし、未成年の彼にも酒を飲ませすぎている。 だが、アルコールが無ければ、昔の話は出て来ない。思い出すだけで、身を切られるような記憶。 「……気が付けば、一人になっていた。兄弟を守る事も、仲間を励ます事も出来なかった。俺は人より目端が利いて、臆病で、逃げ足が速くて、騙されなかった。ただそれだけ」 「だから、もう死ぬのが怖くないんですか?」 「違うね……それは違う」 ウィスキーのボトルが空になる。 炭酸も切れた。 「死ぬのが怖く無くなったのは、いつからかな」 最後に作った一杯は、ほとんどストレートのウィスキーに氷を入れただけ。 「もう、死んでも構わないと思うようになったからだ」 そう呟いて、最後の杯を空ける。 葛城にも言わなかった自分自身の真実を、初めて他人に打ち明けたのだと気付いたのは、彼の長い沈黙に目を上げてからだった。 「どうした? そんなに意外かい?」 彼はただ黙って、口を結んで、ポロポロと涙を零し始める。 泣き上戸、だけでも無い。少々景気の悪い身の上話を悔やんだが、嘘は言ってない。 「俺はもう、死ぬ準備は出来ている」 「そんな事言わないで下さいよ、加持さん」 「死ぬのが怖いから、エヴァに乗るのも怖い……シンジ君、それは違う」 「何が違うんです?」 「君がエヴァに乗って戦う事が、君自身も生き延びる一番の近道だ。違うかい?」 長いソファの斜向かいに座っていたが、何時の間にか隣りに並んでいた。 ほとんどグラスに伏せてしまいそうな、彼の肩を抱く。 「死ぬのが怖いから戦う。無我夢中で……今は、それで良い」 「一度に、色々言わないで下さい……良く分かりません」 「同じ事を言ってるんだよ。俺は臆病だから生き延びた。死ぬのが怖いから、逃げ続けたから生き延びた。だからシンジ君に、強くなって使徒との戦いに立ち向かえと言える立場じゃない」 うなだれる彼の頭に手を置く。 濡れた髪は細く柔らかく、指に絡んだ。 「今は弱くて良いし、怖くて良いんだ」 「誰も、そんな事は言ってくれませんでした」 「そうだろうな。皆死ぬのが怖いんだ。だから君らに無理難題を押し付けてる」 「ただ、エヴァに乗れって。使徒を倒せって」 「辛かった?」 「逃げちゃ駄目だって、それだけでした」 頬を濡らした彼の肩を引き寄せると、潰れるように身を預けてきた。 飲み過ぎたし、何より時間が遅い。 酔いつぶれて寝てしまうなら、その方が良いかとも思ったが……その頃には、もう“任務”は関係が無くなっていた。 「それでも俺は、シンジ君に憧れるよ……君には世界を救う手立てが有る」 「僕は……違いますよ……そんなんじゃ有りません」 涙に濡れた唇に触れた。 もたれかかった顔を上げて、眠そうな目で見上げる。 「君なら救えるさ」 唇を重ねた瞬間には身を固くしたが、怖れていたように、逃げ出したりはしなかった。 ゆっくりと離れると、近すぎた視線が再び絡む。 「加持さん……そういう趣味が有るんですか?」 「いや……無い。無いと思ってたんだがな……だから自分でもどうすれば良いか、正直、戸惑ってる」 「僕は……僕は……加持さんとなら」 「おかしいな……二人とも」 「酔ってるんですよ。だから忘れます……そういう事にすれば」 |
横抱きに抱え上げて、寝室に運ぶ。 寝惚けた子供のように、大人しくただ身を丸めて運ばれる。 ベッドのカバーを蹴り上げて、そっと横たえる。 ダブルベッドに、身を縮める彼の身体は尚更細く思えた。 「なるほどね……予感が有った?」 「いえ……そうなれば良いなって、思った事なら有るかも知れません」 「そうか。少し、意外だな」 「そうですか?」 「ああ。俺よりシンジ君の方が、よほど覚悟が出来てるようにも見えるよ」 「ずっと誰かに、優しくしてもらいたかった……ちゃんと僕の事を分かってくれる、誰かに」 「俺は、シンジ君の事を分かってると言えるかい?」 「今はまだ、分かりません。でも……きっと……加持さんならって、思います」 「そうか……」 ゆっくりと唇を重ねた。 ようやく、キスを味わうだけの余裕が出来た。 まるで初めて女の子と付き合う時のような、ゾクゾクするような興奮を覚える。 唇は、柔らかい。 恐らく、今まで知る誰よりも。 「初めてだったら、何か悪い気がするな」 「キスですか?」 「ああ」 唇が耳に触れる程に抱き寄せて、囁き合う。 ゆっくりと、手がボタンを探る。 「有りましたけど、別に、楽しくなかったですよ」 「誰と?」 「……アスカです」 「そうか」 アスカの言う通りだとすれば、多分それが、遊びのキスか。 「目は……瞑った方が良いな」 「どうして?」 「何故かな……こんな近くで見詰められてると思うと、落ち着かない」 額に手を当てて、前髪をかき上げる。 丸く形の良い頭に、細い眉に、細い顎。 女顔だと言えば、女顔だろう。 けれど、彼が中性的だから惹かれるという訳では無かった。 恐らくそれは、彼が、碇シンジだから。 |
「ん……」 額を擦り合わせるように顔を近づける。 鼻先で触れ合ってようやく、目を伏せてくれた。 長い睫毛にまだ涙が残る。 左手で身体を抱いて、右手で頬に触れる。 啄ばむように、細い眉の間と、長い睫毛と瞼に、唇を落とす。 「くすぐったいです」 「そうかい……もう、言葉は要らないよ」 部屋の灯かりを落とす。 普段なら絶対に明るいままするのだが、今日は違った。 天井の蛍光灯が消え、調光された間接光の柔らかなオレンジだけが残った。 「何をされるか、怖がってるから目が瞑れない。違うかい?」 「多分」 「でも、肌を触れ合わせる時は、目で見て安心するより、じっと触れ合う温かさに集中した方が良い。出来るかい?」 「あ……あの」 「なに?」 「驚かせないで、下さい。少しづつなら、多分平気です」 「分かってる。ちゃんと、優しくするよ」 言葉を交わす間に、ボタンは全て解いていた。 薄い胸板に手の平を滑らせる。 張り詰めた肌以外、そこに何も無いというのが新鮮だ。 僅かに早く上下する胸に、固く小さな突起。 男の胸でも感じるのかどうか、試すのも始めてだ。 ゆっくりと、胸元にも口付ける。酔っているのか火照っているのか、肌が熱い。 「んっ」 彼の手が、俺の背中に回った。 バスローブの中へ伸びて、手の平で押し包むように。 「脱いだ方が良い?」 「はい」 黙って、素早く袖を抜く。 裸の胸を合わせて、互いの手を背中に回す。 「あっ……温かい」 人と肌を重ねるのが初めてなら、今何を感じているのだろう? 初めて女の子に触れた時の事を、詳細に思い出すのも難しい。 いや、彼の立場はそれとは違うのか。 「細いな。腕に収まる」 「凄く……安心する」 ぎゅっときつく、腕に力を込める。 薄い筋肉の向こうで、肋骨が軋むのさえ分かりそうだった。 「あっ……はぁ」 吐息が熱く、耳に掛かる。 絡めた足の間に、熱いモノが張り詰めているのが分かった。 「どうしたら、良いんです? どうしたら……」 「俺にも良く分からん……女の子にするのと同じように、すれば良いのか?」 溜め息が漏れた。 もどかしさと、切なさと。 「好きにして下さい」 たとえ抱かれたいと思っていても、その身体は男のモノだ。それがもどかしいのか、それとも、煮え切らない俺の慎重さが堪らないのか。 “そうなれば良いなと、思った事なら……” その時、彼が何を望んでいたのか。 「触るよ」 重ねた身体を半分だけ起こして、下着の中へと手を伸ばす。 「うっ」 ピクンと跳ねるように動いた。 自分のモノなら扱う事には慣れているが、人のモノに触れるのはもちろん始めてだ。 恐る恐る、そっと包むように握る。 血が集まった熱さと、張り詰めた滾りを手の中に感じる。 長さの違いより、太さの違いの方が良く分かる。 一回り以上細い。 「痛くしたくないから。キツかったら言えよ」 「はっ……ん」 耐えるようにぐっと力を込めた眉根は、男も女も変わらない。 表情を伺いながら、ゆっくりと手を動かす。 その腕ごとしがみ付かれた。 「だ、だめっ」 「どうした?」 「すぐ、汚しちゃいそうで」 「ん……そうか」 何も、慌てる事は無いなと思い直し、薄い布団を跳ねる。 重ねた肌の熱さに汗が吹きそうだった。 手を抜いて、彼の身体も裸にした。 腰も薄いし、足も細い。 その股間に、手を離しても震えるように突き立っている。 「あ……」 恥ずかしい、と口は動いたが言葉にはならなかった。 手で身体を庇い、足を閉じ身を捩ろうとする両手を押さえつける。 当然、自分も手が塞がる。 そのまま身体を重ねて、唇を合わせる。 啄ばむように大人しいキスから、閉じた歯列の隙間を舌先で探る。 尖った前歯の間から、おずおずと彼の舌先が触れた。 その瞬間を逃さずに口の中へと分け入る。 僅かに身を固くした彼の項を後ろから撫で上げる。 柔らかな髪に指を絡ませて、逃げようとする動きを封じて吸い上げる。 「んっ……ふっ」 ようやく舌が絡む。 力が抜けて、顎が上がる 口腔を探り合うにつれ、唾液が混じる。 たっぷり舐め合って、ゆっくりと口を離した。 「はぁ……」 溜め息と共に、瞼が開く。 濡れたように艶やかな、黒い瞳が揺れた。 「欲しいな。全部欲しい」 その問い掛けに、返事は無かった。 ただ解けた手が背中に回り、ぎゅっと身体を寄せてきた。 それが、答え。 重ね合わせた身体をずらして、徐々に下がっていく。 胸元に唇を這わせ、固く尖った突起を口に含む。押し殺した息の下で、背中が反る。 手を離して、細い腰に腕を回す。自分の胸と彼の腹の間で、熱いモノが一層固くなった。 ぎゅっと抱きしめながら、胸全体に舌を這わせる。 薄く滑らかな肌だった。 ピンと張り詰めて隙が無い。触れればしっとりとまとわり付く女の肌とは違う。 爪を立てれば破れてしまいそうなそれは、むしろずっと繊細に思える。 「あっ……ああ」 小さく固いピンクの乳首に、痕が付く程にきつく口付けると、初めて声が漏れた。 少し裏返ったような、掠れた喉から漏れる艶声に、俺の血も滾る。 引き締まったウェストを左腕で掴んだまま、右手で太股の後ろを撫でる。 腰の下から足の後ろにかけて、大きく手の平で包むように滑らかな弾力を感じる。 腰が浮いて、胸元に固いモノを押しつけられた。恐らく意識しての動きでは無い。身体が無意識に悦楽を求めていた。 目の前に付きつけられたそれに、初めて口付けた。 「あっ……んっ」 口に含むのも苦にならないサイズ。 半分ほど口に含んだまま、根元に手を添える。 自分ならどうされた時に感じるだろうかと考え、先端の裏側から包むように舌でなぞり上げる。 「あっ…はっ」 背筋が一層反り上がり、腰が震える。 指で掴んだ根元をきつく締め上げながら、ゆっくりとしごき上げる。 強制的な悦楽に耐える痙攣したような細かな震えが、徐々にうねりのようなリズムに変わる。 「だっ…ダメ……うっ」 細い指が俺の髪を掴む。 イキそうな高まりを感じて、ぎゅっと手に力を込めて、口を離した。 直立した彼のモノが大きく揺れ動く。 今にも弾ける予感を秘めたまま、頂点に達する寸前で止めた。 「もう……出ちゃう」 「もっと声が聞きたいな。ダメかい」 「ああっ」 根元を戒めたまま、再び先端に口を付ける。 今度は手は動かさない。 唇と舌先だけで、滑らかに張り詰めた先端を弄ぶ。 「んあっ……はぁっ」 軛から逃れ、悦楽に弾けようと腰が揺れる。 しかし、きつく締め付けたまま手は動かさない。 そのまま何度も口に含んだモノを吸い上げる。 唾液が零れ、口を動かすたびに湿った音が漏れる。 「あぁっ…はあっ…あっ…いやっ」 押し包まれる快感に、早くイキたくて堪らない。 しかしそれを許さない執拗な愛撫。 嬌声に鳴咽が混じる。 「はあっ…もうっ…許してっ」 懇願にも耳を貸さず、何度も繰り返して細いモノを口の中に出し入れする。 それは何度も膨れ上がり、のた打つ様に痙攣を繰り返していた。 しかし迸るべきモノを留め置かれて、絶頂に張り詰めたまま何度も快楽の高みに引き上げられる。 「いやっ…いやっ…もうっ…あああっ」 むせび泣く声を心ゆくまで堪能して、ようやく戒めた指を解いた。 「はあっ…あうっ」 ひときわ大きく、弾けるように揺れたモノの先端から、燃えるように熱い滾りが迸る。 二度三度と繰り返し何度も弾け、そのたびに口の中へ溢れてくる。 「あぁ…はあ…はうぅ」 ようやく奔流が収まった頃には、彼の息は速く、物を言う余裕も無くしていた。 俺はゆっくりと責苛から解放されたモノから口を離し、ベッドサイドに隠した小さなガラスの小瓶へと中身を移す。 サードチルドレンのDNA採取。 それも、取得の簡単な体細胞の断片ではなく、減数分裂が可能な完全な生殖細胞が必要だというのが、与えられた任務だった。 |
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制作・著作 「よごれに」けんけんZ 返信の要らないメールはこちらへken-kenz@kk.iij4u.or.jp レスポンス有った方が良い場合はくりゲストブックまで。 |