甘く囁く声を思い出してみる。

切ないまでの甘い声。
柔らかい声に僕は涙ぐむ。

「愛してる」

その言葉が今も僕の胸に突き刺さったまま、しこりと化しつつある。
忘れたくても、忘れられない、僕の中に残っている残酷で、甘酸っぱい言葉。

「愛してる」

もう誰も僕に囁いてくれない。

誰もいなくなった世界。

たった1人のイヴと、たった1人のアダムは決して手も触れない。
肌と肌を合わせない、アダムとイヴなんて、なんて滑稽だろう。
僕は聖書を一度も読んだことないけど、これだけは知ってる。


《アダムとイヴは禁断の果実によって、肌と肌を合わす、関係に落ちた》


決して心を開かないイヴに、僕は何と声を掛けたら良い?

もうこの世界は居ない、僕が求めるイヴは目を見開いた石像と化し、僕に何も語り掛けようとしない。
赤い瞳はくすんで茶色に変化して、半開きの口からは水が滴り落ちている。
LCLの海は今も血と磯の香りを浜辺に運んでくる。
鉄分を含んだ血に清められた世界にたった2人の人間。


惣流・アスカ・ラングレーと呼ばれていた少女、「イヴ」。

碇シンジと呼ばれていた僕、「アダム」。


僕を嘲笑い、蔑みの眼差しをくれるイヴは、赤い服を脱ぎ、裸のままでLCLの海で戯れている。

ぐちゃぐちゃに血に塗れ、骨が2つに裂かれた右腕に僕が処置した包帯はもう解かれている。
生々しい傷痕、2度と動かない右腕、垂れたままの右腕。
濡れた金色の髪はイヴの肌に張り付いている。
けど、イヴはそんなことなどお構いなしに、波と戯れている。

彼女の弾む乳房に、もう僕は欲情などしない。

嘲笑う、イヴ。

蔑む、アダム。

これからもそうなのだろう。
いつまでも、平行線のままだろう。


僕はそれでもイヴと僕のために食べられる物を探しに、方々を歩き回る。

腐った魚も肉も食わないよりはマシだ。
狩りとはいえない、でも、買い物ともいえない。
誰もいなくなった世界に2人だけなんて、寂しい。

でも、これは僕が望んだ、結果なのだ。


ふと、空を仰ぐと見えた山。

人の顔の半分が小高い山となり、潮の運ぶ塩分と血で半ば顔は顔でなくなっていた。

石像の山。
僕が好きだった綾波レイの顔をした怪物の残骸。
石像の綾波レイ。

僕の求めた「イヴ」の顔。綾波レイの顔。


「愛してる」


求めるイヴの囁きが、僕の脳裏でリフレインする。
甘く切ない声に僕は思わず涙ぐむ。
2度と肉声で聞けない、囁き。
もう決して逢えない、僕の求めるイヴの素肌。

透きとおった、青白い肌に絡む、艶めく匂いを放つ彼女の蜜の味は、僕の思考を麻痺させた。
何度、その蜜の零れる神秘のそれに僕は顔を埋めただろう。
恥じらいながらも僕を受け入れた、彼女の秘所は僕を幾度、開放させただろう。


「碇君、だから」


僕の父さんだった人とも肌を合わす関係だった彼女の肌は、僕にためらいの余地を与えない。
その一言に、僕は騙されてしまう。
同い年とは思えない程、成熟した裸体は、僕の興味を引きつけて放さない。
彼女の細い指がもう1人の僕に絡んだ時の、あの喜びを2度と味わえない悲しみ。
僕を口に含む、彼女の艶めかしい顔を2度と見ることはない。
柔らかい乳房を両手で掴んだ感触をもう再現できない。
全ては僕の記憶の中、僕の肌に残ったそれを思い出すしかない。

悲しい僕の初めての恋。

異性を掻き毟るほどに感じた、たったひとときの、出来事。
2度と戻らない、あの日。


綾波の肌。

アスカの声。

ミサトさんの唇。

父さんの顔。

みんなの笑顔。

みんなの声。

全部、全部、消えた。

みんなLCLに溶けて、消えた。

もう、帰ってこない。

もう逢えない。

・・・・・・・・・・・・・・・・・永遠に戻らない、2015年の「あの日」。









NEON GENESIS EVANGELION
ORIGINAL EROTIC NOVEL

甘く       
囁く       
声を       
思い出すは、

〜ANOTHER ADAM AND EVE〜


NOVEL by YOSHIKAZU YAMATO










アスカは相変わらず無口で僕が取ってきた食べ物を、一言の礼もなく僕の手から取ると、それをお
もむろに口に含んだ。

今日の僕の『戦利品』。

・ 2015/2/27が賞味期限のパイナップルの缶詰2つ。
・ 薫製されたハム1つ。
・ 未開封のマルボロライトメンソール1カートン。
・ 缶コーヒー1ダース。
・ 食べれそうな草花を3掴み。

草花を嫌そうに食べるアスカは、僕に「何でこんなものしかないのよ」と言いたげな眼差しをくれ
ながらも、口をもぐもぐ動かして、次に食べる草花を口元に運んでいた。

「アスカ、もっとゆっくり食べなきゃ」

僕の注意もアスカの耳には入っていない。
彼女の耳にはもう音は聞こえない。
右腕も使えない。耳も聞こえない、言葉も発せない。
エヴァ量産機達の陵辱のせいで、彼女は多くのものを1度に失った。
声を失い、右腕を失い、言葉を失い、ママを失い、弐号機を失い。

最後に僕にくれた言葉は、
「きもち悪い」の1言だけ。

その後、アスカが声を発したことは1度も無い。
あの憎まれ口はもう聞けない。
彼女は伝えたいことを伝えるのは元々苦手だった。
それは僕も同様だけど、ぼくにはまだ声がある。
アスカには無い。
文字と言う手段もあるけれど、アスカは心を閉ざしたまま、僕に接触を試みない。
もう、アスカはアスカの世界に行ってしまったのだろうか。
でも僕はそんなアスカを放っておくのが嫌だから、今日も戦利品を求めて、方々を歩く。



綾波と初めて肌を合わせたのは、ヤシマ作戦が成功してから数日後だった。

場所は、綾波の住んでいた廃屋マンション群の1室。
無機質な綾波の部屋からは、女の匂いは全くしない。
でも、綾波から匂う女の匂いは本物の女の匂いだ。
ミサトさんから漂った匂いとは全く違う、女の匂い。
どちらからと言うのではなく、自然とそういう流れに運んだから、そうなったというべきか。

唇に触れるほどのキスをして、今度は舌を絡めるキスをした。
不器用な僕のキスを綾波は旨く受けてくれた。
お互いに服を脱がしあい、綾波はベッドに腰掛けるように座った。
僕は彼女の前に膝をついて座り、両手で彼女の細く括れた腰を抱き寄せた。
彼女の体はベッドと僕の体で支える、不安定な格好になる。

「碇君…」

綾波は僕をベッドの上に促す。
そのまま僕と綾波はベッドの上で互いに向いて座った。
靴下とパンツを付けたままの綾波。
何も付けてない僕。

「私だけ不自然」

綾波がそう言う。

「脱がしてもいいの?」

僕はちょっと意地悪ぽく聞く。

「…いい」

綾波は俯き加減に答える。
僕は綾波のパンツに手をかける。

「いいの?」

もう1度、聞く。
綾波は頷いて「いい」と答えた。
綾波のパンツを膝まで下げた時、僕は彼女の顔を見た。
頬を赤らめて、僕の視線をわざと反らす彼女の顔が愛しい。

「全部、脱がせて」

綾波は僕に訴える。

「中途半端は嫌なの」

「でも、この方がイイよ」

「嫌…」

僕は彼女の閉じている両足の付け根の間に右手を差し込む。
指で太股をかき分けながら、目指すべきところに到達するのを感じた。
柔らかいあの部分を僕は見たくて、左手でパンツを脱がし、その手で綾波の右足を左足から裂いた。

「あっ」

綾波は小さく叫んだ。
裂かれた谷間には僕の右手が彼女の秘所を覆っている。
僕はふと、彼女を焦らしたくて、覆った右手の指でで彼女の秘所を弄んだ。
綾波は恥じらう顔を僕に見せたくないのか、顔を反らしたままだが、感じてしまうのを堪えている
表情はありありと伺える。
秘所からちろちろと液が溢れ出した。液は僕の指に次第に絡み付く。
親指で彼女の豆を、人差し指と中指で彼女の中を弄ぶ。

「あ、あっ…」

口から思わず零れる綾波の吐息が、僕の分身にダイレクトに響く。

「あ、あっ、あっ…」

綾波は弄ばれる自分の秘所から感じる快感に、身を捩って答える。

「ああっ、あっ、碇…くん…」

綾波は自分の両手で自身の乳房を掴み、自分で乳房を揉みしだく。

「あ、ああ、ああっ…」

綾波の喘ぐ声に、僕は完全に勃起した。

「なあ、綾波」

僕は快感の絶頂に居そうな彼女に尋ねた。

「父さんとも、こういうことしたんだろ?」

綾波はその一言に水を注されたのか、吐き捨てるように答える。

「そんなこと、聞かないで」

「やっぱり、してるんだ」

僕はそう答えてみた。

「なんで…」

「『否定することは肯定することだ』って、リツコさんが言ってた」

「・・・・・・・・・・・・・」

綾波は何も言わない。

「別に僕は構わないんだ。綾波が誰と何をしていようと」

「・・・・・・・・・・・・・」

「でも、父さんとしていることだけが許せないだけだから」

つい、本音が出てしまう。

「碇君…?」

「父さんは、こんなこと、した?」

そう綾波に尋ねてから、僕は右手の人差し指と中指を抜いて、僕の口を彼女の秘所にあてがった。

「あっ!」

唇の感触に感じたのか、綾波は声を上げた。

ぐちょぐちょに濡れたままの人差し指と中指で豆を苛めながら、舌で秘所の入口を舐める。
そういう内容の本を何冊もトウジから借りて、頭の中では学習済みだったから、そのとおりにやっ
てみた。
すると、綾波は見事に僕のそれに答えた。
秘所から溢れる液は洪水のように僕の口の中に押し寄せてきた。
僕は口の中に含んだ綾波の愛液を飲んだ。
初めて僕は女性の愛液を飲む。甘くて、不思議な味。
何度も飲みたい味。
僕は貪るように綾波の愛液を飲んだ。
でも飲んでも飲んでもまだまだ溢れ零れ出る綾波の愛液。
僕は右手に愛液を掬った。

「綾波、見てよ」

綾波は僕の声に反応して、顔を僕の方に向けた。
僕はヌメヌメした右手に掬った綾波の愛液をすっと口に運んで、飲んだ。

「あっ…」

綾波は羞恥と快感が入り交じった表情をしつつも、僕の視線から顔を反らした。

「おいしかったよ」

そう言う僕に綾波はいやいやと頭を横に振って、両手で顔を覆った。
しばらく綾波はそのままじっとしていた。
微かに聞こえる彼女の吐息。
ふと、僕は自分の分身に視線を落とした。
さっき、勃起した分身は自身で果てて、既に萎えていた。

「碇君…」

顔を覆った綾波が僕に聞く。

「今度は私がしてもいい?」

「何を?」

僕は意地悪に聞く。

「碇君が私にしたこと」

「いいよ」

僕がそう答えるや、綾波はわっと起き上がり、僕を倒した。
そして僕の分身を綾波は両手で包むように掴んだ。
彼女の瞳は僕の分身を見つめているのか、青い髪の毛で彼女の表情が見えない。
彼女は呟くように僕に言う。

「碇司令がしたことを、碇君にしてあげる」

綾波はそう言い、僕の分身を口に含んだ。

「あ!」

思わず僕は声を上げてしまった。
綾波の舌が僕の分身をねっとりした唾液と一緒に絡み付く。綾波の柔らかい唇が敏感が僕の分身の
皮膚を摩る。
ゆっくりと綾波の頭は上下運動を始める。
口の上下運動のせいで分身はだんだん大きくなっていく。
綾波の唾液が滴になって幾筋も滴り落ちる。

「う、うっ」

綾波のうめき声で僕の分身は更に大きくなる。

「うっ」

綾波は両手を僕の分身の傍らの袋に触れると、それをさっき僕に見せた自分の乳房を揉みしだく動
きで、僕の袋を揉みしだき出した。
僕は今までこんな風にされたことがなく、思わず嬉しさの余りに涙が溢れた。

「あっ…」

思わず女の子の喘ぎ声みたいな声を上げてしまった。

「気持ち良い…」

もう気持ち良くて、僕の頭は半ば理性を失っている。

「綾波…、気持ち良い…」

「うっ、うっ、ふっ、うっ…」

綾波はうめき声を上げながら、左手を僕の袋から離した。
僕は「えっ?」と思った刹那、綾波は口に僕の分身を咥えたまま、体を180度回転させて、僕の
顔の前に自分の濡れ滴ったままの秘所を持って来た。
濡れている彼女の秘所は、ジュクジュクした桃のようになっている。
それがとても美味しそうに見えて、僕は空いていた両手を彼女の小さく丸い尻を撫でながら、秘所
に口を持って行った。
ズルズルとはしたない音を立てて、彼女の愛液を飲む僕の行為に、彼女はうめき声を上げて悦ぶ。
綾波は僕の行為に応えるように、口の上下運動を更に激しくする。

「う、はあ、あ、ああっ、」

僕は気持ちよさに声を上げてしまう。
そして、僕は絶頂の時を迎えた。
綾波の口の中で射精したその後、僕は、意識を失った。



相変わらず、アスカは1人で遊ぶ。
僕には殆ど目もくれず、1人、波と戯れ、砂に戯れて遊んでいる。

「アスカ、あぶないよ」

その僕の注意は、彼女の耳には届かない。
砂遊びに興じるアスカ。
裸のアスカに僕は何も感じない。
僕はそんなアスカをそこに置いて、今日の食べるべき物を探しに出かけた。

世界の殆どはきっと、綾波やカヲル君と同化したアダムの体液を浴びているのだろう。
赤い色が遥か向こうまで続く。
ヒトは全ていなくなった。けど、ヒトでないものは生き残った。
草花や動物、モノ、ヒトだけが消えたんだ。
生き残ったのは僕と、弐号機のエントリープラグの中で瀕死だったアスカだけ。
みんな、溶けてしまった。
綾波に誰を投影して溶けたんだろう。
もし、僕が溶けたとしたら、僕は誰を投影しただろう…?
2人目の綾波?
それとも、ミサトさん?
・・・・・・いや、アスカだっただろうか。
今の僕には分からない。


誰?

ファースト?

何?

私をめちゃめちゃにしておいて、今更、何よ?

え……?

……やめて!

嫌っ!

恐い!

やめて! やめて!

嫌、いやあああああああっっっ!!!!!!!!


アスカの声?
僕は両手にたくさん持っていた、1つずつラップに包まれたトウモロコシを投げ出して、砂浜へ走っ
た。

「アスカ、待ってろ。アスカ、待ってろ、アスカ…」

僕はアスカの名前を何度も繰り返していた。
彼女に何かあったら大変だ。
僕は全力で走った。

(彼女に何もおきて欲しくない。)
(もうそっとしてあげてくれ!)
(傍で見ていて、彼女がカワイソウなんだよ!)
(だから、僕は彼女にできる限りのことを尽くしてるんだよ!)
(心を壊されて、体を壊されて、あと、何が残ってんだよ!)
(アスカ、僕が行くまで、頑張って!)
(僕がそばに居るから、僕がこれからもアスカの傍にいるから!)
(アスカ、アスカ!)

『あなたが大事に思うのは誰?』

(えっ?)

『あなたが大事にしたいのは誰?』

(大事にしたい人?)

『あなたが愛している人』

(誰、って。そう唐突に言われても)

『誰なのか、はっきり分かっていないのね』

(そんなこと、急に聞かれても)

『それはあなたの言い訳』

(僕は…)

『綾波レイはどうなの?』

(綾波は大切さ。何も普段は喋らなかったけど、僕に大切なことをたくさん教えてくれた)

『惣流・アスカ・ラングレーはどうなの?』

(アスカは自分を表現するのが下手で、人を傷付ける言葉しか言えないけど、でも、大切な人だ)

『葛城ミサトはどうなの?』

(ミサトさんは、僕に初めて人間として接してくれた人。大切に決まってるさ!)

『じゃあ、誰が大事なの?』

(みんな大切さ、それに、大事だよ!)

『でも、みんな死んだわ。大事な人、みんな、死んだわ』

(アスカは生きてる! 僕とたった2人の生き残りだ!)

『今のアスカは死んでいる。あなたが殺しているようなもの』

(えっ…・?)

『アスカは生きたいって、言ってる。あなたと生きたいって』


誰かが僕に問い掛けていた。
僕は夢中で走りながら、夢中でその声に叫んでいた。
アスカが僕と生きたい?
僕が、アスカを殺している?
どういうことだ?


砂浜に戻ると、アスカが砂の城の前にしゃがんでいた。
よく見ると、アスカが貝殻で左手の人差し指を切っていた。

「アスカ!」

僕はアスカの傍に駆け寄った。

「大丈夫、アスカ?」

アスカは切ったところが痛いのだろう、涙を浮かべていた。
白いアスカの指先から鮮血がぽたぽたと滴になって、砂浜に血の跡を残す。
僕がアスカの指に触ろうとした時、アスカは僕の差出した手を拒絶した。
アスカは僕の前に立ち上がり、切った指先を差出した。
僕を見据えるアスカ。
どうすればいいか分からない、僕。
立ちつくすままの僕の口に指を差し込んだアスカ。
指を差し込まれてもどうしたらいいか分からない僕。
そんな僕を睨むアスカ。

「舐めてよ」

ふと、僕はアスカの声が聞こえた。
アスカの手を両手で掴んでアスカの指を口から出してから、僕はアスカに話し掛けた。

「アスカ?」

僕の問いかけにアスカは何の反応も見せない。

「今、僕に『舐めて』って言った?」

僕はもう1度アスカに問い掛ける。
しかし、アスカは何の反応も見せなかった。
でも、僕は確かにアスカの声を聞いた。
『舐めてよ』って、そう聞こえたんだ。
僕は、その声の通りにアスカが切った指先の傷口を丹念に舐めた。
アスカの血と僕の唾液がアスカの細い指に絡む。
次第に僕は傷口から、口に含んだアスカの指全部を、その隣の指を、アスカの手を舐めた。
アスカの皮膚から感じるのは綾波レイの、肉。
僕はアスカの皮膚を通して、綾波との情事の記憶を蘇らせてゆく。アスカの手から腕を伝い、首筋
に向い、アスカの唇の傍まで僕は舐めた。
ふと、僕とアスカの目が合った。
僕は信じられなかった。
僕が今し方舐めていたのはアスカだったのに、今、僕と目が合ったのは綾波レイだったのだ。

「綾波!?」

僕は本当に驚いてしまった。
裸の綾波レイ。
僕が貪るように求めた綾波の裸体が目の前にある。
ただ、アルカイックスマイルのまま、綾波は僕を見つめていた。

「綾波…」

「・・・・・・・・・・・・・」

綾波は何も言わず、僕の来ている服のボタンを外し、ズボンを脱がせ、僕を裸にした。

「綾波…」

僕は綾波にキスをして、綾波と砂浜の上に寝転んだ。
あの時の、ベッドの上に横たわった彼女と、全く同じの彼女だ。
僕が彼女に覆い被さるような体勢になり、もう1度、今度は互いの舌を絡ませたキスをする。
リフレインを繰り返しキスをする僕に綾波も求める。
彼女は僕の頭を撫で、僕は彼女の胸と腰を撫で合う。
先に根負けしたのは僕で、僕は彼女の唇を下に伝い、首筋を通って、彼女の左の乳首を口に含んで
吸った。右の乳房は左手で触れ、掌に収める。
そして僕は唇を彼女の秘所に運ぶ。
彼女の秘所を舐め上げる間に自分の分身も自我を目覚めさせ、隆起し出す。
綾波は恥らいに顔を赤らめるが、声はどういう訳か上げない。
僕は不思議に思いながらも自分の分身の言うがままに、彼女の秘所に深く沈める。
綾波の愛液が絡み付く分身を彼女の秘所の中で前後に動かす。
始めはゆっくりと。
綾波は僕の体に両手を回し、僕の動きに合わせて腰を動かす。
少し少しリズムを取って。
僕は綾波の唇に軽くキスをし、首筋を愛撫する。
綾波は僕の背中を優しく撫でてくれる。
だんだん小刻みに。
僕も綾波もだんだん声を弾ませてきた。
互いに互いの吐息でそそられる。
僕は前に前に腰を突き出す。
綾波は激しく腰を動かす。
もう僕は限界だ。
綾波を見た。
いってしまう直前の恍惚に満ちた表情。
僕は思い切り彼女の中に放出した。
たくさんの自分の化身を彼女の中に散らした。
綾波も顔を両腕で覆っていた。彼女もいったのだろう。
僕は彼女の体を満遍無く撫でて、キスして、互いの体の火照りを癒した。
しかし、綾波はその間、決して、1言も言葉を発していなかった。


モウ、ワスレテ。

ワタシ ノ コト ハ ワスレテ。

ワタシ ハ アナタニ ニアウ ソンザイ ジャナイ。

アナタ ニ ハ フサワシイ ヒト ガ イル。

ワタシ ノ コト ハ ワスレテ。

アナタ ト イッショ ニ イタ ジカン ガ、

エイエン ダ ト オモッテ イタ ケド、

ソレ ハ セツナ ノ トキ。

「エイエン」 ナンテ コトバ ハ ウソ。

ダカラ、ワタシ ノ マエ カラ アナタ ハ キエタ ノ ヨ。

イマサラ、モドッテ キテ アノ コワレタ ジカン ノ ツヅキ ヲ スルノ?

モウ、モドレナイワ。


please,Forget it.

please,Lost it.

please,Die it.


ワタシ モ アナタ ノ コト ハ ワスレル カラ。

ダカラ ワタシ ノ コト ハ ワスレテ。

アナタ ニ ハ フサワシイ ヒト ガ ソバ ニ イル。

ソレ デ ジュウブン。

ソレ ガ イイ ノ。

ダカラ ワタシ ノ コト ハ ワスレテ。


昔、聞き続けていたミュージックカセットの中に1曲だけ、切ないナンバーがあった。
確か、「please,forget it」だった様な気がする。
凄く切なくて、悲しい気持ちの時はいつも早送りして聞いてなかった。
でも、何で、急にこの曲をおもいだしたのだろう。


しばらくして、僕は傍らに横たわっている綾波を見た。

「・・・・・!?」

綾波じゃない。
アスカが横たわっている。
僕は体を起こして辺りを見た。
どこにも綾波の姿はない。

「私じゃ、駄目なの?」

またアスカの声がする。
僕はアスカを見た。

「私じゃ、ファーストの代わりにはならなかった?」

はっきりとアスカは口を動かして喋っている。

「アスカ…?」

「シンジ、そんなにファーストのことが好きだったの?」

「アスカ…」

「な、なによ、なに涙ぐんでるのよ」

「アスカ、喋ってるよ」

「ファーストと交換条件でね」

「綾波と?」

「あんたとセックスする代わりに、声を返してって」

「えっ?」

「でも、シンジ、結構上手じゃない」

「えっ…」

「・・・・ファースト、言ってた」

「なに?」

アスカは僕の耳元で囁いた。

「甘く囁く声に耳を思い出すのは、罪。だって」

僕はふと、アスカを見た。
アスカは涙ぐんでいた。

「もう、私を1人にしないで…」

そう言い、アスカは僕にしがみついた。
僕はアスカの背中に手を回した。


僕が最後のアダム。
アスカが最後のイヴ。

今度は触れ合う肌、絡み合う唇。
永遠の融合、新たなる人類の物語。


人の存在が消えるまで、この物語に「THE END」はない。
文明が滅びようと、何があろうと。


<終>



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