釜山の温泉アニョハセヨ!


アニョハセヨ!釜山

晩秋のとある日、私は釜山行きの夜行フェリーの2等船室のざこ部屋にいた。周りで飛び交うのは韓国語、韓国語、韓国語‥‥そしてちょこっとの日本語。未到の地、韓国が急に身近に迫ってきていた。

‥‥‥遡ること4週間前、私はグレゴリ青山の「旅で会いましょう」を読んでいた。著者が船に乗ってロシアや韓国に旅するというものだが、この中に釜山の温泉が登場する。それはちょっと怪し気で、何か心惹かれるものを感じたのだった‥‥。

博多発17時のフェリー(カメリアライン)は、乗客のおよそ8割が韓国人とみられた。大きな荷物を背負ったおばさんの姿が目につく。日本と韓国を行き来しながら商品を運び商売しているのだ。このおばちゃん達のパワーにはタジタジである。大きな声で係員を押しきり、彼女達にかなう者はいない。2等船室のざこ部屋の場所とりも、手際よく要所をおさえていく。それにしてもすし詰めだ。一人あたり幅50〜60センチ程のスペース。やれやれ‥‥。

カメリアライン

出航後すぐ風呂に入り、さっぱりしたところでレストランに夕食をとりに行く。ハンバーグ、カレー、ステーキなどのメニューの中からビビンバ(韓国ではピビと発音)を注文。付け合せのキムチやカクテキをつまみながらまずビール。ッンー、旨いっ! ビビンバは銀色のボールのような器に盛られてきた。かなりのボリュームだ。これをスッカラ(柄の長いさじ)でしっかりと混ぜる。そういえばどっかの本に、ビビンバの混ぜ方が足りないとおばちゃんに怒られた‥‥と書いてあったなぁ。このスッカラがうまく使えないと、これからの釜山の滞在に困るだろう。練習、練習! よーく混ざったところで一口、うーん‥、まあまあかな。

ビビンバに味噌汁、カクテキなど

よーく混ぜて

お腹が一杯になったところで、韓国語会話の勉強をしておこう。NHKハングル講座のテキストの簡単なフレーズを繰り返す。アニョハセヨ(こんにちわ)、メクチュ チュセヨ(ビールください)、イゴン オルマエヨ(これはいくらですか?)、ジョムカッカ チュセヨ(少しまけてください)、パン イッソヨ(部屋ありますか?)‥‥‥。頭の中で繰り返すうちに、つい眠くなってきて‥‥フニャフニャフニャ‥‥。

深夜、目が覚めると船内はすでに消灯されていた。ありゃ、この揺れ方は? 船が止まっているぞ? 上着を羽織り甲板へと出てみると‥‥、街の灯りだっ! どこだ‥‥。時間はまだ2時か3時だろうか。実はもう釜山に着いていたのだ。博多と釜山は距離にして約200キロ。高速船なら3時間弱で着く近さだ。フェリーでも一晩はかからない。かといって、こんな時間では税関も開いていないので、接岸せず朝まで沖で停泊するのだ。デッキは風が冷たい。でももう少し見ていよう。夜景のその光の中に、未到の地釜山の匂いを感じられそうだから‥‥。

夜が明けると船は再びエンジンを始動し、港へ向けゆっくり航行し始めた。昨晩は灯りだけだった釜山の街がだんだん近づいてくる。つぶつぶの街並がサイコロになり、やがて建物に見えてくる。ワクワク度100%!

朝8時、予定通り上陸。税関を抜ければ晴れて自由の身! さーて、どこ行こっかなぁー。まずは荷物を何とかしよう。私は着替えやらパソコンやらの入った安カバンを、キャスターにくくりつけて旅をする。これを引きずったままではフットワークが鈍る。最寄りの地下鉄駅のコインロッカーに荷物ぶち込んで、よし行こっ!

釜山の灯り

もうすぐ上陸

私は初めての土地に着いたら、まず高いところに上ることに決めている。高い所から地理感を掴み、これから起こるであろうこの地での出来事に思いをめぐらすのだ。ということで国際フェリーターミナルからほど近い、竜頭山公園(ヨンドサンコンウォン)にたつ釜山タワーに上ってみることにした。丘の上に建っていて見晴しは抜群だ。さっき着いたばかりのフェリーターミナルが眼下に見える。あの辺が市場かなぁ、あっちの方が温泉だろうか‥‥。

釜山タワー

さっき着いたフェリーターミナル

あの辺がチャガルチ市場か


次は、市場で刺身を喰らう!

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