続・釜山の温泉アニョハセヨ!
馬金山(マクムサン)温泉
ここはどこだ?
バスは街を抜け、山あいをどんどん進む。日本の里山のようなのどかな風景が次々に後ろへ消える‥‥。20分程走るとバスが終点らしき所に着いた。他の客が全員降りるのと一緒にバスを降りる。ここはどこだ? ここが馬金山(マクムサン)温泉なのか? 辺りを見回しながら『オンチョン(温泉)』の文字を探す。これじゃない、これも違う‥‥。あった! 『オンチョン(温泉)』の文字。とうとう馬金山(マクムサン)温泉に着いたんだっ!
通りを歩き進むと温泉ホテルや旅館が現れる。宿は十数軒ほどあるだろうか。通りに並ぶ露天のパラソル。野菜や穀類、豆腐などをおばあちゃんが売っている。豆腐って韓国でも食べるんだぁ。
パラソルが連なる
豆腐と蒸しパン
豆や穀物
第一湯は個室風呂
さーてどこで温泉に入ろう? 目に着いた一軒の浴場らしき建物。100%何とかと書いてある。きっと100%天然温泉とでも書いてあるのだろう。入口の前には蛇口からはちょろちょろと湯が出しっ放しになっている。これは温泉だな。備え付けのコップで飲んでみる。香りも味もないなぁ? 建物の概観からして個室風呂のようである。ここでつかってみよう!
チャヨン温泉
100%原液温泉水・家族ルーム
「アニョハセヨ!」 奥からおばあちゃんが出てきた。「オルマエヨ(いくらですか)?」 「マンサムチョノン(13000ウォン(1300円))」 えっそんなにするの! 釜山からここまでくる往復の交通費より高いじゃん! 2時間の休憩で1300円、韓国の物価を考えるとやはり高い。しかし個室風呂がどんなものか見てみたかったのでここに決める。旅館のように廊下に並ぶ部屋。通された部屋は101号室。テレビ、扇風機、布団などが置いてある4畳程の部屋だ。オンドル部屋になっており、あったかい床が気持ちいい。奥にもうひと部屋あり、浴室になっている。何だろう、これ? 自然温泉? よく見てみると壁に掲げられていたのは社団法人韓国温泉協会の自然温泉登録証だ。
並ぶ部屋
4畳程の部屋の奥が浴室
自然温泉登録証
オンドル部屋の奥は浴室で、バスタブ、シャワーなどが備え付けてある。とりあえず蛇口をひねり、バスタブに湯を溜める。62℃の源泉はさすがに熱いので、水も加える。湯が溜まる間、テレビを見ながら布団でゴロリ。布団越しにオンドルの温もりが伝わってきて、寝てしまいそうに気持ちいい。
ぼちぼち溜まったかな? さて湯は‥‥。無色透明無味無臭、肌触りにも特徴はない。うーん、何かひとつでも特徴があればなぁ。湯舟の横のレバー、これもしかして‥‥、ザバーッ! やっぱり打たせだ。天井の突起、何か気になってたんだよね。それにしてもバスタブの真上に打たせとは。1998年にボーリングにより得た自家源泉だと壁に掲示してあったが、湯そのもののパワーはいまいち伝わってこない。ちなみに湯あみ前気持ちよくくつろいでいたオンドル床は、湯上がりには熱くてたまらない。草々に退散しよう。
温泉を溜める
ゆったりしたバスタブ
ハンドルを回すと天井から‥
概要:1998年3月1日‥‥温度62℃‥
コムタン屋の主人
昼飯は何にしよう? ぶらぶらしていてコムタンの文字が目に着いた。コムタンといえば牛骨を煮込んだ白濁スープ。これにしてみよう。
「アニョハセヨ!」 昼時をやや回っていたためか、店内は客もまばらだ。「コムタンハゴ(コムタンと)メクチュジュセヨ(ビールください)」 まずはビールで喉を潤す。ッアーッ、風呂上がりのビールは旨い! お通しのカクテキ、えびの佃煮、海苔の和え物をつまみながら、グビッグビッ‥‥。やがてコムタンスープと御飯がやってきた。コムタンスープには塩とコショウが一緒に出される。スープ自体には味付けがされていないので、自分で塩を入れて味を付けるのだ。優しくそして深い味、あっさりしていて旨味がある。ご飯をスッカラ(柄の長いさじ)でちょいとすくい、コムタンにちょっと浸して食べる。いけるいける。
この店のご主人、ぶらりと現れた日本人に相当興味があったのか、何かにつけやってきては話しかける。どっから来たんだとか、何でここへ来たんだとか、旅行かとか、これからどこへ行くんだとか‥‥。韓国語と英語ごちゃ混ぜの会話である。ここの温泉は塩化物泉なんだぞとか、ご飯のお替わりはいらないかとか‥‥。おいおい、ゆっくり食べさせてくれ。
青唐辛子、今までお通しで出てきても一度も口にしたことはなかったのだが、試しにちょっとだけかじってみるか。一番ちっちゃそうなやつを‥‥、そんなに辛くないなぁ‥‥、おやっ‥か、辛っ! 案の定ご主人、すぐに飛んできてきて、お前今唐辛子食べただろう。ちっちゃいのは辛いんだ。こっちのは辛くないぞと一番大きい唐辛子を差し出す。じゃ、試しに‥‥か、辛っ! やっぱ辛いじゃん。「メウォヨ(辛い)」 すると、いや絶対ちっちゃい方が辛いと譲らない。ま、そう言われてみればちっちゃな方がもっと辛かったような気もする。大きい方を指差して「メウォヨ(辛い)」 ちっちゃい方を指差して「アジュメウォヨ(とても辛い)」 すると、そうだろそうだろと納得したように頷いて下がっていった。ふぅ〜、疲れる。コムタンとビール、しめて8000ウォン(約800円)。ごちそうさま!
牛の絵が目印
手前のコムタン(スープ)以外はサービス
スープの中には牛肉
チョンマサン温泉ホテル
さて腹も膨れたことだし、もうひと風呂ぐらいつかっていこう。チョンマサン温泉ホテル。小綺麗で立派なホテルだ。大きなホテルに限って湯が全くダメというのが多いが、ここは見事に裏切られた。湯舟につかると、指の間に感じる塩化物泉の感触。無色透明無臭ながらしっかり存在感がある。「ハァー、チョクナーハー‥‥(はぁー、いい湯だなぁー‥‥)」と言いたいところだが、いまいちそんな雰囲気でない。みな黙々と湯につかり、ごしごしとしっかり洗っている。笑い声や話声は全くなく、ちょっと固い雰囲気だ。露天風呂があるようなのでそちらに移動してみる。雰囲気はまったくプール、湯もちょっといただけない。しかしプールサイド‥、いや露天風呂サイドのデッキチェアは、火照った体を冷ますのにいい。
チョンマサン温泉ホテル
プール‥‥ではなく露天風呂
馬金山温泉で納得の湯に出会い、充分満足した。ぼちぼち引き上げるかな。おっともう2時45分、確か釜山行きの電車は3時半頃にあったよなぁ。急がなきゃ! バス停から今にも走り出そうとするバスを制し乗り込む。昌原駅に着いたのは3時15分、電車は3時26分発だった。よかった、間に合った。すぐに切符を買う。「プサンカヂハンヂャ(釜山まで一枚)」 ムグンファ号は定刻通り駅を出発した。車窓に映る昌原の山、そして街が後方へゆっくり動き出す。少し名残惜しいが、胸の中には充分満足感を詰め込んだ。次のチャレンジに進もう。その前にせめてこの山のシルエット、目に焼きつけておこう‥‥。
これまた念願の屋台めぐり