御生掛温泉

「馬で来て、足駄で帰る、後生掛」と句に読まれるほど、後生掛温泉は名湯の誉れ高い温泉である。ちなみに先の句は、馬でなければ来ることができない程の人が、帰る時には歩いて帰れるようになる‥‥って意味ね。つまりそれだけ効くってこと!

施設は想像していたよりもずっと大きい。宿の目の前で、もうもうと立ち上る湯気にはさすがにワクワク! しかし湯につかるのはちょっと後回しにして、宿の裏手にある後生掛自然探勝路を歩いてみることにする。

後生掛温泉

『ボッコッ‥‥、ボッコッ‥‥』腹の底に響くような音。 『ジュクジュクジュクジュク』鍋の湯が残り少なくなってせわしなく沸騰しているような音。 『シューーーッ』熱い蒸気のやや金属的な音‥‥。いたるところから火傷しそうな蒸気と、100℃近くありそうな湯が噴き出し、辺り一帯には強いイオウ臭が漂う。こういうのを「たまごの腐ったような」と表現するのだろうが、私はたまごの腐った臭いを嗅いだことがない。蛇足だが、探勝路の途中の茶屋で黒たまごを売っている(もちろん食べた)。

後生掛自然探勝路

茶屋で売っていた黒たまご

後生掛温泉はリニューアルして立派な佇まいの旅館となったが、実は旅館部分よりも湯治用の施設のほうが多い。湯治という温泉のスタイルが、しっかりと認知されている辺りが、東北の温泉文化の特徴でもある。200人以上を収容するという湯治部(全5棟)は、湯治村と名付けられており、地熱で床を暖めたオンドル部屋が並んでいる。オンドル部屋はひとり一泊1800円からだ。

後生掛温泉といえば、木箱から首だけだして入る箱蒸しがよく知られているが、他にも泥風呂や神恵痛の湯など七つの湯が楽しめる。黒く輝くヒバ造りの浴室は、さながら和風クアハウスといったところ。私も箱蒸しに挑戦してみた。木箱から首が出るので、ふつうのサウナに比べて熱くはないだろう‥‥‥。あじーっ、ダメだっ! バタンッ(木箱から飛び出した音)ふ〜。1分ももたずに降参。

和風クアハウス

露天風呂


後生掛温泉を後にし、秋田側へ山を下る途中、グニャッとねじ曲げられた道路標識が‥‥。いったい誰がこんなことを? これはきっと雪の仕業なのだろう。ぐにゃぐにゃになったガードレールもあった。


これ以上の透明はないと思える程きれいな湯‥‥

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