鎌先温泉

今日の泊まりは鎌先温泉。わずか数軒の宿からなる静かな湯治場である。その中から今宵の宿に選んだのは一條旅館。大正末期に建てられた4層構造の堂々とした佇まい。経てきた年月を刻み込み、風格を備えた木造建築だ。渋いなぁ‥‥。廊下を歩けば、ガラス戸がガタガタ鳴る。在室の方の迷惑にならぬよう静かに歩く。こうして隣室や階下に気を使いながら、仲間入りさせてもらうのだ。

堂々とした佇まい

渋い

部屋は障子で廊下と隔てられた6畳程の小さな部屋だった。部屋には小さなテーブルと火鉢があった。蒸し暑いこの季節、火は入っていない。寒い季節になれば火を入れ暖をとるのだろう。鉄のやかんで茶を沸かすのもいい‥‥。

まだ夕食には早かったので、さっき仕入れたばかりのあずまみねを豆腐をあてにやる。こいつはいいぞ。豆腐も旨いし、あずまみねは言うことなし。するする喉を滑り落ち、夕食の頃には既にほろ酔い加減‥‥。

夕食は特に贅沢なものはなく量もほどほど。贅沢する気でなければ充分だ。小鍋が付いていたのが嬉しかった。これでまた酒が進む‥‥。

あずまみね純米吟醸八反

夕食

小鍋が嬉しい

1階にある男女別の浴場には、宿裏の湯神社の下から湧く源泉が注がれている。湯温が一定でないので管理が難しいという。ほぼ透明な湯には茶色の湯の華、手を握ると軋むようなしっかりした塩分の感触がある。鎌先の湯は怪我に効くといわれ、湯治客が湯神社に松葉杖を置いていくことも多かったという。

宿裏の湯神社

この下から湯が湧く

源泉をそのまま注ぐ

上の階には別の浴場が。広い窓から緑映える気持ちのいい造り。湯はすぐ表の洞窟から涌いているそうだが、感触はやや薄い。ここには一応露天風呂が付いているが、眺望はきかない。

この中から湯が湧く

広い窓が気持ちいい


野湯発見!

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