鉛温泉

朝、瀬音で目が覚めた。 ピタリとは閉まらないガラス窓の向こう、雪景色が明るい。朝湯にでもつかってくるか‥‥。館内に何ケ所かある風呂のうち、部屋から一番近い風呂で朝風呂につかる。夜には気づかなかったが、広い窓の外、雪景色がいい。熱めの湯で脳までしっかり目が覚めると、食欲が湧いてきた。朝飯だ!

旅館の朝食は和食に限る。切干大根、さば焼き、目玉焼きなど、飯に合うおかずが嬉しい。つい普段より食べてしまう。 ほうじ茶をすすりながら外を見やれば、先ほどから降り出した雪がいよいよ本降りの気配。 さて今日はどうしよう‥‥。このままもう一泊、腰を落ち着けてしまおうか、それとも‥‥。

朝食

結局、鉛温泉を発つことに決めた。今回は充分満足したので、次の温泉地へ行こうと決めたのだ。その前にもうひと風呂つかって行こう。まだ入っていない河鹿の湯へ‥‥。湯が少し熱かったので、立って入る白猿の湯につかりなおす。やはりこの風呂はいい‥‥。


湯上がりに自炊部を覗いてみる。調理場はもう朝飯時を過ぎていたため、洗い物をしているおばあさんが一人だけ。 ひとつふたつ言葉をかわしたが、訛りが強くてほとんど通じない。曖昧な会話に終始した。調理場内を見渡すと、拾円を入れて使うガスコンロが並んでいる。今度は自炊をしてみようか‥‥。

拾円コンロ

洗い場

自炊部の売店もちょいと覗いてみる。店番のおばあさんがひとりだけ。客も無くかなり暇そう。店には野菜、卵、果物‥‥。 おやっ? 醤油が何種類も並んでるなぁ。何故だろう? 聞けば味噌醤油はやっぱり人それぞれ好みがあるのだとか。「×××醤油は塩っぱくて、こっちでの人気は今ひとつだね。 こっちの醤油もいくつも置いてるよ。」 やっぱり湯治で何日も過ごすとなると、味噌醤油は好みのものでないとキツイもんなぁ。 そういえば私も数日九州を旅したとき、甘い醤油や味噌があわなくて結構辛かった思いがある。

何種類も醤油が並ぶ

廊下沿いの売店

野菜


藤三旅館を後にし、雪の坂道を少々登りバス停にでる。バスの時間までまだちょっとある。バス停ひとつ分歩いてみようか。隣のバス停はほんの数百メートル先の鉛温泉スキー場の前だ。山の上の方を見上げるとスキー場のなかなかいい斜面。降り積もったばかりの雪の上、まばらなスキーヤーが軽そうに滑っている。スキー道具を持ってきていればなぁ‥‥。ちょっと残念。そんな思いを断ち切るようにバスがやってきた。一旦、花巻駅まで戻って、次の温泉へ出直そう!


花巻駅から再びバスで次の温泉へ

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