鳴門 渦の道

鳴門のうず潮は、瀬戸内海と紀伊水道の干満差によって発生する。だから潮の動かない時には、うず潮はできない。しごく当たり前のことなのだがすっかり忘れていた。しかし、私は運良くちょうど潮の変わり目に訪れた。

大鳴門橋の車道の下に設けられた「渦の道」は、観渦のための回廊である。鳴門側から約450m、橋の中央付近まで歩いていける。危うく見逃すところであったうず潮‥‥、はやく見たい! 回廊を歩く足取りも自然と速くなる。

大鳴門橋

渦の道

回廊の所々にはガラス張りの部分があり、真上からうず潮を見下ろせる。しかしこの上に立つのはちょっと勇気がいる! 私もおそるおそる‥‥。足の下では速い潮の流れが豪快なうず潮をつくっている。大きな遊覧船が複雑な渦に翻弄される様がよく見える。これを見逃す手はない!

ガラス張りの床

うず潮


絶望の国道193号

鳴門を後にし神山温泉でひと風呂浴びた後、さらに四季美温泉を目指して山道を国道438号から193号へ折れた。この時すでに歯車が狂い始めていたのかもしれない‥‥。長く辛い道のりの始まりであった。

道は細く曲がりくねり、険しい山肌を縫うように続く。うんざりするくらいのカーブの連続。ひとつハンドルを誤れば、何十メートルも崖を転落することになる。対向車などめったに来ないとはいえ、カーブを曲がる度、神経をすり減らす。1時間かかって直線距離で10kmも進めないのだ。これには参った。意識がモーローとしてきて、途中の大釜の滝を見過ごしてしまいそうになった。

その先の温泉に辿り着くことだけを目標に、一本道をひたすら走り続ける。ところが‥‥。

険しい山間を進む

大釜の滝

ガーン!! 道路巾いっぱいに大きな石がドーン!

落石注意の標識はよく見かけるが、こんなの落っこってきたらどーしようもない。無情にも道を完璧にブロックする大きな塊。コリャちょっとやそっとじゃ動きそうにない。その塊がもとあったと思われる場所にはぽこっと穴が‥‥。

残念ながら四季美温泉はわずか手前で断念せざるを得なくなった。ひたすら山道を走り続けてきたのは何だったのか? 目標を達せずして、再びうんざりする山道を走るのか‥‥。状況は絶望的であった。

大きな石がドーン!


この旅最後の温泉へ

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