クマチュー!!レトロ館

なかなか!ドジラんぐ特集

このコーナーでは、幻の子供向けドラマ「なかなか!ドジラんぐ」について特集します。

◆なかなか!ドジラんぐとは◆

みなさんはかつて「第2のあばれはっちゃくシリーズ」と言われながらも、ほとんど話題になる事も無くたった1クールでひっそり終了し、さらにはマスターテープ消失の憂き目に合い再見の機会もなくなってしまった、まるで「NHK少年ドラマシリーズ」のような(?)悲劇のテレビドラマがあったのをご存知でしょうか??それこそが、1987年にテレビ朝日土曜19:30というかつての「はっちゃく」の時間帯に放送されていた、「なかなか!ドジラんぐ」という作品なのです!


このドラマは、原作が山中恒、制作が国際放映、スタッフも多くがはっちゃくに携わっていた面々でした。しかしながら、主人公の男の子・中谷大樹は、桜間長太郎の破天荒なガキ大将キャラからは大幅に異なり、おっとり型でやや弱気な少年に路線チェンジ。演じた岡部浩之のキューピーのような広いおでこにほとんど無いまゆげがかわいらしくはありましたが、「第2のはっちゃく」と言うには似ても似つかない感じとなってしまっていたのでした。


もうひとつの残念ポイントとして、桜ちゃんというマドンナ的スタンスの少女が「実は忍者」というとんでもない設定であり、はっちゃくの魅力の要だった「等身大の子供たちが自分の力で物事を解決する」というリアリティが完全に失われておりました。演ずる高橋絵美子は、ちょっと児童劇団臭は強いものの演技は非常に上手かったのですが、やはりヒロインにしては貫禄がありすぎる感じでした。はっちゃくでのマドンナというのは、華奢でかわいらしく性格もお嬢様的というイメージであり、それに比較すると桜ちゃんは大樹と並んだときの恰幅の良さが頼もしすぎ。まぁそんなデコボコ的なところをこのドラマでは描きたかったのかも知れませんが。


その他のキャスティングは、お父さんに村野武憲、お母さんに松あきら、担任の先生役は三波豊和と有名俳優が起用されていますが、はっちゃくシリーズで鉄板のキャスティングだった東野英心・久里千春・山内賢の三氏に比べるとやはり物足りない感は致し方なし。あと、なんと言ってもこのドラマのキモなのが、歌手デビューしたての現役アイドル・小沢なつきを本人役で出演させるメディアミックス的な演出。視聴対象年齢を幅広くしようという工夫だとは思いますが、ただこういった話題性偏重な設定によって逆にはっちゃくのフォロワーと言うにはかけ離れた作品になってしまったのではないかと思われます。


映像については、フィルム撮りだったはっちゃくに対し当時普及し始めたビデオ撮りによるもので、忍者をはじめUFO、キョンシーなどの登場もあることから光学エフェクトもデジタルな効果を見せるものが多用されていました。斬新な事をやろうという意思は見られたのですが、はっきり言って全体的にチープなのは否めず、そういったシーンが出てくると当時でもなんとなくガッカリ感が漂ったものです。とにもかくにも桜=忍者の末裔という設定自体がそもそもこのドラマに必要だったのかと言う点からすでに微妙でした。


…などといろいろ言いましたが、個人的にはこのドラマは嫌いではありません。一見奇抜ではありますが、友情や親子・先生との絆、そして淡い恋など、ヒューマニズム溢れる点もきちんと描かれています。「はっちゃく」的なドラマを少しでも残そうという制作側の意気込みも感じられますし、そういう意味でも意義のあるドラマだったのではないかと思います。それだけに、短期終了した上にこの後国際放映は子供向けドラマの制作自体からも撤退してしまい、少年ドラマの将来に引導を渡した形になってしまったのが非常に残念です。


ところで、「なかなか!ドジラんぐ」については本当に情報が少ないです。Web上でいろいろ調べてみても、Wikipedia以外ほとんど情報がありませんでした。ちなみにこのドラマが「第2のはっちゃくシリーズ」として制作されたというのは、制作会社とスタッフが共通している事のほか、当時のテレビ情報誌にもそう書かれていた記憶があるので確かだと思います。また、マスター消去されて再放送が不可能になっている云々については、以前私がCSのキッズステーションにメールで聞いた際には放送を予定していたが、かの理由にて再放送ができなくなったとのメールを頂いた事があり、実際オンエアされませんでした。地上波・CSなどでも1度もこの番組が再放送された記憶がありません。このドラマはまさに幻の作品です。どうにかして鮮明な画面でこの番組を再び観る事ができるのを、心から願うばかりであります。


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