役員報酬


法人の役員と使用人給与の法人税法上の取扱を表にすると、次の通りです。

支給区分役員使用人
報酬または給与原則損金算入。ただし、不相当に高額および定期の給与以外の部分の金額は、損金不算入。原則損金算入
賞与原則損金不算入。ただし、使用人兼務役員に対し、使用人分賞与相当額を損金経理したときは、損金算入。原則損金算入。ただし、利益処分による経理処理をしたときは、損金不算入。
退職金原則損金算入。ただし、不相当に高額な部分の金額は、損金不算入。原則損金算入。



役員の範囲


  1. 法人の取締役、監査役、理事、幹事および精算人
  2. 1以外の者で、法人の経営に従事しているもの



使用人兼務役員


法人税法において使用人兼務役員とは、役員で、部長、課長その他法人の使用人としての職制上の地位を有し、なおかつ、常時使用人としての職務に従事する者を言います。ただし、下記に掲げる役員は、その性質上使用人兼務役員から除かれます。

  1. 社長、理事長
  2. 副社長、代表取締役、専務取締役、専務理事、常務取締役、常務理事、精算人その他これらの者に準ずる役員
  3. 合名会社および合資会社の業務執行社員
  4. 監査役および監事
  5. 上記のほか、同族会社の役員のうち次に掲げる持株要件のすべてを満たしている者

    1. その会社の株主グループにつき持株割合が最も大きいものから順次その順位をつけ、その第一順位から第三順位の持株割合を加算した場合において、その役員が次に掲げる株主グループのいずれかに属していること。

      1. 第一順位の株主グループの持株割合が50%以上のときのその株主グループ
      2. 第一と第二順位の株主グループの持株割合を合計したとき、はじめて50%以上になるときのこれらの株主グループ
      3. 第一から第三順位までの株主グループの持株割合を合計したとき、はじめて50%以上になるときのこれらの株主グループ

    2. その役員の属する株主グループの持株割合が10%を超えていること
    3. その役員(その配偶者およびこれらの者の他の会社にかかる持株割合を合計した場合にその持株割合が50%以上である場合における当該他の会社を含む)の持株割合が5%を超えていること



役員および使用人兼務役員の判定例


株主職務および同族関係持株割合
A社長15%
BAの長男。営業職員7%
CAの姉10%
D副社長6%
EDの弟。取締役兼工場長4%
F総務部長8%
J上記と同族関係のない少数株主


  1. 営業職員として他の使用人とまったく同じ職務内容のB
  2. 経理部長で主要な業務運営に参画しているCの夫であるK
  3. 平取締役で工場長として常時従事しているE
  4. 総務部長で主要な業務運営に参画しているF


解説
第一順位Aグループ(A,B,C)33%
第二順位Dグループ(D,E)10%
第三順位Fグループ(F)8%

上記よりこれらのグループに属する者は、上記5のTのcの要件に該当します。



役員報酬


  1. 報酬および給与
    法人税法での役員報酬の範囲は、給与のほか、債務免除による利益やその他経済的利益を含み、賞与および退職金以外のものを言います。

  2. 賞与

  3. 退職金
    役員または使用人の退職により支給される一切の支給を言います。すなわち、所得税法上の退職所得に加え、給与所得とされる退職年金、相続税法上の相続財産とみなされる死亡退職金も含みます。



経済的利益



  1. 明らかに株主等の地位に基づいて取得したと認められるもの
  2. 病気見舞い、災害見舞い等のような純然たる贈与と認められるもの



  1. 役員に対して物品その他資産を贈与したときの、資産の価額に相当する金額
  2. 役員に対して所有資産を著しく低い価額で譲渡したときの、その資産の価額と譲渡価額との差額に相当する金額
  3. 役員から著しく高い価額で資産を買い入れしたときの、その資産の価額と買い入れ価額との差額に相当する金額
  4. 役員に対して有する債権を、放棄または免除した債権の額に相当する金額
  5. 役員から債務を無償で引き受けたときに、その引き受けた債務額に相当する金額
  6. 役員に対してその居住の用に供する土地または家屋を無償または著しく低い価額で提供したときの、通常取得すべき賃貸料と実際に徴収した賃貸料との差額に相当する金額
  7. 役員に対して金銭を無償または通常の利率よりの著しく低い利率で貸し付けをしたときの、通常取得すべき利率により計算した利息と実際に徴収した利息との差額に相当する金額
  8. 役員に対して無償または著しく低い対価で上記6または7に掲げるもの以外の役務の提供をしたときの、通常その役務の対価として収入すべき金額と実際に収入した対価との差額に相当する金額
  9. 役員に対して機密費、接待費、交際費、旅費等の名義で支給した金額で、その使途が不明であるもの、または法人の業務に関係ないと認められるもの
  10. 役員の個人的費用を負担したときの、その費用の額に相当する金額
  11. 役員が社交クラブの会員となるため、または、会員となっているために要するその社交クラブの入会金、経常会費その他その社交クラブの運営のために要する費用で、その役員の負担すべきものを法人が負担したときの、その負担した費用の額に相当する金額
  12. 法人が役員を被保険者および保険金受取人とする生命保険契約を締結して、その保険料の全部または一部を負担したときの、その負担した保険料に相当する金額



法人が役員に対して上記「債務免除による経済的利益」に掲げたような経済的利益の供与をしたときに、

  1. それが所得税法上経済的な利益として課税されないもの
  2. その法人がその役員に対する給与として損金経理しない


上記のいずれにも該当するときは、給与として取り扱われません。


  1. 報酬となるものの例示

    上記「債務免除による経済的利益」のうち次に掲げるもの



不相当に高額な部分の損金不算入


法人が役員に対して支給す報酬のうち、「不相当に高額な部分の金額」は、損金の額に算入されない。


過大な役員報酬の額の判定



  1. その役員の職務の内容
  2. その法人の収益の状況
  3. その法人と同種の事業を営む法人で、事業規模が類似する法人の役員報酬の支給状況



  1. 定款の規定、株主総会または社員総会、その他これらに準ずるものの決議による報酬限度額により判定します。
  2. 使用人兼務役員の過大報酬の判定は、法人が使用人兼務役員に対して支給する報酬のうち、その「使用人」としての職務に対するものを含めないで限度額を定めている場合は、その使用人分の報酬の適正額を控除して判定します。



原則的な取扱は、その使用人分の報酬額のうち、使用人兼務役員が現に従事している使用人の職務とおおむね類似する職務に従事する使用人に対して支給した給与に相当する金額は、これを使用人分の報酬として相当な金額とする。

トップへ


役員賞与


役員に対する臨時的な給与(債務免除による利益その他経済的利益を含む)で退職金以外のものを言います。


賞与とされるものの例示


  1. たとえ年俸等として支給されるものであっても、その計算が利益に一定の割合を乗ずる方法により算定されるものは、賞与として取り扱います。
  2. 定期の給与のほかに「盆、暮等に支給される給与」は、たとえ支給時期や金額が一定していても、賞与として取り扱います。



使用人兼務役員の使用人分賞与の損金算入


使用人兼務役員に対し、その支給した使用人分賞与については、損金算入が認められるが、次に掲げる3つの要件のすべてに該当しなければならない。

  1. 使用人分賞与を他の使用人に対する賞与の支給時期に支給する
  2. 損金経理により支給する
  3. 他の使用人に対する賞与の支給状況に照らして、その使用人としての職務に対する賞与として相当であると認められること


トップ


役員退職給与


退職給与規定に基づいて支給されるかどうかに係わらず、また、その支出名義のいかんに係わらず、役員の退職により支給される一切の給与を言います。


役員退職給与の損金算入


役員に対して支給する退職給与は、これを損金経理した場合に限り損金算入される。


役員退職給与の損金算入時期


役員退職給与の損金算入時期は、「株主総会の決議等により、退職給与額が具体的に確定した日」の属する事業年度となります。


過大な役員退職給与の損金不算入


役員退職給与は、法人がその事業年度で損金経理した金額のうち、「不相当に高額な部分の金額」として政令で定める金額は、いずれも損金の額に算入されない。


過大な役員退職給与の判定


不相当に高額な部分の金額の判定は、法人が退職した役員に支給した退職給与のうち、次に掲げる相当な金額を超える部分によります。

  1. その役員が法人の業務に従事した期間
  2. その退職の事情
  3. その法人と同種の事業を営む法人で、その事業規模が類似するものの役員に対する退職給与の支給状況に照らして、相当であると認められる金額


トップ


戻る